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#5 母と私、高齢者2人のこれからの住まいは、「介護状態になっても住めること」

高齢者向け賃貸住宅の折り込みが入る。
間取り図を見たら寝室からも浴室からもトイレが遠いので、これはどうなの?と思い、「寝室とトイレが遠い。トイレは水回りとなるべく一体にしてほしいけどな」とツイートしたら、介護経験者からすぐに「そう。トイレとお風呂は隣同士がいい」とリプライをもらう。
トイレで汚したときはそのままシャワーしたい、というのが介護経験者の希望なのよね。

介護状態になっていてもなっていなくても、高齢になると排泄トラブルが起こりやすくなるから、トイレは浴室と近いほうがいいの。
うちの父も介護状態になる前から、トイレのあとにシャワーを頻繁に使っていたらしい、と母談。
おそらく、下着を汚すようになっていたのだろう。
その母も最近は夜中にトイレに行った後、パンツを脱いで寝室に入ってくる回数が増えてきた。
おそらく、紙パンツを取り換えているのだろう。
だからトイレは寝室とも近いほうがいい。
夜中にトイレに起きたとき、遠いと間に合わないかも!?と焦ったりするしね、夜中は家の中も暗いからトイレが遠いと何かと危険。

7年前に実施した我が家の介護リフォーム

父の介護が終わった2年後の2013年、母と引き続きこのマンションで一緒に暮らすため、我が家は全面リフォーム(リノベーション)を行った。
父が便もれしたときのカーペットのシミがどうやっても落ちないし、マンションの廊下が狭かったために壁の角や扉に車いすがぶつかってあちこちが傷だらけになっていたから、リフォームすることは、実は、介護中に決めていた。
不謹慎に思われるかもしれないけれども、いつ終わる変わらない介護生活のなかで「介護が終わったらリフォームしよう!」という目的を持てたことは、介護のモチベーションを少し上げた。

母と私の高齢者2人のこれからの住まいだから、リフォームの目的は「介護状態になっても住めること」。
つまり介護リフォームである。
ポイントはバリアフリーとコストダウンにこだわること。
バリアフリーとは、段差を解消するだけでなく、動作が楽にできて危険性のない間取りと設備にすること。
コストダウンとは、高齢者の暮らしに必要ない部屋数と装備をカットすること。

大切な老後資金をリフォームで使いすぎないようにね、見積もりを細かくチェックさせてもらうことが重要だった。
家の中のどの箇所を変えたいか、ここはこうしたい、こういうものはいらない、という事柄がはっきりしていたから。
リフォーム・プランに全面的に参加させてもらえることはもしかしたら介護リフォーム最大のポイントだったかもしれない。

段差を解消、空間を作る・・・バリアフリー・ポイントは7つ

①段差をなくす
家中の段差をなくすために、居室のドアは下に見切り板がつかない「上吊り引き戸」を選んだ。
また、浴室にも車いすが入れるようドアの下に段差ができないシステムユニットバスを選んだ。

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②間取りを変えて広い空間を作る
玄関は広めに、廊下には幅を、居室内は車いすで余裕で動けること、そしてトイレや洗面室にも車いすで入れること。
これらの希望を実現するために、3LDKだった間取りを1LDKに変更してトイレは洗面室に組み込む。
この間取り変更で生まれた空間効果は予想以上だった。
家の中はどこも歩きやすくなり、荷物を広げるとか何か作業をするときに広い空間があると気持ちにの余裕が生まれ、暮らしが変わる。
高齢になったらね、使わない部屋とか、納戸になってしまいそうな部屋、収納をやたら作りすぎないことをおすすめする。
家の中は隅々まで「使うスペース」にするのがポイント。

③ドアは引き戸にする
前述した段差をなくす「上吊り引き戸」は、途中まで閉めればバタンと音を立てずにそのままゆっくり閉まる「ソフトクローズ機能」のドアなので、安全で楽に開け閉めができる。
ドアの取っ手には、病院や施設でよく見かける長いバーをつけた。
また、寝室のクローゼットの扉は、開口が広くとれる3連の引き戸にした。

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④キッチンや洗面台の収納は引き出しにする
高齢になってくると、腰やひざに痛みが出たり、バランスがとりにくくなってくるので、中腰の姿勢がつらくなってくるし、かがんで物を取り出す動作がしにくくなってくる。
そういう動作が必要ないよう、毎日使うキッチンと洗面台の収納は引き出し型にした。
また、手が届く位置の収納棚は観音扉にすると開けた時に頭に当たる危険があるので引き戸を選び、脚立でなければ手が届かない場所に収納棚はつけない。
玄関の靴箱も、かがまなくて済むよう棚を設けただけのシューズクロークにして、扉は付けずにロールスクリーンを取り付けた。

