#87 エール株式会社代表取締役櫻井将さんに『聴く』について聴いてみた
今週もスペシャル対談企画の日がやって参りました。この対談企画をスタートして何とか途切れることなく毎回出てくれる人がいるっていうことを心からありがたく思います。ありがとうございます皆さん。
そして今日ゲストとして来てくださるのはどんな方かと言いますと。エール株式会社代表の櫻井将さんです。櫻井さんがいらっしゃる会社が展開するめちゃくちゃ面白くて、興味深いサービスがあるんですけれども。ここの裏側にある想いだとかコンセプト、そして私たちの毎日のヒントになる話をたっぷりしていただこうかなと思っております。
聞くと聴くの違い
(小田木)今日のスペシャル対談企画は、エール株式会社代表の櫻井将さんにお越しいただいています。櫻井さんこんにちは。よろしくお願いします。エール株式会社っていう会社名初めて聞きますという方が多いんじゃないかなと思うんですけれども、社外人材によるオンライン1on1サービス。どんなお仕事なのか、櫻井さんがどんな方なのか、自己紹介お願いしてもいいですか?
(櫻井氏)エール株式会社の櫻井と申します。仕事はですね、社外の人材、特に副業の方々で人の話を聞いて誰かの役に立ちたいなという方が結構たくさんいてですね。キャリアカウンセラーとかコーチングとかを学んでいたり、そういう資格を持って無くても、人の話を聞くのが好きなんだって方がいるんですよ。そういう方が副業で違う会社の人の話を聞いてもらって、役にたっていただく形のビジネスをしています。
(小田木)そういう機会をそんな熱意のある方に提供する。
(櫻井氏)そうなんです。実際受けた企業側も社内では話せないこととか、上司には言えないとか、利害関係のない第三者に本音で話ができるんですね。そうすると、自分でこんなこと考えてたんだとか、頑張ってみようっていう背中を少し押してもらったりだとか、力を得て職場に戻っていくっていうサービスですね。
(小田木)その組織の中で頑張るために、外の人材を活用するとか、外の人に見てもらうみたいなサービスのイメージですね。ありがとうございます。私、エールさんのことを知った時に「聴き合う組織」っていうコピーにめっちゃ惹かれたんですけど。心が。これしかも、「聞く」ではなくて「聴く」なんですよね。櫻井さんが「聴く」に着目されて、事業もされているし、いろんな活動されてるのはなぜですか?ここをまず聞きたいなって思っています。
(櫻井氏)僕が「聴く」ってことに着目したのは、仕事の中で人の成長とか、自分のチームのメンバーの成長ということを考えたときに、昔は指示型というか、「自分で伝えて、やってみせて、厳しくフィードバックして育てる」みたいなことをしていた時期もあったんですけど。
(小田木)鍛える系ですね。
(櫻井氏)そうですね。でもこれ聴かないと解決しない問題ってすごくたくさんあるなってこと思って、勉強し始めたんですね。根本的には人って聴いて欲しいじゃないですか。なんかわかりますか?自分の話って聴いて欲しいじゃないですか。
(小田木)めっちゃよく分かるし、頷きまくってる人たくさんいると思います。
(櫻井氏)そして、本当はみんな聴きたいと思っていると思うんですよ。聴く側も。なんだけど、利害の中で上司という立場の間で、成果を出さなきゃいけないとか、自分の経験上こう思うっていう判断を入れちゃったりだとかして、なかなか本当に純粋に聴くってことがなかなか届けられていない。僕自身の経験として、部下に大変なことがあった時期に(聴くっていうことをすごく学んでいたんだけど)、上司であるが故に聴くことができなかったんですよね。
(小田木)聴きたい気持ちはあったけれども、適切な聴くができなかった?
