見出し画像

【オリジナル詩】雨、誰

車のヘッドライトが呼んでいる
最後にスポットライトを浴びようよ
降り続ける雨粒のスパンコールが緞帳の合間から漏れる拍手みたいに騒々しい
桜の花弁が呼んでいる
最期に一緒に踊りましょうよ!
ユラユラ揺れながら雨に打たれる花は、月夜に青白く照らされて死人と同じ顔色をしている

換気扇の音が命綱の夜がある
死の匂いが充満する春に沈澱する私
暗闇から浮かび上がるには雨音が滑る扇の音だけが頼り

水溜めの底から見上げる花達にひどく責め立てられている
泥に塗れた屍色は、匿名の言葉に照らされる私と同じ色
油にまみれた扇の音だけが頼り
誰でもない誰かの鼓動だけが頼り

車のヘッドライトの中を桜が舞っている
雨に撃たれて、車に踏まれて散々ね
まだ生きているフリを続けているの?
死人の顔がユラユラ揺れる
スパンコールと拍手の音は暗幕の向こうへ仕舞っておこう
またスポットライトを浴びるのは
まだ
怖いから

透明な夜の欠片はまだ見たくないから

換気扇の音が命綱の夜がある
甘い匂いの底で澱んでいるのは、
私。

いいなと思ったら応援しよう!

華染凪人
最後までお読み頂きありがとうございます! 楽しんでいただけたのなら幸いです。 よい1日を🍀