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⑤滑りにくい床材を選ぶ 
床材選びは転倒防止につながるので最も神経を使う。
玄関のたたきは、滑りにくいテラコッタのタイルを選び、キッチンと水周り床材は、足を滑らそうとしても止まるクッションフロアを選んだ。
スリッパは滑りやすく脱げたときに転倒の恐れもあるので使用しないため、廊下&居室の床材は滑りにくくてクッション性の高いカーペットを敷いた。
質の良いカーペットは肌触りがよくて裸足がとても気持ちいい。

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⑥トイレを独立させない
介護時に最も難儀になりやすいのが狭いトイレ。
だけど、介助者が一緒に入れる広い独立トイレを設けるのはもったいない。
そこで、トイレは洗面室に組み入れた。
介護者も入れ、車いすになってからも使える広いスペースのトイレが確保できた。

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⑦必要な箇所に手すりをつける
介護リフォームの定番である手すりは、玄関の上がりかまちの左右、ベランダに出る窓の横、浴室の入り口と浴槽周り、トイレの両袖の数カ所に設置した。
トイレ用の手すりは介護保険でのレンタルも可能であるが、置き式で見た目もスッキリせず床掃除もしにくくなるので、手すりがオプションでつけられるパナソニックのアラウーノを選ぶ。
浴槽周りの手すりは、母の現在の状態で必要な箇所に付けるだけでなく、今後の状態如何によっても対応できるよう、浴槽周囲すべてに取り付けた。
トイレの両袖と浴槽周りの手すりは使ってみるととても便利!世代や状態を問わないユニバーサルデザインだと思う。

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コストダウンは、間取り変更、装備の有無、介護保険や助成金の利用で実現!

①細かく区切らない間取りにする
3LDKを1LDKに変更して部屋数が少なくなると、その分のドア等の建材が少なくてすみ、壁に貼るクロスの面積も減る。
トイレを独立させなければ、その分のドアとクロスも節約できる。 

②使わない装備はカットする
システムキッチン、システム洗面化粧台、ユニットバスに標準的に装備されているものを細かくチェックさせてもらい、自分たちが使わない装備はカットした。
具体的には、システムキッチンでは上部収納をカットし、手が届く高さに1アイテム3000円ほどのIKEAのウォールシェルフやキャビネットを取り付けた。
洗面化粧台では「ミラーを開けて物を取る」という動作が高齢者には面倒で危なくもあるため、ミラー付き収納をやめて大きなミラーだけを取り付けた。
また、母も私も浴室にミラーは必要ないため、これもカットした。

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③介護保険や助成金を利用する
母に要支援の認定が出ているため、介護保険の「住宅改修サービス」(上限20万円で自己負担は1割または2割)が利用できる。
ベランダへの段差解消ベランダ・スノコと、玄関やベランダ横に計3か所の手すりを介護保険で賄った。

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また、バリアフリー・リフォームをするにあたり、自治体の窓口に行って相談したところ、当時国土交通省が実施していた「バリアフリー改修補助事業」の助成金があることを教えてもらったので、リフォーム会社の協力のもと申請した。
住宅リフォームに関する助成金や補助金には、国レベルのものから自治体レベルのものまで現在も様々あると思うので、バリアフリー・リフォームをすると決めたら一度、自治体の窓口で相談・情報収集するのがおすすめ、というか必須!

④理解してくれるリフォーム会社を選ぶ
ここまで色々なポイントを書いてきたけれども、なんといってもこれらを理解してくれるリフォーム会社を選ぶことが最も重要。
「餅は餅屋ですから、全部任せてくださいね」と言うリフォーム会社もあって、そのほうがよいケースもあると思うが、今回のように自分の介護経験から細かい箇所のイメージが比較的はっきりしているようなときは、リフォーム・プランを一緒に進めてくれるリフォーム会社の出会いが欲しかった。

そこで、大手から独立型の会社まで5社に声をかけさせてもらい、見積もりと図面の提案をしていただきながら、3社→1社と絞り込ませてもらう。
最終的に選んだ会社は、施工まで請け負う建築設計事務所で、代表の女性建築家の方のセンスと人柄と信頼性が決め手となった。
実際、見積もりからコストダウンを図る私の相談に乗ってくださり、ショールームに全部付き合ってくださり、ちょこちょこ迷う私のわがままをぎりぎりまで聴いてくださり、事前にこちらが注文した収納家具を組み立てて設置してくださり、バリアフリー改修工事の助成金申請の協力もしてくださった。

リフォームをしてから、はや7年が経つ。
バリアフリーをあちこちに施しているので、家の中のどのスペースも動きやすい。
空間が広がったせいか空気の通りがよくなったようで、以前よりも家の中に温度差がなく、冬場の浴室や洗面室も寒くないし窓に結露がつかなくなった。
今年90歳になる母が長生きしてくれるのも、介護リフォームをしたおかげかもしれない。

リフォームした翌年に、ムックと女性誌2誌に我が家のリフォームが掲載されたので、ちょっと古いけど、ご参考まで。


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