(櫻井氏)そうなんです。頭ではわかってたんです。聴くってことが。でも感情が邪魔をするというか。なんか旦那さんが私の話聴いてくれないのみたいなのと近いと思うんですけど、奥さんの話を聴きたいと思っていても、ついつい利害の関係があったりすると、感情が邪魔して聴けないみたいな。
結局その部下だった彼が会社を辞めることになってしまって。会社を辞めた半年後に彼ともう一度話す機会をもったら、ちゃんと聴けたんですよ。この差ってものすごく大きいんだなという風に思って。前職の先輩にちょっと相談しくなるみたいな。そういうの、あるじゃないですか。
(小田木)なるほど。
(櫻井氏)辞めたけど信頼していた先輩にちょっと相談したくなる。利害関係が離れるとよりフラットに聴いてもらえるってことだと思っていて。これ会社の中でもそうだし、普通に日常生活で生きていてもそうなんだけど。第三者というものを入れたほうがよっぽどヘルシーなんじゃないかなということ思ったんですね。だから、聴き合う組織っていう、聴くってことが連鎖していて、結果聴き合う組織になるっていうようなことをできないかなというのが今のビジネスです。
(小田木)なるほど。やり方、方法としての聴き方が分かれば良いっていうことじゃなくて、誰が聴くかという、距離感近すぎなし、利害関係のない距離感で、感情が先に立たないような関係性みたいな。そこがめっちゃ大事っていうことですかな。もうめっちゃうなずきまくりな聴きました。
(櫻井氏)まさに、まさにそんな形ですね。
(小田木)もう1つ聴きたいのが「聞く」と「聴く」の違いなんですけど。なんで「聴く」なんですか??
(櫻井氏)「聞く」って漢字の通り「耳」しか入ってないんですよね。「聴く」って「目」と「心」も入って、身体全体に聴くっていう行為んですよね。
(小田木)漢字の成り立ち、確かに。
(櫻井氏)私なりの解釈は「聞く」方はジャッジメントが含まれる聞くだと思っています。ジャッジメントっていうのは、例えば「子供にはちっちゃい頃から英語を勉強させた方がいいよね」とかって言った時に、これを「聞く」場合、「いや、それはどうなの?」っていう意見か「そうだよね。」っていうどちらかになるんですよね。これジャッジメントじゃないですか?
(小田木)賛成or反対みたいな。
(櫻井氏)賛成or反対もしくは従うor従わないかなと。「聞く」だと。僕の分類で「聴く」はジャッジメントが含まれないんですよ。子供には小さい頃から勉強させた方がいいよねに対し、ジャッジメント含まない「聴く」っていうのは「あっそうなんだ。あなたはそんな風に考えているんですね。」っていう聴き方なんですよ。こっちの「聴く」にはジャッジメントは含まれないんです。あなたはそんなふうな考えをお持ちのかたなんですねっていう聴く。これ寄り添うとか受け止めるっていう聴くなんです。
(小田木)まさに受け止めるイメージで想像しましたね。
(櫻井氏)これ共感というものとも紐付いていて、「聞く」のは「そうそうそう、私もそう思う~。分かる~。」っていう私のジャッジメントを含む共感なんですけど。「聴く」のは「なるほど。あなたがそう感じているんですね。あなたはそう思ってるんですね。」っていう風に、相手の感情を自分も一緒に感じようとするという共感なんです。共感にも2つあって、後者の関わり方、「聴く」方の関わり方ってとっても人って好きなのに、これが足りてないんですよ。
(小田木)なるほど。今2つケースを並べながら説明されて、全然違うなって思ったんですけど。今、職場でも家庭でも両方混在っていうか、どっちかというと「聞く」ですよね。
(櫻井氏)そうですね。基本はそう思います。
(小田木)聞いてよみたいな。聞いてるよみたいな。
(櫻井氏)そうそうそう。これ、どっちがいいか悪いかっていう話ではなくて、違いを知ってるってことが大事なんですね。どっちも大事なんですよね。ジャッジメント大事なんで。自分が今、どっちをやってるかって気づくことがすごく大切だなというふうに思ってます。
(小田木)今の話で上手にコントロールできるかというよりも、違いがわかるようになった気がします。「わかる~」っていうのと「そうなんだ」っていうこの違い。
聞くと聴くを使い分けられると人は成長する
(小田木)「聞く」と「聴く」の違いについてお話しいただいたんですけど。この違いを何で知っておいた方がいいの?知らないと何が問題なの?っていうことをお話いただこうかなと思います。
(櫻井氏)なるほど。例えば、仕事で言うと厳しい指摘をするということと、ちゃんと話をしてもらうって両方大切なんですね。上司からすると。両立しようとしたときに、けっこう難しさがあって。ちゃんと受け止めなきゃ、寄り添わなきゃって「聴こう」とか思うんですけど。明らかに行動が間違っているとか、明らかにアウトプットが悪い時とかは指摘しなきゃいけないんですよね。
