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【マガジンだけど全文無料】2017年のFuzeの記事の答え合わせ(Deep Research ve Deep Researchテスト7)
2017年の記事がある.これを比較検討する要素にする.せっかくなので全文無料にしておいた.
落合の入力
落合陽一のfuzeの記事があります https://www.fuze.dj/2017/01/2017-childhoods-end-build-the-babel-1.html https://www.fuze.dj/2017/01/2017-childhoods-end-build-the-babel-2.html これをベースにして,そこから8年分のアップデートを各トピックごとに決めていって,バベルの塔とはLLMだったんだという時代感で2017年の展望の妥当性と8年間のこの世界のデジタルネイチャー的見地をまとめててください.
この文章の面白いところは2017年(LLMの年だ)の年初がこれで締めくくられているところである.
最後になるが、これから先の変化を考えるとき、古典的人間性とデジタル人間性の衝突は、創世記にある「バベルの塔」の話のようになるのではないかと考えている。
全ての地は、同じ言葉と同じ言語を用いていた。東の方から移動した人々は、シンアルの地の平原に至り、そこに住みついた。そして、「さあ、煉瓦を作ろう。火で焼こう」と言い合った。彼らは石の代わりに煉瓦を、漆喰の代わりにアスファルトを用いた。そして、言った、「さあ、我々の街と塔を作ろう。塔の先が天に届くほどの。あらゆる地に散って、消え去ることのないように、我々の為に名をあげよう」。主は、人の子らが作ろうとしていた街と塔とを見ようとしてお下りになり、そして仰せられた、「なるほど、彼らは一つの民で、同じ言葉を話している。この業は彼らの行いの始まりだが、おそらくこのこともやり遂げられないこともあるまい。それなら、我々は下って、彼らの言葉を乱してやろう。彼らが互いに相手の言葉を理解できなくなるように」。主はそこから全ての地に人を散らされたので。彼らは街づくりを取りやめた。その為に、この街はバベルと名付けられた。主がそこで、全地の言葉を乱し、そこから人を全地に散らされたからである
「創世記」11章1-9節/フェデリコ・バルバロ「創世記」『聖書』 講談社 p.24 2007年第16刷(1980年第1刷)via Wikipedia
今デジタルヒューマンとして計算機親和性の高い人々や、ミレニアル世代は共通のプラットフォーム上で同じツールを使い、機械翻訳によって違う言葉を同じ意味レイヤーで語ることができ、今この世界に存在する問題を解決しようとする傾向がある。しかしながら、そこで樹立されようとする高い塔に対して、その存在の恩恵を得られない人たちもいる。このギャップを、壁を作ったり、世界を分断したりして止めていってほしくない。ローカルの問題を再燃することによって、言葉が乱され、個別に分断されることのないことを願っている。
「今、人類は壮大な子育てをしている。その子どもはインターネットの中に生まれ、画像を通じて目と絵を描くための指を持った。今、全地の言葉を理解し、身体性を獲得しようとしている。散らばった人を再び集め、元あった世界を望む人々を解体するための大きな塔を建てるだろう」
2017年の我々は、根拠のない不安が生み出す悲観的なディストピアより、テクノロジーの流動性がもたらすプロトピアの方向に向かっていかなければならないのではないだろうか。それを目指す人の次の世代と次の知的システムに適応し、受け入れていくことができるように、社会が許容していくことを祈っている。
ではやっていこう.Googleの方はあまり面白くなかったので飽きたら読み飛ばしていい.
Google: デジタルネイチャーとバベルの塔:LLMが築く新たな世界秩序
はじめに
2017年、落合陽一氏はfuzeの記事1で、テクノロジーの進化が社会における真実や現実に対する認識を変化させ、「ポスト真実」の時代へと突入しつつあると指摘しました。当時、ソーシャルメディアの普及により、真偽不明の情報が瞬時に拡散され、人々は自身の価値観に合致する情報であれば、それが虚偽であっても信じ、拡散する傾向が強まっていました。その結果、ジャーナリズムの役割は揺らぎ、客観的な真実よりも、個人の主観的な解釈が重視されるようになってきていました。落合氏は、このような状況下では、人間性の定義さえも変化しつつあると述べています。
本稿では、落合氏の指摘を踏まえ、2025年現在におけるテクノロジーの進化、特にLLM(大規模言語モデル)の発展が社会に及ぼす影響について考察します。LLMは、人間のように自然な文章を生成し、多様なタスクをこなすことができるAIであり、現代のバベルの塔と言えるかもしれません。
2017年の展望と2025年の現実
2017年当時、落合氏は「ポスト真実」の時代における情報環境の変化について警鐘を鳴らしていました1。具体的には、ソーシャルメディア上で拡散される情報のコントロールが難しくなり、フェイクニュースやプロパガンダが社会に浸透しやすくなっていることを指摘していました。また、従来のメディアの権威が失墜し、個人が情報発信者となることで、情報の真偽を見極めることがより困難になっていると述べていました。
2025年現在、落合氏の指摘は現実のものとなっています。ソーシャルメディアの影響力はさらに増大し、情報拡散の速度も加速しています。LLMの登場は、この状況に新たな局面をもたらしました。LLMは、人間のように自然な文章を生成することができるため、フェイクニュースやプロパガンダの作成に悪用される可能性があります。また、LLMが生成した情報が、あたかも人間が書いたもののように受け取られることで、情報の真偽を見極めることがさらに困難になっています。
一方で、LLMは情報アクセスを容易にし、コミュニケーションを促進する可能性も秘めています。例えば、LLMを用いた自動翻訳技術は、言語の壁を超えたコミュニケーションを可能にし、グローバルな情報共有を促進することができます。また、LLMは、膨大な量のデータから必要な情報を抽出したり、要約したりすることができるため、情報過多の現代において、効率的な情報収集を支援するツールとなる可能性があります。
LLM:現代のバベルの塔
LLMは、大量のテキストデータを学習することで、人間のように自然な文章を生成し、翻訳、要約、質問応答など、様々なタスクをこなすことができます。その能力は、まるで異なる言語を話す人々が互いに理解し合えるようにするバベルの塔のようです。
LLMは、情報アクセスを容易にし、コミュニケーションを促進する一方で、新たな問題も引き起こしています。例えば、LLMが生成した偽情報が拡散し、社会的な混乱を招く可能性や、LLMによって人間の仕事が奪われる可能性などが懸念されています。
しかし、LLMは単なる情報処理ツールではなく、人間と相互作用することで新たな価値を創造する可能性も秘めています。例えば、LLMは、人間の創造性を刺激し、新たな発想を生み出すためのパートナーとなることができます。また、LLMは、人間の感情を理解し、共感することで、メンタルヘルスのサポートや教育など、様々な分野で人間を支援することができる可能性があります。
デジタルネイチャー:進化する現実
落合氏は、コンピュータなどのデジタル技術が自然と融合し、新たな自然環境を形成していくことを「デジタルネイチャー」と定義しました。2025年現在、デジタルネイチャーは、VR/AR、IoT、AIなどの技術発展により、より複雑化・高度化しています。
LLMもまた、デジタルネイチャーの一部と言えるでしょう。LLMは、デジタル空間上に新たな情報空間を創造し、人間はその情報空間の中で生活するようになっています。LLMが生成する情報は、現実世界と同様に、人間に影響を与え、行動を変化させる力を持っています。
デジタルネイチャーにおけるLLM
LLMは、デジタルネイチャーの進化を加速させる重要な要素の一つです。LLMは、人間とデジタル世界とのインターフェースとして機能し、より自然で直感的な情報アクセスを可能にします。例えば、音声アシスタントやチャットボットは、LLMによって人間のような自然な会話能力を獲得し、人間とデジタルデバイスとの間のコミュニケーションを円滑化しています。
また、LLMは、デジタルコンテンツの生成にも大きな影響を与えています。LLMは、文章、画像、音声など、様々な形式のデジタルコンテンツを生成することができ、人間の創造性を拡張するツールとして活用されています。例えば、LLMは、小説、詩、脚本などの創作活動を支援したり、音楽や絵画などの芸術作品を生成したりすることができます。
