コミュニティマネジャーによる大阪コワーキングスペース視察 紀行録
こんにちは。
小高パイオニアヴィレッジのコミュニティマネジャー野口福太郎です。
今回は大阪のコワーキングスペースに行ってきたので、その報告となる紀行録を記します。
今回の視察背景
普段は福島県南相馬市にある小高パイオニアヴィレッジのコミュニティマネージャーとして、「迎え入れる側」としての動きをしています。
この場所は、東日本大震災による原子力災害の影響で一度は避難指示区域となり、社会がゼロリセットされてしまったエリアです。
私たちはそのエリアを、100の課題から100の課題を創出することで新たな社会を生み出せるフロンティアだと捉え、起業家たちが集うハブとしてコワーキングスペース・宿泊施設・ガラス工房が複合した拠点を運営しております。
ありがたいことにオープンから4年半、入居企業は20近く、宿泊は年間1200泊超えと、多くの方にご利用・ご来館いただくようになりました。
私たちスタッフも施設としてもさらに多くの方のお力になれるよう、パワーアップしていかねばなりません。
そんな私にはある悩みが…。
それは、ひとえに「場を持つゆえの悩み」です。
小さなチーム故、フロントにも立ちながら戦略や戦術も考える、所謂「プレイングマネージャー」として振る舞います。
平日は基本的に受付に鎮座する故に、なかなか外に出てインプットをえたり、面白い人、もの、事に出会いにくいという状況でした。
じゃぁ休日に行けばいいではないかというと、実はそれも難しい。
当館は土日を定休日としているのですが、ありがたいことに多くの人が尋ねてくださります。
その関係で、「コワーキングスペース定休日」とはいえ結局余裕を持って外に出ることができないという現状なのです。
そこで、普段はあまり見れない場所や文化圏に行ってみよう!ということで、今回機会に恵まれ大阪のコワーキングを冒険して参りました。
特に大都市部のコワーキングと私のいる南相馬市のような「ローカルコワーキング」の持つ役割の違いを意識しながらお読みいただければ幸いです。
訪れたコワーキングスペースは3つ
GLANDSLAM
オオサカンスペース
THE DECK
です。(本当はもっと行きたかったが!)
今回、快くお迎えいただいたスペースのスタッフの皆様方に感謝いたします。
1箇所目:GRANDSLAM
営業時間:月曜日〜金曜日9:00~20:00 土曜日:9:00~18:00 日曜定休
場所:大阪府大阪市福島区福島7丁目1−10 WiZ fukushima 2階
運営:株式会社マスターピース
サイト:https://grandslam.osaka/
来訪理由:スタッフの方の発信力と、イベント頻度に関してが参考になると考えた。一社日本ワーケーション協会の代表入江さんとの合流場所になった。
行ってみての感想
普段からSNSの発信などは拝見していて、イベントなども盛ん。
イベントなどは、「都市部だからできることなのか」と思っていましたが、そこで活動する人たちの遊び心満載「プレイフル」な部分こそが途切れなくイベントが湧き起こる源泉なのだと実感しました。
壁にもメッセージを書きまくったり、Tシャツかけてあったり(阪神もありました!)、NFTピンバッジが置いてあったりなど、ここに行けばワクワクする人、コトに出会える!という感じがしました。
ちなみに移転をつい半年ほど前に行ったそうなんですが、クラウドファンディングは300万円も集まった(目標金額を10万円にしていたので脅威の3000%)。それだけのファンが集うというのは素晴らしいことですね!
場としての求心力をどれだけ作れるのか?というポイントが都市部の比較対象がありまくるスペースにおける競争力となることが学びでした。
参考にしたい点
・声のかけやすさ
厳密な受付場所は設けず、フレンドリーなスタッフさんによるフラットな受付は良いですね。声をかけやすい!
・顧客とのタッチポイント
LINE公式アカウントの活用 WIFI登録にはLINE公式アカウント登録→WIFIの提示など。
ひとこと
赤べこ書きたかったのですが、傷だらけの犬と言われました。
あと、SMAPの聖地であるお好みやき屋さんに行けました。
2箇所目:オオサカンスペース
営業時間:平日10:00 〜 18:00
場所:大阪府 大阪市中央区 備後町3-6-2 大雅ビル10F
運営:株式会社 Kaeru
サイト:https://osakan.net/
来訪理由
交流特化型と書いているので、自分たちの拠点が置いている強みをさらに伸ばすことに何か吸収できそうだと感じた。
行ってみての感想
最初、ビルの中にあるということでちょっと場所を迷いながら前後をウロウロ。
シンプルな川の字のデスクが3列と、壁際にも椅子があり、ワークスタイルを選べる空間でした。
ちょうど行った時間が1時ごろで、お昼どきの常連さんがご飯を食べながらおしゃべりしてました。
映画の話から美味しいご飯屋の話まで。賑やかで楽しそうでした。
一方で時間が来てさぁ仕事しますか!という感じで散らばったら、すごく静かに。
メリハリがすごいな〜という印象でした。
もう一点、印象的だったのは、まさしく交流特化方の「おかん」のような存在がいたこと。女性のスタッフさんがめちゃくちゃお声がけをしてくださいました。
帰り際に少し気になったところを伺ったのが、バーカウンターがあること。
ワークスペース以外に過去バーを運営していたらしく、コロナ禍により閉店の際にオオサカンスペースにバーテーブルを移転させたそう。
毎日18時以降はハッピーアワーで乾杯!という慣わしがあるそう。正直羨ましくて、ぐぬぬとなりました。
電車で帰れる都市生活者ならではでちょっと羨ましいですね。
ならば負けじとこちらもノンアルコールやらコーヒーでできないか?とか色々考えちゃいました。
参考にしたい点
・ランチタイムの交流感
交流ランチ、みたいなのは僕らでも定期でできないかなと思いました。
・ハッピーアワー!