このどこを聞いて、どこを聴いたらいいのかって言うことを使い分けられるってことだと思って。例えばですけど、人の価値観であるとか、人の感情(嬉しいとか悲しいとか)に関しては、僕はジャッジするもんじゃないと思うんですね。だからその仕事が、例えばどんなにアウトプットが悪くても、それを一生懸命やろうとしたことであったり、そこに対する感情っていうのは肯定的に聴いてあげる必要があると思うんです。ジャッジなしに聴いてあげる必要がある。でも出てきたアウトプットに関しては、厳しく指摘をするので、ジャッジメントしてあげた方がいいと思うんですよ。
これが自分がどっちをやってるのかっていうのに気づいて、適切な場所で適切なタイミングで使い分けられるようになってくると、やっぱり本当の意味での心理的安全性というのが保たれるというふうに思っていて。
家族でも一緒だと思っていて。判断を求められている相談なのか、それともただ聞いて欲しい話なのかみたいなことを自分がどっちで聴けているんだろうということに気づけるっていうのは、すごい大事だと思うんですよね。
(小田木)よく言われますよね。一般的にも。本当は共感して欲しいって言うか、寄り添って欲しいだけなんだけれども、ジャッジされたとか。
(櫻井氏)そうなんですよね。男性のやつですよね。僕もここを含めて。
(小田木)今の話を聞くと、冒頭に櫻井さんがおっしゃった「聴く」ことで人の成長だとか、チームの成長に貢献するっていうことのイメージが少し持てるような気がしますよね。両方使い分けることで、仕事を続けたいっていう想いが持てることと、その中で上手に成長していくっていう、両方回っていくようなイメージ。
ということは、これ使い分けられなかったり、どっちかに偏ったり変化してしまうと、起こる問題もあるんですかね?
(櫻井氏)あると思いますね。一方で得意不得意があると思うので、「聞く」が得意なタイプと「聴く」が得意なタイプってやっぱり分かれていると思うんです。自分が話を聞いて欲しい人だとしたら、適切に役割を振り分けるというか、意図的に寄り添ってくれる人と、評価やフィードバックをくれる人っていうの分けながら、自分でもうまくバランスをとっていくっていうのは必要かなと思います。
(小田木)どうやったら聴いて欲しい私たちが、うまく聴いてもらえるかっていう話ですよね。絶対、帰るまでにしゃべってもらわないといけないテーマだと思います。
(櫻井氏)どうやったら聴いてもらいたい時に、どうやったら聴いてもらえるようなるか?
(小田木)そうそう、上手に聴いてもらえるか、そして自分も聴いてもらったことによってよくなれるかっていう。
(櫻井氏)2つあるかなと思いました。1つはやっぱり関係性。これどんだけ相手にスキルがあっても、利害関係あると聴けないですね。僕はどんだけ勉強しても、自分の母親の話は3時間聴き続けること無理なんですよ。絶対。でも小田木さんのお母さんの話だったら、僕は3時間聴き続けられます。
(小田木)なるほど、すっごいわかりやすい例えですね。
(櫻井氏)関係性ってものすごい大事なので。ちゃんと聴いてもらえる関係の人に、私は今日聴いてもらいたいんだって予告して、ちゃんと伝えて行く。相談があるんだよねって言うと、聞くと聴くが混ざってるんで。フィードバックしてほしいのか、アドバイスが欲しいのか、それともただ聴いてほしいのかわからないので。関係性として利害があまりなくて、話せる人に対して、私は聴いてほしいんだということをちゃんと伝えられる相手を見つけるとかということはすごく大事。昔の親友とかそういう関係かもしれないんですけど、そういう関係性が1つ目。
もう1つ。とはいっても、いやいや、旦那に聴いてもらわないと困るんだけどっていう時があったりすると思うんですね。
(小田木)この話はあなたにっていう。
(櫻井氏)ちょっと心理学っぽくなってくるんですけど、人間ってですね意識を向けたところが増えていく傾向にあるんですね。例えばで言うと、「ほんとあなたって仕事ができないですね。」って毎日言われ続けると、「私、仕事丁寧な人なのかも」って思って、なんかちょっと雑にやっているものも丁寧にやりたくなったりするんですよ。
(小田木)なるほど。
(櫻井氏)例えば、電車で「駆け込み乗車おやめください」って言われると駆け込み乗車したくなっちゃうんですよね。これって脳内にイメージしたもの、脳内でgoogle画像検索して、イメージを実現しようとすると間の習性があるので仕方がないことなんです。なんで最近は「次の電車を待ちください」というようになってるんですよね。「次の電車を待ちください。」って止まってる映像を思い浮かべるじゃないですか。
(小田木)なってる!なるほど。
(櫻井氏)何を言いたいかというと、全然聴いてくれないっていう相手でも、ほんの少しだけでも聴いてくれる時って絶対必ずあるんですよ。
(小田木)いつもなら聴いてくれないけれども、この時はっていう。
(櫻井氏)この聴いてくれた瞬間を見逃さずに、「今日聴いてくれてよかった。本当にすごい助かった。ありがとう。」って言うと、その人がだんだん聴いてくれるようになったりするんですよ。自分は聴ける人間なんだって相手もなってくるわけですよ。
(小田木)なるほど。どうやったら聴いてもらえるかって、その聞き手として上手く振る舞えみたいな。相手を聞き上手に変えていくみたいな。そんな感じ?