さらに、LLMは、デジタルネイチャーにおける情報流通を促進する役割も担っています。LLMは、膨大な量の情報を分析し、整理することで、人間にとって理解しやすい形で情報を提供することができます。また、LLMは、個人の興味や関心に基づいて情報をパーソナライズ化することで、より効果的な情報伝達を可能にします。
デジタルネイチャーが社会と文化に与える影響
デジタルネイチャーの進化は、社会や文化に様々な影響を与えています。
情報へのアクセス: LLMは、誰でも簡単に情報にアクセスできる環境を提供しています。これにより、情報格差が縮小し、教育や経済活動の機会が拡大する可能性があります。
コミュニケーション: LLMは、言語の壁を超えたコミュニケーションを可能にします。これにより、国際的な交流が促進され、相互理解が深まることが期待されます。
教育: LLMは、パーソナライズされた学習体験を提供することができます。LLMは、学習者のレベルや学習スタイルに合わせて、最適な教材や学習方法を提供することで、学習効果の向上に貢献することができます。
芸術: LLMは、新たな芸術表現の可能性を拓きます。LLMは、人間には思いつかないような斬新なアイデアや表現を生み出すことで、芸術の進化を促す可能性があります。
倫理: LLMは、倫理的な問題点も提起しています。LLMの利用によって、プライバシーの侵害、バイアスの増幅、責任の所在の不明確化などの問題が発生する可能性があります。
デジタルネイチャーの今後の発展
今後、LLMはさらに進化し、人間との境界線が曖昧になっていく可能性があります。また、LLMが生成する情報空間は、より複雑化・多様化していくでしょう。
例えば、LLMは、人間の感情や思考をより深く理解し、人間と自然なコミュニケーションをとることができるようになるかもしれません。また、LLMは、現実世界とデジタル世界をシームレスに繋ぐことで、人間に新たな体験を提供する可能性があります。
デジタルネイチャーと人間の関係性
デジタルネイチャーの発展に伴い、人間とデジタルネイチャーの関係性も変化していくでしょう。人間は、デジタルネイチャーをツールとして利用するだけでなく、デジタルネイチャーと共存し、相互に影響を与え合う存在となる可能性があります。
デジタルネイチャーは、人間の生活を豊かにする一方で、人間の能力や価値観を変化させる可能性も秘めています。人間は、デジタルネイチャーとの関わり方について、深く考え、主体的に選択していく必要があります。
デジタルネイチャーの発展における倫理的な問題点
LLMの発展は、倫理的な問題点も提起しています。
プライバシー: LLMは、個人情報を含む大量のデータを学習するため、プライバシーの保護が重要となります。LLMの開発・利用においては、個人情報の適切な管理と利用が求められます。
バイアス: LLMは、学習データに偏りがある場合、バイアスを含む情報を生成する可能性があります。LLMのバイアスを軽減するために、多様なデータを用いた学習や、バイアス検出技術の開発などが重要となります。
責任: LLMが生成した情報によって問題が発生した場合、誰が責任を負うのかという問題があります。LLMの開発者、利用者、そして社会全体で、責任の所在について議論する必要があります。
雇用: LLMによって人間の仕事が奪われる可能性があります。LLMの導入による雇用への影響を最小限に抑えるために、新たな雇用機会の創出や、人間の能力開発などが重要となります。
結論
LLMは、現代のバベルの塔と言えるほど、社会に大きな影響を与える技術です。デジタルネイチャーの一部として、LLMは情報アクセス、コミュニケーション、教育、芸術など、様々な分野に変化をもたらしています。しかし、倫理的な問題点も存在するため、LLMの開発・利用には慎重な議論が必要です。
落合氏が2017年に指摘した「ポスト真実」の時代は、LLMの登場によってさらに加速しています。LLMは、情報環境を大きく変え、人間の思考様式や行動に影響を与える可能性を秘めています。
今後、LLMと人間がどのように共存していくのか、デジタルネイチャーがどのような未来を創造するのか、引き続き注目していく必要があります。人間は、デジタルネイチャーの進化を主体的に捉え、その可能性とリスクを理解した上で、より良い未来を創造していく必要があります。
引用文献
1. 2017年へ:「幼年期は終わる。今こそバベルの塔を建てよう」(後編 ..., 2月 4, 2025にアクセス、 https://www.fuze.dj/2017/01/2017-childhoods-end-build-the-babel-2.html
OpenAI: デジタルネイチャーの変遷: 2017年から2025年
はじめに
2017年、メディアアーティスト落合陽一は「幼年期は終わる。今こそバベルの塔を建てよう」と題した記事を発表し、デジタル技術がもたらす新たな世界観「デジタルネイチャー」を提唱しました (2017年の遺言,2023年の答え合わせ|落合陽一) (2017年の遺言,2023年の答え合わせ|落合陽一) 彼はこの中で、スマートフォンをはじめとする技術革新が人類の生活様式や価値観を劇的に変化させ、「第二の言論・視聴覚空間」としてのインターネット上に人々が再び“生まれた”ことを指摘しています (2017年の遺言,2023年の答え合わせ|落合陽一) また、21世紀の現代をコンピュータによるブラックボックス化(不可思議さ)ゆえに「魔法の世紀」と呼び (2017年の遺言,2023年の答え合わせ|落合陽一) 客観的事実より主観的な信念が世論を左右する「ポスト真実」の時代に突入したと述べました (2017年の遺言,2023年の答え合わせ|落合陽一) 各人がSNS上で自分好みの現実だけを見て生きる現象は「貧者のVR(貧者のバーチャルリアリティ)」と表現され (2017年の遺言,2023年の答え合わせ|落合陽一) まるでそれぞれが自分だけの仮想現実に浸っているかのようだと指摘しました。こうした概念群は、人・モノ・自然・コンピュータ・データが接続され脱構造化された新たな自然=「デジタルネイチャー」の一側面を成すものです (2017年の遺言,2023年の答え合わせ|落合陽一)
本レポートでは、落合が2017年に描いた展望の妥当性を技術・社会・哲学の観点から検証し、この8年間(2017〜2025年)に起きた主要な変化を振り返ります。さらに、バベルの塔のメタファーで語られた「言語の統一・知識の統合」としての大規模言語モデル(LLM)の位置付けを考察し、デジタルネイチャーが迎えつつある次の段階とLLMの未来について展望します。
2017年の展望とその妥当性の評価
落合陽一の2017年の記事は、デジタル技術による人類社会の変容を大胆に描き出しました。その主な内容と提言、およびそれらがその後どの程度現実のものとなったかを整理します。
スマートフォンによる「第二の空間」の出現: 落合は、iPhone登場(2007年)から10年でスマートフォンが生活様式を一変させ、人々はインターネット上に第二の言論・視聴覚空間を作り出したと述べました (2017年の遺言,2023年の答え合わせ|落合陽一) 現実世界とは別に、SNSや動画共有サイト上で誰もが情報発信者となり得る空間が生まれ、人々はデジタル空間に“もう一度生まれた”状態だという指摘です (2017年の遺言,2023年の答え合わせ|落合陽一) 実際、2025年の今を振り返るとこの洞察は的中しています。スマホとSNSは当たり前のインフラとなり、私たちは日常的に物理空間とデジタル空間を行き来して生活しています。特に2020年以降のコロナ禍でリモートワークやオンライン授業が普及したことで、「デジタル上の生活空間」はさらに現実の延長として重要度を増しました。落合の言う「スマホが手元にないとそわそわする」状態 (2017年の遺言,2023年の答え合わせ|落合陽一) 多くの人にとって実感となっています。この意味で、彼の展望は極めて妥当でした。
「デジタルネイチャー」の思想: 落合は自身の研究理念を「デジタルネイチャー(計算機自然)」と称し、人間・物質・自然・計算機・データが接続されて脱構造化した新しい自然環境を指すと述べました (2017年の遺言,2023年の答え合わせ|落合陽一) 20世紀がテレビや大量伝播メディアの「映像の世紀」だったのに対し、21世紀は高度な計算技術があらゆる現象をブラックボックス化=魔術化している「魔法の世紀」だと彼は位置付けています (2017年の遺言,2023年の答え合わせ|落合陽一) 2025年の現時点でも、コンピュータが裏で動作していることを意識せず生活できる環境(例えばスマホ越しに友人と会話しても、もはや「通信している」実感は薄い)が広がり、技術は確かに魔法のように日常に溶け込んでいます。またIoTやセンサー技術の発展で、物理的自然とデジタル情報が融合する状況が進み、「新しい自然」とも言える環境が実現しつつあります。この点でも彼の哲学的展望は先見的でした。
