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日本科学未来館,計算機と自然,計算機の自然5周年!
なんともうオープンして5年! 光陰矢の如しである.関わった皆様に感謝を.
タイトル: 「計算機と自然、計算機の自然」展
はじめに
「計算機と自然、計算機の自然」は、日本科学未来館で2019年に開設された常設展示であり、2024年現在も開催中です。メディアアーティストの落合陽一氏が総合監修を務め、計算機(コンピュータ)と自然の関係性を多角的に探求しています。本展示は、計算機科学、人工知能、デジタル技術、芸術、日本の伝統文化など、多岐にわたる分野を融合させ、来館者に新しい視点や問いかけを提供しています。
展示の全体構成
展示は主に以下のテーマやセクションに分かれており、それぞれが独自のインスタレーションや作品を通じてテーマを表現しています。
はじめに光あり
運がいい日も悪い日もある
世界は波で出来ている
「はい、おてつき!」
ぴったりは何パーセント?
while(1) 白と黒を分ける直線を求めなさい;
不揃いな枝で家が建つか?
ドレミの形
塵の中にも計算は宿る
デジタルにオーラは宿るか?
風鈴はなくとも、風鈴は鳴る
データは重力に縛られない
だるまは問い続ける
DNA折り紙
「ピューイ、ジジジ、、、こちらイルカです。オーバー?」
神経は計算機?
目はカメラ?カメラは目?
昔も今も色は一緒?
ここは計算機の中と外、どっち?
バーチャルってなんだろう?
計算機と自然
計算機の自然
解像度の心得
「経験」と「法則」を繰り返す人類の物語
浮世絵シリーズ
以下、各セクションについて詳細に解説します。
1. はじめに光あり
概要: 人間の視覚と光の関係、そして空間認識について探求するセクションです。
展示内容:
宙に浮かぶ黒いオブジェ: 書家の紫舟氏が書いた「○△□」を立体的なオブジェとして展示しています。これは江戸時代の禅僧・仙厓義梵が描いた抽象的な絵に着想を得たものです。
意図:
私たちは物体そのものではなく、反射した光を見ています。そのわずかな情報から脳がどのように空間を認識しているのかを考えさせます。
関連キーワード: 光、視覚、空間認識、コンピュータグラフィックス、抽象芸術
2. 運がいい日も悪い日もある
概要: データ構造の「木(ツリー)」と統計的手法の「決定木」を紹介します。
展示内容:
おみくじを題材にした決定木: 質問を繰り返し、運勢を分類するプロセスを視覚化しています。
意図:
データの分類や予測における決定木の役割を理解し、人間の意思決定と計算機のアルゴリズムの類似性を示します。
関連キーワード: 決定木、データ分類、平均情報量、統計、データマイニング
3. 世界は波で出来ている
概要: 画像処理の基礎である「2次元フーリエ変換」を体験的に紹介します。
展示内容:
画像の波分解: 画像をさまざまな周波数の波として分解し、再構成するプロセスを視覚化しています。
意図:
画像のデータ圧縮や解析におけるフーリエ変換の重要性を理解します。
関連キーワード: フーリエ変換、波、画像処理、周波数解析
4. 「はい、おてつき!」
概要: 視覚や触覚における錯覚を体験します。
展示内容:
高精細印刷による偽の畳や百人一首: 一見本物のように見えるが、実際には印刷物であることを触って確認できます。
意図:
人間の認知における視覚情報の影響を考えます。
関連キーワード: デジタルコピー、スキャニング、知覚心理、テクスチャ
5. ぴったりは何パーセント?
概要: 確率分布と統計の基本概念を紹介します。
展示内容:
人が「5秒」を数える実験データ: 集めたデータが正規分布に近づくことを示しています。
意図:
自然界や人間の行動が統計的な分布に従うことを理解します。
関連キーワード: 確率分布、正規分布、統計、データ分析
6. while(1) 白と黒を分ける直線を求めなさい;
概要: 機械学習の分類手法である「サポートベクトルマシン(SVM)」を紹介します。
展示内容:
データの線形分離: 白と黒のデータ点を直線で分ける問題を視覚的に示しています。
意図:
データ分類の基本的な考え方と、非線形データの扱い方を理解します。
関連キーワード: 機械学習、分類器、カーネル法、プログラミング
7. 不揃いな枝で家が建つか?
