元芸人と元AV助監督の交換日記#13「ネガティブ人(ネガティブんちゅ)」(いのり)

「遅くなり人」(遅くなりんちゅ)。この一文と共に知らない沖縄在住の人からメールが送られてきた。僕には沖縄出身の友達など1人もいないはずだ。メールにはwordのファイルが添付されていた。
ファイルには僕に「彼女ができたこと」について、ゴルフ例えを交えた文章が連なっていた。どうやら、メールの送り主は沖縄在住のゴルフ雑誌に連載を持つ人のようだ。

彼女のことについて書こうとしたが、書くほどのことはまだあまりない。出会ってからまだ数ヶ月しか経っていないし、何よりお互い必要な時くらいしか連絡していない。ひょっとすると僕が遊ばれているように見えるかも知れない。だけど、元々彼女はそういう人だしちゃんと好きでいてくれているみたいだ。
だらだらと書いていると、惚気話になってしまいそうだ。それに今日書きたかったことはこのことではない。(沖縄在住のゴルフライターの方、ごめんね。)

僕は今テレビリサーチャーとして働いている。不思議なことに、今の会社には1年そこらしかいないのに中間管理職になっている。そうなると当然、部下が何人かいることになる。ここ最近は多忙なことに重ねて、その部下のことで毎日頭を悩ませている。
これまで、忠実な部下として休日もなく仕事をこなしてきた。ところが今となっては部下のお陰で休日どころか、家での時間も仕事に奪われている。おっと、愚痴を言いすぎた。

僕は人生の大半を「後輩」として過ごしてきた。(大半と言っても先輩と過ごしている時間のことしか示していないけれど。)もし、この世に「後輩」と言う仕事があれば転職だったと思う。

「後輩」と言う存在はつくづく不思議なものだ。会社の「部下」であれば完璧を求められかも知れない。だけど、「後輩」にはそんなことは求めない。ミスをすればそれはそれで可愛いと思うし、気が利いて入ればそれもそれで可愛いと思ってしまう。いつになっても「完全」でなくて良い存在だ。僕はそんな「後輩」と言う環境にずっといた。(もちろん僕自身は完璧を目指していたけれど)

長く「後輩」をやっていると、社会になってから多くのストレスを抱えてしまうみたいだ。教えたはずのことができない。電話を取ってくれない。挙げ句の果てには偉そうな態度を取る。僕はそんな光景を会社で見るたびに貧乏揺すりとタバコを吸う時間とお酒の量が日に日に増えている。さらにはパニック障害が悪化してしまうほどだ。受け入れらたらいいなとは思う。だけど、仕事である以上は「結果」を求められるし、いつ何時であっても「締め切り」を守らないといけない。そう思うと余計にしんどいと思ってしまう。

上司としては失格だ。何せ育成能力が無いと言っているに等しい。仕事を教えることも大事な「仕事」だ。それは理解しているつもりだ。

昔、こんなことを話した。先輩が芸人を辞めて「カタギ」の仕事に就いた時のことだ。「まあ、何年か仕事してみんなで独立したら一緒に会社でもしよう。」
この言葉を聞いた時僕はひどく興奮した。自分の好きな先輩たちと一緒に働くことができるなんて夢のように感じたからだ。
今、僕は社会に出て3年ほどが経った。今になってみれば一緒に働かなくて良かったと思う。よく言う「ビジネスと友人関係は成り立たない」と言うこともあると思う。だけど一番不安なのは、僕がしっかりと機能しないのでは無いかと言うことだ。恐らく、先輩と入れば「部下」ではなく「後輩」の自分でしかいなかったと思う。そうすれば絶対にビジネスは上手く回らなかったはずだ。

僕は先輩の「後輩」であることにアイデンティティを持って生きてきた。それが社会人になって揺らいでいる。別にここまで悩む必要は無いことかも知れない。だけど、社会人として生きる自分と先輩の「後輩」である自分。どちらが本当なのかわからなくなる。自分は極端な人間だ。社会人としての自分を選べば、後輩としての自分を全て捨てないといけないという気持ちになってしまう。僕にとってそれはこれまでの過去と関係を失ってしまうことに等しい。

なんだかとても女々しい内容になってしまった。結局のところ、僕が一番社会に適応できていないようだ。とても恥ずかしい。

P.S. すみません、また非常にネガティブなことを書いてしまいました。それとまた近いうちに転職する予定です。多分ナイトレジャーの広告代理店の営業です。やっぱりAVとかそっちの業界の方が生きやすいみたいです。今の仕事で気をつけていることを聞きたいです。


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