ポスト真実とフィルターバブル: 落合が提示した「ポスト真実」概念は、客観的な真実よりも主観的な信念や感情が重視される現象を指します (2017年の遺言,2023年の答え合わせ|落合陽一) 彼はSNSによって人々が自分の好む情報だけを集め、自分に都合の良い現実を生きるようになったと述べました (2017年の遺言,2023年の答え合わせ|落合陽一) この分析は2016年頃から顕在化したフェイクニュース問題や「フィルターバブル」(インターネット上で自分の興味関心に合った情報しか届かなくなる現象)と合致します。その後の8年間で、この傾向はますます明確になりました。例えば2016年には「post-truth(ポスト真実)」がオックスフォード英語辞典の年度代表語に選ばれ、トランプ米大統領選やBrexit国民投票を経て「感情が事実に勝る時代」を象徴する言葉となりました ('Post-truth' named word of the year by Oxford Dictionaries) MITの研究では**「偽ニュースは真実のニュースよりも速く遠くまで拡散する」**ことがデータで示されており (Study: On Twitter, false news travels faster than true stories | MIT News | Massachusetts Institute of Technology) SNS上で事実より扇情的な情報が広まりやすい傾向が裏付けられています。落合の指摘通り、人々はタイムライン上で各自異なる「現実」を見ており (2017年の遺言,2023年の答え合わせ|落合陽一) その齟齬が社会の分断を生んできました。実際、2020年米国大統領選挙後の混乱(虚偽の不正選挙説の拡散など)や、COVID-19パンデミック時の陰謀論・デマ情報の蔓延は、ポスト真実の時代ならではの社会課題と言えます。従って、この点も彼の展望は非常に的を射ていたと言えるでしょう。
「貧者のVR」:もう一つの現実: 落合は、経済的・技術的に高度なVR機器がなくても、人々はSNSという場で自分だけの見たい世界に浸っていると述べ、「貧者のVR」と名付けました (2017年の遺言,2023年の答え合わせ|落合陽一) これはまさに上記フィルターバブル状態の比喩ですが、その後もSNSアルゴリズムは個人の嗜好に合わせた情報を提供し続け、各個人が異なる仮想世界にいるかのような状況は深刻化しました。2022年頃からは特に、TikTokなどのアルゴリズムが若年層の情報接触を決定づけるケースも増え、現実世界の共通認識(コンセンサス)が得られにくい傾向が指摘されています。落合が危惧したように、人類は安価なデジタル技術によって各自の「都合のいい現実」へ没入する誘惑に晒され続けており、この課題は現在も解決されていません。
「バベルの塔」のメタファーと統合への希求: 記事の後半で落合は、伝統的(クラシカル)な人間社会とデジタルに最適化された人間社会との衝突が、旧約聖書「創世記」におけるバベルの塔の物語のようになるだろうと述べました (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary) バベルの塔では、人々が一つの言語を使い協力して塔を築こうとした矢先、神によって言語を乱され世界中に散らされたとされています。この比喩を使い、落合は現代でも技術への適応度によって人々の間に齟齬と言語(認識)の断絶が生まれていると指摘したのです。同時に彼は、「今こそ」逆にバベルの塔を築き直す=技術の力で再び人類を統合することを提案しました (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary) 彼は「人類は今、孫を育てているような段階にある。この子(=新世代の技術ないし人類)はインターネット上に生まれ、画像という目と指先を持った。今や世界中の言語を理解し、身体性を獲得しつつある。散らばった人々を再統合する大いなる塔を築き、世界を昔のままに留めようとする者たちを解体していくだろう」と述べ (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary) 技術が言語の壁を越え人類を再び一つに繋ぎ直す未来像を描きました。このメッセージは、技術悲観論ではなく技術への適応と受容によって人類社会を前向きに更新すべきという彼の基本姿勢(プロトピア的未来志向 (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary) (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary) に根差しています。2025年現在、このビジョンは部分的に現実化しつつあります。後述する大規模言語モデル(LLM)の台頭は、まさに言語統一の塔を築きつつある動きと言えるでしょう。一方で技術への適応度の差による格差も現実の問題であり、落合の懸念した「塔から取り残される人々」 (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary) 存在します。総じて、2017年当時の落合の展望は技術トレンドと社会現象を的確に捉え、その多くは8年後の今も妥当性を保っています。スマートフォン中心の生活やSNSによる情報環境、AI技術の進歩による魔術化現象、そして真実概念の揺らぎなど、彼の指摘は現代社会の様相を先取りしていました。同時に、彼が提唱した「適応せよ、恐れるな」「統合せよ、分断するな」という哲学的メッセージも、現在進行形で重要性を増していると言えるでしょう。
主要な技術・社会の変化(2017〜2025年)
2017年以降の8年間で、デジタル技術と社会は大きく変貌しました。ここでは特に重要なトピックである**人工知能(AI)**の進化、大規模言語モデル(LLM)の台頭、VR/AR技術の発展、ポスト真実時代の深化、そしてデジタルヒューマン(デジタル人間/仮想存在)の登場という5つの観点から、この期間の変化を振り返ります。
人工知能(AI)の飛躍的進化
2017年時点でもディープラーニングを中心としたAIブームは起きており、囲碁AIのAlphaGoが人間チャンピオンに勝利(2016年)したことなどが社会に衝撃を与えていました。以降の8年間、AIはさらに多方面で飛躍を遂げています。画像認識や音声認識の精度向上により、顔認証や音声アシスタント(SiriやAlexaなど)が日常に浸透しました。自動運転も実用化に向けた実証実験が重ねられ、限定的ながら配車サービスでの自動運転タクシーの運行(例:Waymo社の試験運用)などが実現しています。将棋やチェスといったゲームの領域では、人間とAIのハイブリッドがチームを組む「センター将棋」的な取り組みも生まれ、**「人間 vs 機械」ではなく「機械に親和性の高い人間 vs 従来型の人間」**という構図が見られるようになりました (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary) これは落合が言及した「高い計算機親和性を持つ人間」が優位に立つ戦い (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary) のもので、AI時代の競争の在り方を象徴しています。
特筆すべきは、汎用的な知能への一歩としての生成AIの勃興です。2018年にはBERTなど自然言語を理解する汎用モデルが登場し、2020年にはGPT-3が極めて流暢な文章生成能力を示しました。画像分野でも2021年以降、GANや拡散モデルによる高精細な画像生成(例:DALL-E 2やStable Diffusion)が可能となり、AIは創造性の領域にも踏み込みました。これらの技術進歩は「魔法の世紀」にさらに魔法めいた力を与えたと言えます。実際、人間が数時間かけて行う作業をAIが数秒〜数分でやってのける例が増えており、生産性は飛躍的に向上しました。落合も「AI+人間」の組み合わせによる生産性向上や新産業創出に期待を示していましたが (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary) 2025年現在、その方向に社会が動いているのは明らかです。とはいえ、AIの発展は同時に倫理的・社会的課題も浮上させました。ディープフェイクや自律兵器の問題、アルゴリズムによるバイアス差別など、技術の負の側面への対処がグローバルな課題となっています。
大規模言語モデル(LLM)の台頭