概要: 計算機を用いた最適化とデジタルファブリケーションの可能性を探ります。
展示内容:
不揃いな枝を組み合わせた構造物: 枝の形状を計測し、計算機で最適な組み合わせを計算して組み上げた構造物です。
意図:
自然物のばらつきを活かした新しいものづくりの可能性を示します。
関連キーワード: 最適化、CNC加工、自然物、デジタルファブリケーション
8. ドレミの形
概要: 計算機を用いて楽器の形状を設計します。
展示内容:
周波数を形にした鉄琴: 音板の形状を計算機でシミュレーションし、特定の音階を奏でる鉄琴です。
意図:
計算機によるシミュレーションがデザインの自由度を高めることを示します。
関連キーワード: 周波数、固有値解析、楽器設計、インタラクティブデザイン
9. 塵の中にも計算は宿る
概要: 電子部品の微小さとその大量生産について紹介します。
展示内容:
積層セラミックコンデンサの砂時計: スマートフォンに多数使われる微小な電子部品が砂のように入っています。
意図:
電子機器における膨大な数の微小部品の存在と、それらが計算機を構成していることを示します。
関連キーワード: 電子部品、ナノテクノロジー、計算機の物理的構成
10. デジタルにオーラは宿るか?
概要: 伝統工芸とデジタル技術の融合を探ります。
展示内容:
樂茶碗のデジタル再現: 楽焼の茶碗をCTスキャンし、3Dプリンターで再現したものを展示しています。
意図:
デジタル技術によって伝統工芸の形状や質感を再現できるか、オリジナルとコピーの価値について考えます。
関連キーワード: 伝統工芸、3Dスキャニング、デジタルファブリケーション、オーラ(芸術作品の独自性)
11. 風鈴はなくとも、風鈴は鳴る
概要: 超音波技術を用いた新しい表現を紹介します。
展示内容:
超音波による音響装置: 指向性スピーカーで特定の位置でのみ音が聞こえる装置や、超音波で短冊を揺らす風鈴を展示しています。
意図:
音や振動を精密に制御する技術が新しい体験を生み出すことを示します。
関連キーワード: 超音波、音響制御、触覚ディスプレイ、風情
12. データは重力に縛られない
概要: デジタルデータの非物質性とその可能性を探ります。
展示内容:
重力の影響を受けないデータの特性を視覚化: データが物理的な制約から解放されていることを示す展示です。
意図:
データの持つ無限の可能性と、それが物理的な制約を超えることを考えます。
関連キーワード: データ、質量、重力、デジタル化
13. だるまは問い続ける
概要: 禅の思想と機械学習の「エンドツーエンド」モデルの共通点を探ります。
展示内容:
達磨の像と計算機: 言葉や論理を超えた悟りと、ブラックボックス的な機械学習モデルを関連付けています。
意図:
人間の理解を超えた計算機の処理と、禅の教えの共通点を考えます。
関連キーワード: 禅、不立文字、機械学習、エンドツーエンド学習
14. DNA折り紙
概要: ナノテクノロジーとデジタル情報の関係を紹介します。
展示内容:
DNAオリガミ: DNAの鎖を折りたたんでナノスケールの構造を作り出す技術を紹介しています。
意図:
生物の情報記録媒体としてのDNAと、デジタル情報の類似性、そしてナノテクノロジーの可能性を示します。
関連キーワード: DNA、ナノテクノロジー、情報記録、パンチカード
15. 「ピューイ、ジジジ、、、こちらイルカです。オーバー?」
概要: 動物のコミュニケーションと計算機の情報処理を比較します。
展示内容:
イルカのエコーロケーション: イルカが超音波を使って情報をやり取りする仕組みを紹介しています。
意図:
自然界の高度な情報処理と計算機科学の共通点を探ります。
関連キーワード: イルカ、超音波、コミュニケーション、エコーロケーション
16. 神経は計算機?
概要: 生物の神経系と人工ニューラルネットワークの関係を紹介します。
展示内容:
マウスの脳の3D画像: 脳を透明化し、神経細胞を染色した画像を展示しています。
意図:
生物の神経網と人工のニューラルネットワークの類似性とその限界を考えます。
関連キーワード: 神経科学、ニューラルネットワーク、脳の透明化、深層学習
17. 目はカメラ?カメラは目?
概要: 人間の視覚とデジタルカメラの構造を比較します。
展示内容:
目とカメラの構造の対比: 網膜や視神経とカメラのセンサーや回路を比較しています。
意図:
生物の感覚器官と計算機のデバイスの共通点を理解します。
関連キーワード: 視覚、カメラ、網膜、光学処理、デジタル化
18. 昔も今も色は一緒?
概要: 人工知能による画像の自動色付け技術を紹介します。
展示内容:
白黒写真の自動カラー化: AIが白黒写真に自動で色を付けた画像を展示しています。
意図:
AIが過去の記録を新たな形で再現し、人間の想像力を拡張する可能性を示します。
関連キーワード: 画像処理、機械学習、カラー化、畳み込みニューラルネットワーク
19. ここは計算機の中と外、どっち?
概要: 仮想空間と現実世界の境界を探ります。
展示内容:
熱帯魚の映像と実物の比較: 高解像度ディスプレイに映る熱帯魚と実際の水槽を並べて展示しています。
意図:
デジタル映像が現実と区別がつかなくなる未来を考え、現実とは何かを問いかけます。
関連キーワード: 仮想現実、ディスプレイ技術、解像度、リアリティ
20. バーチャルってなんだろう?