(櫻井氏)夫婦関係でいったら、それが長い目で見て、すごく大事だと思います。ダメなところを指摘したら、そのダメなところが増えていきますので。指摘した分だけ増えていくんです。
(小田木)つらい事実。
(櫻井氏)そのダメなところが、例外的によく出来てる時を見つけてあげて、指摘してあげると増えています。いつもお皿洗ってくれたいいんだけど、1年に1回お皿洗ってくれる人に、「お皿洗ってくれてありがとう」って言ったら、その人は多分1年に2回、3回って増えていくはずなので。自分が増えてほしいところを指摘していくっていうスタンスで、聴いてもらったときに、「今日は本当に聴いてくれてありがとう」って1言言うだけで、相手のスタンスも変わっていくんじゃないかなって。
(小田木)なるほど。今のすごいリアリティ満載だったんで、どうして聞いてくれたりくれないのモードじゃなくて、違う振る舞いが出来るような気がしました。
(櫻井氏)もうそれもできないくらいの関係だったら、ちょっと違う対処が必要な気がするんですけど。日常の対応で少しずつ人って意識変わっていくので。
(小田木)今、私が頭の中で思い描いていたのは、お母さんの話はさすがに聴きたくないだろう娘の顔と、どうしてして聴いてくれないのアプローチでいってしまう私自身。
(櫻井氏)よくわかりますね(笑)
(小田木)ありがとうございます。今日のお話聞きながら、私もいろんなフラッシュバックのイメージを頭に描きながら聴いたんですけども、この「聴く」って事に、悩む、聴けるかとか聴いて貰えるかというところに悩む人ってすごく多いと思うんで。最後櫻井さんから聴くに悩む人たちにメッセージをいただきたいなと思います。
聴くことが苦手な方へ応援メッセージ
(櫻井氏)僕もそうですが、聴いてもらうっていうことからスタートすると思うんですね。聴いてもらって、自分の心に余裕ができたり、聴かれるってこんなにいいんだって体験すると、誰かの話で聴けるようになるんですよね。この循環、この聴くの連鎖を作っていくのがすごく大事だと思っていて。生まれたときの赤ちゃんの時って喋れないんで、お母さんがすごく寄り添って聴いてくれていた。全身で聴いてくれる。そのスタートが聴かれるってことだと思うんで、ちょっと聴かれたいなって思ったら、聴いてくれる人を探して、ジャッジなしに聴いてくれる人を見つけるっていうのがすごくいいなって。それが結果、自分が周りの人に聴けるようになって、っていうこういう循環がうまれていくと思ってるんで。そこから始めるのが、僕は1番ハードルが低いんじゃないかって思っています。
(小田木)ありがとうございます。なんて優しいメッセージなんでしょう。まずあなたが良い聴いてもらう体験したらいいんだよって。ありがとうございます。そこからいい聴くが体験ができたら、次は聴けるからみたいな。ありがとうございます。私、勇気が出ました。ということで、あの今日お越しいただいたのは、社外オンライン1on1サービスをされているエール株式会社代表の櫻井将さんでした。どうもありがとうございました。
(櫻井氏)ありがとうございました。
小田木朝子プロフィール
「仕事が好きだし、楽しいと言い合える女性が増えることが喜び」小田木朝子(おだぎともこ)です。
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