お仕事終わりに一杯。 ボトルキープみたいなのは面白いですね。
・スタッフさんのホスピタリティ
登録の際、自己紹介欄を設けることで、スタッフのファーストコンタクトが非常にしやすいと思いました!
ひとこと
最初に受付してくださった学生スタッフさんは最初すごい静かな方だと印象を受けましたが、後日SNSを見るとスペースでギターの弾き語りをしていてびっくりしました。スタッフのパーソナリティや引き出しが最大限活かされる空間・コミュニティ作りって素敵です。
3箇所目:THE DECK
営業時間:平日9:00~18:00 土日10:00~18:00
場所:大阪府大阪市中央区南本町2丁目1−1 本町サザンビル 1階
運営: The DECK 株式会社
サイト:https://thedeck.jp/
来訪理由
ワーケーション協会のイベント場所だったり、よく知り合いの方が訪れているのを見るに、何かハブとなる引力があるのだろうと思って、探りに行きたかった。
行ってみての感想
夕方ごろに行ったのですが、利用者の比率は海外の方が多かった印象です。
さすが第二の都市、大阪。しかし、スペースがあるだけで海外の人がくるわけではない。
その背景は、代表の森澤さんが海外経験が豊富なことや、明確にデジタルノマドフレンドリーを掲げているからか。
言語的対応はもはやスタンダードで、その先の部分でどれだけフレンドリーであれるか。
英語版のサイトも整備されていて、洗練されてスタイリッシュな印象です。
https://en.thedeck.jp/
水曜日のコミュニティデイというのも、人の来訪をうながすフックになりそうです。
また、ものづくりスペースが一角にあるのは、都市部おいて、非常にユニーク。
ハードウェアが必要になる領域での初期フェーズは相性が良さげ。
参考にしたい点
・基本動作だけど、スタッフの顔写真を初めメンバーの可視化
・市町村・大企業とのコミュニティ・パートナーシップ (様々なスタイル)
・明確にここのタイミングで来て欲しい!というフックの出し方
・シェアオフィス(コワーキングスペースではない)のサービスデザイン
(個室需要を含め)
まとめと分析:都市部のコワーキングと地方のコワーキング、必要なもの「コンセプト」
結論、どちらも強烈なコンセプトが必要。
都市部のコワーキングスペースは、「尖り」。
競合がたくさんいて、常に競争環境に晒されます。
単にスペース同士だけでなく、カフェなども相手になってくる。
そのため、利用者へ届かせるための強烈なメッセージ、しかも端的に伝えるフレーズが必要です。「交流!」とか「イベント!」や「デジタルノマド!」などのキーがあった上で、そこからきちっとナンバーワンになるサービスデザインをすることで初めて人に届くのだなと、それぞれ学びになりました。
その上で、人の流れを生み出すコミュニティデザインが必要になってきます。
ビジネス的にもそれが長く使ってもらうLTV(生涯顧客価値)に繋がり、都市部の高い賃料を含めたコスト構造にも耐え、持続可能なビジネスになっていきます。
一方で、地域のスペースに必要なのは「開く」こと。
どれだけ多様なコンテクストを包括できるか、という部分がキーになります。
人口や企業が少ないエリアなので、尖りすぎてしまうと対象となる人が絞られすぎてしまいます。
機能も公民館的なパブリックな領域から遊び場まで、非常に広い世代を「商売の顧客」というよりは「関わりしろ」として取り込めるかということです。そこから生まれる偶発性のエネルギーを以てして新たな価値を生み出す役割が求められています。
また同時に、地域への開きだけでなく、「地域外へ開く」ことも意味します。
最近は各地域で活躍するプレイヤーのハブとしての利用ケースも多々ありますし、イベントがなくとも、あの人に会いに行こう≒あの場所へ行けば会えるだろうということも。
実際私たちの運営するスペース小高パイオニアヴィレッジは毎月視察や見学、来訪でも3桁以上がやってきます。(昨日なんか地域外からの視察やご案内依頼が1日で4件もきてしまいました!)
フックとしての拠点となるべく、魅力的なコンテンツや人の関わりや玄関口になるような活動にリソースを注いでいくということです。
共通項としての「スタッフ」 コミュニティマネジャー・インキュベーター・コーディネーター・おかん 色々と呼び名はありますが、利用者にとってのよきパートナーであるためのホスピタリティが求められます。
情報を開示し、共通項の発見、人への繋ぎ、イベントなどの企画とお誘い、発信による新たな人の呼び込みなど、「あなたはここにいてもいいんだよ」という安心感や所属感をどう醸成していくか?の切り盛り力がどのハードにも共通してあると、その場は淘汰されずに栄えていきます。
今回の視察を学びに、自分たちの独自性を突き詰めて、必要な方に届けて満足いただけるようにサービスを磨くこと。
そしてスタッフとして、定期的に外にも出ていくことで、自分の体験の幅や関係を様々なエリア・拠点と育んでいくことを学びといたしました。
速報的にツイートでまとめてます。
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