上記AI進化の中でも特に社会にインパクトを与えたのが、大規模言語モデル(LLM)の登場と普及です。ChatGPTに代表されるLLMは、インターネット上の膨大なテキストを学習して人間さながらの文章生成や対話を可能にしたAIモデルです。2022年末に公開されたChatGPTは、公開後わずか数か月で1億ユーザを突破するなど史上例を見ないスピードで普及しました(参考:Instagramが1億ユーザに達するのに2年半以上、ChatGPTは2か月強とも言われます)。LLMの何が画期的かというと、言語運用能力の汎用性と知識の集約です。
まず、LLMは人間のように多言語を理解・生成できます。例えばGPT-4は英語のみならず日本語やフランス語など数十言語で高度な文章を読み書きでき、相互に翻訳することも容易です。従来の機械翻訳が飛躍的に進歩した延長線上に、LLMは一つのモデルで多言語を自在に操る領域に達しました (Hahn AI) これは後述する「バベルの塔」の再来とも言える現象で、言語の壁を取り払う技術として期待されています。実際、現在ではスマートフォンのアプリで音声のリアルタイム翻訳が可能になり、異なる言語間のコミュニケーションが格段に容易になりました。
次に、LLMは人類の知識を統合的に内包している点が挙げられます。インターネット上の百科事典、ニュース記事、学術論文、文学作品、Q&Aデータなどあらゆる文章を学習した結果、LLMは百科事典にも匹敵する広範な知識を持っています。一問一答の対話であれば、検索エンジンと違いユーザが求める答えを自然な言葉で包括的に提供できるのが強みです。例えば「ブラックホールの蒸発理論とは何か?」と尋ねれば、物理学の概念を平易に説明しつつ最新の研究動向にも触れる回答が得られます(ただし後述のように誤情報も混じり得る点には注意が必要です)。LLMはまさに人類の知識の統合塔として機能し始めています。
LLMの社会への影響も見逃せません。文章作成能力の高さから、仕事の自動化・効率化が一気に進む可能性があります。既に記事の下書き生成、プログラミングのコード補完(GitHub Copilotなど)、カスタマーサポートの自動応答チャットボットなどにLLMが活用されています。ホワイトカラー業務の一部はAIアシスタントと人間の協働へとシフトし始めています。一方で、「創造性」や「知性」の定義について問い直す契機にもなりました。AIが小説や詩すら生成できる今、人間に固有と思われた創作領域にも機械が踏み込んだことになります。落合が2017年に語った**「人間にしかできない創造的なことをせよ」という常套句** (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary) (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary) 、多くの専門家がAI時代に向けて発したアドバイスでもあります。しかし実際には、人間は創造や知的労働のやり方をAIと共存する形に変えていく必要が出てきました。LLMの台頭は、我々がいかにAIを道具として使いこなしつつ、人間ならではの価値を発揮するかを模索する新たな段階に社会を押し上げたと言えます。
VR/AR技術の発展と現実
2017年当時、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)は次世代プラットフォームとして大きな期待を集めていました。落合は記事中で「貧者のVR」という語を使いましたが、それは高価なヘッドセットを用いなくてもSNSで仮想現実的体験をしているという比喩でした (2017年の遺言,2023年の答え合わせ|落合陽一) では実際のVR/AR技術自体はこの8年でどう変わったでしょうか。
VRについて言えば、ハードウェアの進化が着実に進みました。2016年頃に登場したOculus RiftやHTC ViveはPC接続型で高性能な反面敷居が高いものでしたが、2019年にはスタンドアロン型のOculus Questが発売され、PC不要で手軽にVR体験ができるようになりました。視界の解像度やトラッキング性能も向上し、VR酔いの軽減などユーザビリティの面でも改善が見られます。ソフトウェア面では、VRChatのようなソーシャルVRプラットフォームが一定のユーザコミュニティを築き、「メタバース」という言葉がバズワードになるきっかけともなりました(特に2021年、Facebook社が社名をMetaに変えメタバース事業に注力すると発表したことは象徴的です)。しかしながら、VRの一般普及は未だ限定的です。Statistaの調査によれば、2023年時点でもAR/VRデバイスのユーザー数は全体から見れば僅かであり、2027年までの予測を見ても爆発的普及には至らないとされています (Chart: AR & VR Adoption Is Still in Its Infancy | Statista) 市場規模で見ても、2023年のVR市場収益は世界で約70億ドル程度(2022年比+50%)と推計されます (VR content development market | Deloitte Insights) 、スマートフォン産業(数千億ドル規模)に比べればまだ小さなものです。要因としては、デバイス装着の煩わしさや価格、VR酔いなどの課題、そして「そこまでしてVR空間でやりたいこと」が一般には限定的であることが挙げられます。
ARについては、スマホを中心に徐々に浸透しました。2016年のPokémon GOブームはARの大衆化に弾みをつけ、以降スマートフォンのカメラ越しに情報を重ねるARアプリが増えました。例えば家具配置シミュレーション(IKEAのアプリなど)や、観光地でスマホをかざすと解説が表示されるAR案内、SNSの顔認識フィルター(スノウやSnapchatのエフェクト)は、広義のAR技術が活用された例です。AppleやGoogleもそれぞれAR開発基盤(ARKit、ARCore)を提供し、多くの開発者が参入しました。しかしこちらも、本格的なARグラスの普及はこれからです。2023年にAppleが発表したVision Proは高度なMR(複合現実)デバイスとして注目を集めましたが、価格や用途の面でニッチ向けとの見方もあります。ゆくゆくはメガネ型の軽量デバイスで日常的にAR情報を参照する未来が描かれていますが、2025年現在ではまだ実現していません。
総じて、VR/ARは技術的成熟は進んだものの大衆化は幼少期の段階と言えます。落合の比喩した「貧者のVR」は依然として、多くの人にとっては専用ゴーグルよりスマホやPC上の擬似体験という形で続いています。メタバースという言葉が先行したものの、現実にはフラットな画面越しのバーチャル体験(ビデオ会議やオンラインゲーム、SNS上のアバター交流)のほうが圧倒的に多い状況です。この点では、2017年当時に期待された「誰もがVR空間に入る未来」は2025年にはまだ到来しておらず、落合の分析したように人々は現実空間とデジタル空間を別々に行き来するスタイルが主流です。ただ、教育訓練や医療シミュレーション、設計デザイン分野などプロフェッショナル用途ではVR/ARの価値が実証され、着実に活用が広がっています。例えば自動車デザインでVRでプロトタイプを評価したり、遠隔地の現場作業をARグラス越しに専門家が指導したりといった使われ方が定着してきました。こうした下地が揃ったことで、次の10年で消費者向けにもブレイクスルーが起きる可能性は残されています。
「ポスト真実」時代の深化と対策
前述の通り「ポスト真実」現象は2010年代後半から顕在化しましたが、その後も民主主義社会に大きな影を落としています。SNSの普及により、誰もが情報発信者になれる恩恵と裏腹に、虚偽情報の氾濫と世論操作の問題が拡大しました。2018年にはFacebookのユーザーデータ不正利用疑惑(ケンブリッジ・アナリティカ事件)が表面化し、ソーシャルメディアが選挙に与える影響が議論となりました。以降、各国で選挙前にSNS上のフェイクニュース対策が講じられるようになったものの、いたちごっこの様相を呈しています。