概要: VRやARなどの仮想現実技術を紹介します。
展示内容:
ボルマトリクスミラーを用いた展示: 鏡の反射を利用して、物体が宙に浮いて見える装置を展示しています。
意図:
仮想と現実の境界が曖昧になる体験を通じて、バーチャルとは何かを考えます。
関連キーワード: 仮想現実、拡張現実、立体視、鏡
21. 計算機と自然
概要: 計算機が自然の一部となる可能性を探ります。
展示内容:
生け花と蝶のインスタレーション: 本物の蝶の標本と、構造色印刷による人工の蝶を生け花の中に配置しています。
リサイクル素材の展示: リサイクル工程で生まれる中間素材を硝子花器に封入しています。
意図:
自然と人工物の融合や、持続可能性、循環型社会を考えます。
関連キーワード: 持続可能性、構造色、資源循環、人工自然
22. 計算機の自然
概要: 人工知能が生成する新たな「自然」を紹介します。
展示内容:
GANによる画像生成: 敵対的生成ネットワークを用いて生成された画像や映像を展示しています。
意図:
計算機が独自に生み出す世界や美しさを考え、人間の創造性との比較を促します。
関連キーワード: 人工知能、画像生成、ディープラーニング、創造性
23. 解像度の心得
概要: デジタル映像の「空間解像度」と「時間解像度」の概念を紹介します。
展示内容:
ニプコー円盤による機械式テレビ: 初期のテレビ技術を展示し、解像度の物理的制約を示しています。
異なる解像度のディスプレイ: データ量と解像度の関係を視覚的に示しています。
意図:
情報を記録・再生する技術の進化と、デジタル技術の優位性を理解します。
関連キーワード: 解像度、アナログ、デジタル、データ量
24. 「経験」と「法則」を繰り返す人類の物語
概要: 人類の技術発展を「経験」と「法則」の観点から見直します。
展示内容:
5つのトピックの展示:
画像: 写実的な絵画からバーチャルリアリティまでの進化。
音楽: 生演奏から録音、計算機による音楽生成までの変遷。
計算: 人力計算から機械学習、汎用人工知能への発展。
移動: 人力移動から自動車、完全自動運転への進化。
通信: 手紙からインターネット、計算機同士の通信への移行。
意図:
経験(データ)と法則(モデル)の循環が技術発展にどのように寄与しているかを考えます。
関連キーワード: 技術史、情報社会、人工知能、Society 5.0
25. 浮世絵シリーズ
概要: 歴史上の人物や文化を題材に、技術革新との関連性を探ります。
展示内容:
「語る壁画 飛鳥美人」: 高松塚古墳の壁画を題材に、デジタル復元技術を紹介。
「語る武将 武田信玄」: 武田信玄の狼煙ネットワークと現代のインターネットを比較。
「語る名馬」: 馬の役割の変遷と自動運転技術を関連付け。
「語る歌手 初音ミク」: バーチャル・シンガー初音ミクを通じて、音楽の未来を考える。
「語る歌人 紀貫之」: 和歌の表現とAIによる文章生成を関連付け。
意図:
過去の文化や技術と現代・未来の技術を対比し、人間社会の変遷を考えます。
関連キーワード: 歴史、技術革新、文化、人工知能
まとめ
「計算機と自然、計算機の自然」展は、計算機技術がもたらす未来像を多角的に探求し、人間の認知、社会、文化、自然観に対する影響を提示しています。各セクションは、計算機科学の専門的な概念を視覚的かつ体験的に紹介しており、来館者は直接触れたり、感じたりすることで理解を深めることができます。
この展示は、計算機が単なる道具ではなく、私たちの生活や世界観を変革する存在であることを示しています。また、伝統文化や自然との融合を通じて、技術と人間、人工と自然の新たな関係性を提案しています。
補足情報
総合監修・アートディレクション: 落合陽一(メディアアーティスト、筑波大学)
展示場所: 日本科学未来館 3階「未来をつくる」エリア
開館時間: 10:00~17:00(最終入館時間 16:30)
休館日: 火曜日(祝日の場合は開館)
入館料: 大人 630円、18歳以下 210円、6歳以下 無料
おわりに
この展示は、計算機と人間、自然との関係を再考させるきっかけを提供します。技術の進歩がもたらす可能性や課題について、幅広い視点から考える機会となるでしょう。計算機が新たな「自然」として機能する未来において、私たちはどのように世界を捉え、生きていくのか。その問いかけに対する答えを探す場として、この展示は大きな意義を持っています。
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落合陽一の見ている風景と考えていること
落合陽一が日々見る景色と気になったトピックを写真付きの散文調で書きます.落合陽一が見てる景色や考えてることがわかるエッセイ系写真集(平均で…
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