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台所短歌

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2023年7月の記事一覧

この手からするする抜ける健やかな幼き髪を持て余す夏

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この歳まで誰かの髪を結ぶとか編むとかしたことがなかったから、指先からはらはらと溢れてゆく髪の毛をどの程度引いて良いのかわからない。😣

苧環
1年前
20

この胸で「おうちにかえりたい」という君をただ抱く我は無力で

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泣くでもなく喚くでもなく「抱っこ」とすり寄って来たチビが「かえりたい」と。「かえる」ではなく「かえりたい」と呟くチビ。帰らないとゴネることはあったけど。ママお熱出ちゃったからね…と背中をさすってやるしかなく…

苧環
1年前
24

繰り返し繰り返し降る蝉時雨語彙力なんて吹き飛ばすほど

思惑に色付けされた感情に振り回されず掴む輪郭

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どうして?なにが?なんてことを考えたって仕方ない。今目の前に示されたことに応えられるか否かだけ。輪郭がぼやけたら何も見えなくなる。
チビが最近塗り絵に嵌ってるらしい。

苧環
1年前
17

蝉時雨ごときは弾き返せよと願いをこめて磨く硝子戸

誰の目に止まることなどないけれど入道雲よせめて映えろと

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梅雨明けしたそうな。そういえば朝に窓を開けた時の外気のムッとする重さも無い。この時期にいつも窓掃除をしているんだと気づいた。案外無意識に季節と共に生きてる。

苧環
1年前
24

乗ったとは決して言いたくない波にゆるりゆるりと掬われゆくか

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大波が寄せているようには見えないのに、静かに忍び寄ってきた?
幼児を抱えたままでの闘病はかなり難しい。
誰を守るか、何を優先するか、それぞれだろうけれど。何が正解かいまだに分からないまま。

苧環
1年前
18

真夏日の黒々とした影のよに纏わりついて離れぬ思い

カニ爪も魚の骨も切れるというキッチン鋏で切れるだろうか

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もやもやを掘り下げてみたら底の方で見つけたもの。
"比べる"
そこから生えて来る蔓や枝葉のしつこさたるや…

苧環
1年前
18

同じよな返し出来ればいいのにと八十違いの二人を前に **** 3歳児なら根気よく待てるのに、80超えの母には出来ない。言葉がスッと出てこない理解が追いついてないことは同じなのに。 分かるはず分かってたはず と思ってしまってるから。昔は昔、今は今なんだからと言い聞かせなきゃだ。

今更の言葉をたくさん飲み込んだ我が手が示す自愛の証

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漂白剤やシンナーを直触りしてもびくともしなかった指先が、この春突っ張り出した。
今更 の思いを封じ込めて、炊事にハンドクリーム+ゴム手袋を導入して1ヶ月。ビニール肌になりかけてた甲のキメが!
自愛大事…

苧環
1年前
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