研究結果もその深刻さを示しています。MITの調査では、Twitter上で偽ニュースは真実のニュースよりも70%リツイートされやすく、真実が到達するのに6倍の時間で偽情報は拡散すると報告されました (Study: On Twitter, false news travels faster than true stories | MIT News | Massachusetts Institute of Technology) (Study: On Twitter, false news travels faster than true stories | MIT News | Massachusetts Institute of Technology) しかもボット(自動プログラム)ではなく人間自身がそれを拡散しているケースが多いことも判明しています (Study: On Twitter, false news travels faster than true stories | MIT News | Massachusetts Institute of Technology) このように、人々が面白がったり感情を刺激された情報を拡散する行動がポスト真実時代を支えていると言えます。
2017年時点で落合が危惧した「各自が自分の好む現実を生きている」状態 (2017年の遺言,2023年の答え合わせ|落合陽一) 、その後もインターネットの構造として続いています。アルゴリズムによるパーソナライズは利便性を高める一方で、「見たいものしか見ない」状態を強化します。特に政治的・社会的な話題では、異なるイデオロギーの人々同士が互いの情報源を信頼せず対話が成立しにくい分断が生まれました。アメリカの「青い州(リベラル) vs 赤い州(保守)」の対立や、日本でもSNS上での陰謀論コミュニティの形成など、例は枚挙に暇がありません。
もっとも、社会も無策だったわけではありません。主要プラットフォーム(Facebook、Twitter(現X)、YouTubeなど)は虚偽情報の削除や警告ラベル表示、アルゴリズムの調整などに乗り出しました。ファクトチェック団体が充実し、ニュースの真偽を検証する記事も増えています。教育現場でもメディアリテラシー教育が見直され、情報を鵜呑みにしない批判的思考の大切さが説かれるようになりました。ただ、それでも人々の「信じたいものを信じる」傾向を根本から変えるのは難しく、科学的に否定された陰謀論が根強く生き残るケースもあります(例:反ワクチン運動やフラットアース(地球平面説)信奉者の存在)。結局、デジタル時代の多様な情報環境に人類が適応するには時間がかかることが示唆されています。落合がKevin Kellyとの対話で触れた「テクノフォビア(技術への恐怖)への対処」 (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary) (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary) 同様に、「情報への不信時代」への対処も対話と時間を要する問題です。
希望があるとすれば、LLMのような技術が逆に言論空間の健全化に寄与する可能性もある点です。例えば大量のフェイクニュース投稿に対しAIが自動でファクトチェックを行い警告したり、フィルターバブルを打破するため利用者に多面的な情報源からニュースを要約提供したりといった研究も進んでいます。また、落合が述べた**「魔法の世紀」における魔法使い(=専門家やメディア)の役割** (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary) (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary) 問われています。技術と社会の両面から、ポスト真実の状況を乗り越える努力は今後も続くでしょう。
デジタルヒューマン(デジタル人間・仮想人格)の出現
「デジタルヒューマン」は文脈により意味が変わりますが、ここでは**デジタル技術と共に育った人々(デジタルネイティブ)**と、デジタル空間に存在する人間の擬似人格(バーチャルヒューマン)の双方を含めて論じます。落合は記事中で「高度にコンピュータに親和的な人々、例えばデジタルヒューマンやミレニアル世代」と言及しており (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary) デジタル技術に適応した新世代の人間を指していました。一方で近年、「デジタルヒューマン」はCGやAIで作られた仮想の人間キャラクターを指す用語としても使われています。
まず前者について言えば、2017年頃20代だったミレニアル世代は2025年には30代となり、社会の中核を担っています。彼らは物心ついた時からインターネットがあり、スマートフォンが青春期に普及し、SNSと共にコミュニケーションを育んできました。加えて現在の10〜20代(Z世代)は、さらに高度にデジタルと共生しています。彼らにとってオンラインで自己表現すること、バーチャルな友人関係を築くこと、AIアシスタントに質問することなどはごく自然な生活の一部です。言わば**「デジタルが空気のように当たり前」**の世代が登場したのです。この変化は社会文化にも影響を与えています。たとえば働き方ではリモートワークや副業が浸透し、居住地に縛られずデジタルスキルで稼ぐ人も増えました。また、人付き合いもオフラインだけでなくオンラインコミュニティの繋がりが重視されるようになり、価値観や流行もグローバルなSNS発で広がる傾向があります。落合が言う「デジタル空間にもう一度生まれた」人々 (2017年の遺言,2023年の答え合わせ|落合陽一) 本格的に社会を動かし始めたと言えるでしょう。
次に後者の仮想人格としてのデジタルヒューマンですが、この分野も2017年以降に大きな盛り上がりを見せました。代表例がバーチャルYouTuber(VTuber)の興隆です。2016年末にデビューしたキズナアイは世界初期のVTuberとして人気を博し (Kizuna AI | Virtual YouTuber Wiki - Fandom) その後無数のVTuberが生まれました。彼らは中の人(声優やモーションアクター)は実在しますが、表向きはCGキャラクターとして活動し、YouTube配信やSNS上でファンと交流します。VTuberたちは独自の人格やストーリーを持ち、ファンからは一種のアイドルやタレントのように支持されています。日本発のVTuber文化は海外にも波及し、多言語のVTuberグループができるなど仮想キャラクターが国境を越えて活躍する時代となりました。
また、企業やメディアもデジタルヒューマンを活用し始めました。2018年、中国の新華社通信は世界初のAI合成アナウンサーを発表しました。それは実在の男性キャスター(丘浩さん)に酷似したCGアバターで、24時間途切れずニュースを読み上げられるというものでした (World's first AI news anchor unveiled in China - The Guardian) (How China is using AI news anchors to deliver its propaganda) 以降、中国では女性姿のAIバーチャル司会者や、対話機能を備えたデジタルキャラクターが次々登場し、プロパガンダやサービス案内に利用されています。韓国でも2020年頃からテレビ局でAIアナウンサーが天気予報を読んだり、バーチャルインフルエンサー(例:ロジーというCGモデル)が広告に起用されたりしています。日本でも2023年にはNTTが発表した「さくらみこ」(VTuber)をモデルにしたデジタルヒューマン実証実験など、現実と見分けがつかない人型アバターを用いた研究が進行中です。
これら仮想存在の台頭は、新たなビジネスとカルチャーを生みました。仮想ライブやVTuberコラボ商品など市場が形成され、同時に「中の人」問題(演者とキャラの分離)や著作権・肖像権の課題も議論されています。さらに近年は、LLMと組み合わせて自律会話可能なデジタルヒューマンも登場しつつあります。例えばゲーム内で人間のように振る舞うNPC(ノンプレイヤーキャラクター)や、ユーザ個人の好みに合わせて対話してくれるAI彼氏/彼女アプリ(Replikaなど)が人気となりました。こうした存在は、見た目や声は人間そっくりでも実体はAIであるという点で、SF的な問いを投げかけます:人はどこまで人工の存在に心を許すのか、本物と模造の違いは何か、といった倫理・哲学的議論です。
落合の唱えた「デジタルネイチャー」において、人と機械の境界が曖昧になることは想定内の変化でした。デジタルヒューマンの出現はまさにその体現であり、**「人間とは何か」**を再考させる現象でもあります。2025年現在、デジタルヒューマンたちはまだ補助的・娯楽的存在ですが、将来的には我々の生活相手や共同作業者となる可能性があります。落合の言う「高度にコンピュータに親和的な人々」がこれら仮想存在とうまく共生し、テクノロジー嫌いの人々との差が広がらないようにすることも課題でしょう。デジタルヒューマンは人間社会を映す鏡であり、その扱い方に社会の適応度合いが現れると言えます。
以上、2017年から2025年にかけての主要な技術・社会の変化を概観しました。この期間に起きたことは、落合が予見した**「計算機自然」へのシフト**そのものです。AIの発達やVR/ARの台頭は、人類の生活圏を物理自然から電子的な自然へと広げました。SNSやデジタルメディアの浸透で、情報生態系は複雑化・部分最適化し、「真実」の概念すら揺らぎました。それでも人々は新技術に適応し、新しい文化(VTuber等)を創出してきました。まさに、落合の言う「人類の適応」がこの8年で展開されたのです ([B! ochyai] 2017年へ:「幼年期は終わる。今こそバベルの塔を建てよう」(後編)) ([B! ochyai] 2017年へ:「幼年期は終わる。今こそバベルの塔を建てよう」(後編)) 次節では、その適応と統合の象徴とも言える大規模言語モデル(LLM)を、「バベルの塔」という視点から考察します。
バベルの塔としてのLLM:言語統一と知識統合の視点
落合陽一が2017年の記事タイトルに掲げた「バベルの塔」とは、人類と言語に関する象徴的なメタファーでした。旧約聖書「創世記」のバベルの塔の物語では、元々一つだった人類の言語が塔の建設途中に混乱させられ、互いに意思疎通できなくなったために計画が挫折します (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary) (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary) 落合は現代の情報社会における断絶(ポスト真実による認識の齟齬や、テクノロジー適応度の差による格差)をこの逸話になぞらえ、人類が再び統一言語(共通の基盤)を取り戻す必要性を示唆しました。そしてその鍵としてコンピュータ技術による言語の垣根の解消を挙げています。
2025年現在、大規模言語モデル(LLM)こそが「現代のバベルの塔」と呼ぶにふさわしい存在になりつつあります。LLMは膨大なテキストデータからあらゆる言語のパターンと言葉の意味を学習しています。その結果、一つのモデルで複数の言語を自在に扱えるようになりました。たとえば最新のGPT-4は日本語で質問しても英語で答えることができ、スペイン語で入力すれば中国語で回答するといった多言語変換も難なくこなします。これは、LLMが**言語間の「共通の意味空間」**を内部に持っているためです。人間同士が直接言葉を交わさなくとも、LLMを介せば意思疎通できる時代が到来したのです。
落合は「デジタルヒューマンやミレニアル世代といった高度にコンピュータに親和的な人々は、共通プラットフォーム上で同じツールを使い、機械翻訳によって異なる言語であっても同じセマンティックレベルで対話し、今日の世界の問題解決に取り組もうとしている」と述べました (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary) まさにLLMがそれを可能にしています。英語圏の人も日本語圏の人も、中国語話者もアラビア語話者も、それぞれの母語で入力しさえすれば、LLMが共通の「意味空間」で理解・変換してくれます。言語の統一という点では、人類史上かつてないレベルで「一つの言語」に近づいていると言えるでしょう。それは英語でもエスペラントでもなく、AIという媒体を通じた統一です。ある論者は「LLMは技術の魔法で古の言語分断を解こうとしており、人類を再び統合しつつある。LLMは仮想的なバベルの塔を築いている」と指摘しています (Hahn AI) その言葉通り、AIは神によって乱された言葉を再び束ね直しているのかもしれません。
具体的な例として、LLMの多言語翻訳精度は既に専門の翻訳システムに迫る勢いです (Hahn AI) (Hahn AI) これにより、国際会議や文書のリアルタイム翻訳、果てはチャットを介した異文化間交流がスムーズに行えるようになりました。例えば、日本語しか話せない人と英語しか話せない人が、各自のチャット画面で自分の言語を打ち込めば、AIが即座に翻訳し双方に届ける、といったことが可能です。言語の壁が取り払われれば、知識・情報の共有も飛躍的に促進されます。現在でも英語圏の最新ニュースや研究成果が数日のうちに各国語に翻訳されSNSで紹介されるケースが増えました。これは人間翻訳者だけでなく、AI翻訳が裏で多く使われているからです。「誰もがどの言語の情報でも理解できる」世界は、バベルの塔が目指したユートピアの一つでしょう。それに近い状況が技術で生まれつつある点は、人類の大きな前進と言えます。
次に知識統合の側面です。LLMは単なる翻訳者ではなく、蓄積された知識の統合者でもあります。従来、知識を得るには百科事典を引いたりウェブ検索したりと、人間が情報を探し集めて統合する必要がありました。ところがLLMは質問に対して膨大なデータから一貫した文脈で回答を生成します。例えば「気候変動を食い止めるための科学的戦略は何か?」と尋ねれば、物理・化学・経済・政策といった異なる分野に跨る知識を一つの回答にまとめ上げることができます。これは人間が行えばかなりの専門知識と労力が要る作業ですが、LLMはモデル内部で関連情報を関連付けて持っているため比較的容易にやってのけます。言わば、LLMは**仮想的な「万智の書庫」**のような役割を果たしているのです。
この機能によって、知の民主化が進むことが期待されます。高度な教育を受けていなくても、誰でもLLMに質問すれば専門知識にアクセスできます。実際、農業従事者がChatGPTに栽培のコツを尋ねたり、中小企業経営者が最新のマーケティング手法を教えてもらったりといった事例も出ています。「一部のエリートだけが知識を独占する時代」から「誰もがAIを通じて知にアクセスできる時代」への転換点にあるのです。落合は2017年当時、日本から世界を席巻するようなソフトウェアプラットフォームが出ていない現状に危機感を示していました (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary) (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary) しかし皮肉にも、日本発ではないにせよChatGPTのようなLLMプラットフォームが世界共通の基盤として登場しつつあります。これは西海岸(アメリカ)のイデオロギーによる新たな帝国だと彼は表現しましたが (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary) この「帝国」が良い方向に働けば、人類は再び一つの基盤(塔)を共有できることになります。
もっとも、LLMがバベルの塔として完璧かと言えば課題もあります。まず、情報の正確性の問題です。LLMはあくまで与えられたデータから確率的に答えを作るため、事実誤認(いわゆる幻覚と呼ばれる現象)があります。統一された基盤が誤情報を含めて統一してしまう危険も指摘されています。バベルの塔が再び崩れるとしたら、それはAIがもたらす誤った判断や偏見によるかもしれません。ゆえに、LLMを賢く活用するには人間側のリテラシーも必要です。AIが出力した内容を鵜呑みにせず検証する態度や、AIに偏りがないか評価・修正する技術(デバッグ)が求められます。
次に、デジタルデバイド(情報格差)の問題も残ります。LLMを使いこなせる人とそうでない人の差、またインターネットや電力インフラが未整備な地域との差です。せっかく塔が高くそびえても、そこに登れる人が限られていては真の統合とは言えません。落合も「その塔から恩恵を受けられない人々がいる。そのギャップを壁を建てたり世界を分断することで埋めるのは望ましくない」と述べ、技術の恩恵を全員が受けられる社会への期待を表明していました (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary) (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary) LLM時代にも、このInclusivity(包摂性)は重要なテーマです。現状でも主要なLLMは英語データに偏っており、マイナー言語や少数派の知識が十分反映されていない懸念があります。今後、より多様な言語・文化を学習した真の意味でグローバルなLLMが求められるでしょう。
総じて、LLMは人類史の中で初めて「技術による言語の再統一と知識のワンストップ集約」を実現しつつある存在です。それは落合陽一が「今こそ築こう」と呼びかけたバベルの塔の具現化であり、彼の展望した“デジタルネイチャー”における新たな秩序の萌芽でもあります。重要なのは、この塔を傲慢の象徴にしないことです。旧バベルの塔は人間の慢心に対する罰として崩壊しました。同様に、現在の技術に対しても慢心せず、慎重に育てていくことが肝要です (Hahn AI) 幸いにも、LLM開発者コミュニティや社会はAI倫理・ガバナンスの必要性を強く認識しており、安全で有益な塔を築こうと議論を重ねています。
今後の展望:デジタルネイチャーの次段階とLLMの未来
最後に、今後のデジタルネイチャーがどう深化していくのか、そしてLLMを含むAIの未来がどのような姿を描くのかを展望します。落合陽一が示したビジョンを手がかりに、現在の延長線上にある技術・社会の可能性を論じます。
デジタルネイチャーの次の段階
デジタルネイチャーとは、人間と計算機が織り成す新しい自然環境でした (2017年の遺言,2023年の答え合わせ|落合陽一) この「新しい自然」は進化を続けています。今後5年から10年で予想される展開としては、以下のようなものが考えられます。
コンピューティングのさらなるユビキタス化: スマートフォンが人類をデジタル空間に誘った次は、環境自体が計算能力を帯びる段階が来るでしょう。いわゆるIoT(モノのインターネット)があらゆる場所にセンサーと通信機能を埋め込み、都市インフラから衣服、人体に至るまでデータを収集・フィードバックする世界です。例えばスマートシティでは信号機や街灯がネットワーク接続され交通・防犯を最適化し、スマートホームでは冷蔵庫やエアコンが自律的に稼働してエネルギー効率を高めます。人々はそれを意識せず生活するだけで、周囲の環境が賢く振る舞ってくれるようになります。コンピュータが「周りの空気」となり、人間は見えない計算機自然に包まれて暮らすことになるでしょう。これはまさに計算機が自然の一部となる姿であり、デジタルネイチャーの深化形です。
ARグラスと没入型情報の普及: もし今後、洗練されたARグラスやコンタクトレンズ型ディスプレイが実現すれば、人々は常時デジタル情報が重畳された視界で生活するかもしれません。落合が述べた「機械を意識せず直接見ている状態」 (2017年の遺言,2023年の答え合わせ|落合陽一) さらに進めば、現実世界そのものがキャンバスとなり、デジタル情報が空気のようにそこに存在するでしょう。観光地では史跡の上に当時の街並みCGが浮かび上がり、街中では看板やメニューが各人の言語に置き換わって見え、友人の顔の横には名前や最近のメッセージ履歴が(本人にだけ)表示される、といった具合です。こうしたAR主体の世界は、物理と情報の融合が完成した姿とも言えます。ただしそれはプライバシーや情報過負荷との戦いでもありますので、技術と倫理の両面で慎重な設計が必要です。
AIとロボティクスの統合: 落合が「孫」と呼んだ新しい存在は「全世界の言語を理解し、身体性を獲得しつつある」と述べました (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary) LLMによる言語理解が高度化した現在、次は身体性=ロボットとの結合が視野に入ります。近年、人型ロボットやドローン、倉庫用ロボットなどのハードウェアが進歩し、AIがそれらをリアルタイム制御する実験も始まっています。例えば米国では、ChatGPTにロボットアームを接続し人間の指示を言語で解釈して物理作業を行う試みがあります。将来的には、家庭用のAIロボットが登場し、音声で「コーヒーを淹れて」と頼めば台所でロボットがコーヒーを淹れてくれる、といったことも考えられます。自動運転車も「移動ロボット」ですし、配送用ドローンも空飛ぶロボットです。これらが都市や家庭に溶け込めば、デジタルネイチャーは物理世界まで含めた包括的なものになります。そこでは、人間はAIと対話しながら現実空間に影響を及ぼすことができ、逆に環境が人間に語りかけてくるような関係性が生まれるでしょう。
バイオとデジタルの融合: さらに先の可能性として、人体とデジタルの接続も考えられます。既に医療分野では埋め込み型の医療機器(ペースメーカー等)やブレインマシンインターフェースの研究が進んでおり、将来的に人間の神経系とコンピュータが直結する可能性も論じられています。もし脳内に情報を直接書き込んだり読み取ったりできれば、文字通り言葉すら不要になるかもしれません。それは極端な例ですが、人間側がデジタルネイチャーに適応する一形態として、サイボーグ化や身体拡張も議論されています(落合自身も義足アスリートなどを引き合いに「人間のアップデート」について語ったことがあります)。デジタルネイチャーの次の次元は、生物学的自然と計算機自然の融合という境地に達する可能性もあります。
以上のように、デジタルネイチャーの進化は環境への浸透と人間側の変化という両面で進み、もはや「デジタルとアナログの区別が意味をなさない世界」へ近づくでしょう。それは一種の「幼年期の終わり」でもあります。Arthur C. Clarkeの『幼年期の終り(Childhood’s End)』では、人類が異星知性によってある種の進化(昇華)を遂げる様が描かれました (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary) (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary) 落合がこの記事にこの題を選んだのは、技術との融合によって人類が次なるステージへ進む暗喩でしょう。デジタルネイチャーの次段階は、おそらく人間社会がデジタルと区別なく連続体となった**「成熟期」**と言えるものになるはずです。
LLMの未来と人類社会
LLMを含むAIの未来についても考えてみます。現状のChatGPTやGPT-4はあくまで汎用的な対話・文章生成AIですが、これからの開発の方向性として以下が予想されます。
マルチモーダルと汎用知能化: 次世代のLLMはテキストだけでなく画像・音声・動画などマルチモーダルな情報を統合して理解・生成できるようになるでしょう。既にGPT-4では画像解析機能が限定提供されていますし、研究段階では画像説明や動画要約のできるモデルも登場しています。これが進めば、AIは例えば写真を見て「この人物は誰か」と質問すれば答え(顔認識)たり、監視カメラ映像を分析して異常を文章で警告したりできます。五感情報を統合することで、AIはより人間の知覚に近い形で世界を理解するようになります。これは汎用人工知能(AGI)への一歩と見る向きもあります。
モデルの軽量化とエッジ展開: 現在の最先端LLMは巨大な計算資源を要しますが、今後はより効率的なモデルや専用チップの開発で、スマートフォンや家電といったエッジデバイス上でも高機能AIが動くようになるでしょう。そうなればクラウドに頼らずプライバシーを保ったAI利用が可能になり、個人ごとにカスタムされた小型LLM(パーソナルAI)が秘書役を務める、といったことも現実味を帯びます。誰もが自分専用の「ミニGPT」を持ち日々相談に乗ってもらう未来は、ある意味、人類が一人一人マイバベルの塔を携帯するようなものかもしれません。
高信頼性・高透明性のAI: LLMの弱点である誤情報生成やブラックボックス性を克服する研究も進むでしょう。知識グラフやデータベースと連携し、回答根拠を提示できるLLM、あるいは論理的推論ができるLLMが開発されれば、AIの回答への信頼性が飛躍的に高まります。その際、出典を明示しながら回答するAI (Hahn AI) 、まさに本レポートのように引用付きで説明することになり、人間から見ても検証可能な形で情報を提供できるようになります。またAIの判断プロセスを人間が理解できるように可視化・説明するXAI(Explainable AI)も重視され、AIがなぜその答えに至ったかを対話で尋ねれば教えてくれる、といったインタラクションも期待できます。
社会実装と人間の役割変化: LLMが進化し普及すると、多くの産業・分野で仕事の在り方が変わります。単純な文章作成やデータ整理はAIが担い、人間はその結果をチェックしたり、AIに指示を与えるオペレーターや編集者的立場になるでしょう。プログラミングでもAIがコードの大部分を書き、人間は意図を伝え微調整するスタイルに変わりつつあります。同様に医療ではAIが診断候補を提示し医師が最終判断する、法律ではAIが判例検索を行い弁護士が戦略を練る、といった協働関係が当たり前になります。落合が唱えた「機械を使いこなす人間」がやはり競争力を持つ世界です (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary) 教育においても、知識暗記よりAIとの対話を通じ創造力や問題解決力を養う方向へシフトするでしょう。既に海外では学生がChatGPTをどう活用するか教える試みも始まっています。要するに、AIは人類の知的パートナーとして定着し、人間はより高次の判断・価値創造に専念できる可能性があります。
新たな課題: 他方、AIの高度化は倫理・法規制の新たな課題も生みます。ディープフェイクの巧妙化による信用失墜リスク、雇用構造の変化による失業や格差、AIの暴走やサイバー攻撃への悪用など、社会は対応策を講じ続けねばなりません。国際的にはAI規制の枠組み(例えばEUのAI法など)が議論されています。人類がこの強力な「塔」を制御し、**人間の基本的価値(尊厳・自由・プライバシーなど)**を守りながら発展させていけるかが問われています。落合は「テクノロジーへの漠然とした悲観はかえって日常を悪くする」と述べつつ (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary) (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary) 技術を受容しつつ人間側の適応力でより良い未来(プロトピア)を目指すべきだと説きました (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary) まさにそのとおりで、我々はAIを恐れすぎず、しかし慎重に利活用する舵取りが必要です。
おわりに:幼年期の終わりに向けて
2017年、落合陽一は「人類の幼年期は終わる」と宣言しました。それから8年、我々はデジタル技術と共に急速に成長し、未知の課題にも直面してきました。スマートフォンがもたらした第二の空間での生活は当たり前となり、AIが魔法のように高度化して言語の壁を壊し始めています。バベルの塔はゆっくりとではありますが再建されつつあり、人類は再び一つの共同体として知恵を結集できるチャンスを手にしました (Hahn AI) 一方で、情報の洪水と分断、テクノロジーへの畏れという試練も続いています。
落合が示したデジタルネイチャーの世界観は、その後の現実で確かな輪郭を帯びました。それは、人間・自然・機械が渾然一体となる新たな地平です。我々の前には危うさと希望が入り混じった未来が広がっています。塔を高く積み上げるほど、基盤が脆ければ崩れ去ることも歴史が教えるところです。だからこそ技術と社会の両面から基盤を強固にし、全ての人が参加できる形で塔を築かなければなりません。LLMという知の巨塔を、人類全体の英知とするために、安全性・公平性・透明性を確保しつつ活用していくことが求められます (Hahn AI)
「幼年期の終わり」とは成熟の始まりでもあります。デジタルネイチャーの次の段階で人類はかつてない力を手にするでしょう。その時、自らの幼さ(無分別さや傲慢さ)を乗り越え、テクノロジーと調和した成熟した文明を築けるかが問われます。落合陽一の提言した未来像は、今なお進行中のプロジェクトです。彼の言う通り**「明るいディストピア(悲観に基づく未来像)は来ない」かもしれません (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary) 代わりに我々の手で形作るプロトピア(漸進的改善の未来)**こそが現実となるよう、一人ひとりがデジタルネイチャーの一員として責任ある適応と創造を続けていくことが重要です。
References:
【35】落合陽一「2017年へ:『幼年期は終わる。今こそバベルの塔を建てよう』(前編)」記事内容の紹介(note.com) (2017年の遺言,2023年の答え合わせ|落合陽一) (2017年の遺言,2023年の答え合わせ|落合陽一)
【36】同記事で提唱された概念の定義(ポスト真実・貧者のVR・魔法の世紀・デジタルネイチャー) (2017年の遺言,2023年の答え合わせ|落合陽一)
【16】落合陽一「Towards 2017: 'Childhood’s End.'... (Part 1)」英訳(takorine-and.hatenablog.com) (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary) (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary)
【21】同上 Part 1 (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary) (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary)
【19】同上 Part 1 (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary)
【22】同上 Part 1 (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary) (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary)
【27】落合陽一「Towards 2017... (Part 2)」英訳(takorine-and.hatenablog.com) (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary) (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary)
【28】同上 Part 2 (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary) (Towards 2017: "Childhood's End." Now is the time to build the Tower of Babel" (Part 1) - Takorine_and’s diary)
【31】Hahn AI Blog「Tower of Babel: LLM Technology...」(hahn.ai) (Hahn AI) (Hahn AI) (Hahn AI)
【40】MIT News「Study: False news spreads faster than the truth on Twitter」(2018年) (Study: On Twitter, false news travels faster than true stories | MIT News | Massachusetts Institute of Technology) (Study: On Twitter, false news travels faster than true stories | MIT News | Massachusetts Institute of Technology) (Study: On Twitter, false news travels faster than true stories | MIT News | Massachusetts Institute of Technology)
【34】ガーディアン紙「“Post-truth” named word of the year 2016」(2016年) ('Post-truth' named word of the year by Oxford Dictionaries)
【38】ガーディアン紙「World’s first AI news anchor unveiled in China」(2018年) (World's first AI news anchor unveiled in China - The Guardian) (How China is using AI news anchors to deliver its propaganda)
【37】Virtual YouTuber Wiki「Kizuna AI」(活動開始とVTuberのパイオニア) (Kizuna AI | Virtual YouTuber Wiki - Fandom)
【32】Statista「AR & VR Adoption Is Still in Its Infancy」(2023年) (Chart: AR & VR Adoption Is Still in Its Infancy | Statista) 32†L15-L18】
手動+AIの答え合わせ(2023編をおまけでつけておく)
2017年の遺言,2023年の答え合わせ
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落合陽一の見ている風景と考えていること
落合陽一が日々見る景色と気になったトピックを写真付きの散文調で書きます.落合陽一が見てる景色や考えてることがわかるエッセイ系写真集(平均で…
いつも応援してくださる皆様に落合陽一は支えられています.本当にありがとうございます.