交換日記「ゆとり世代の元芸人とさとり世代の元AV助監督」

<書いてる人> A(26)・IT営業職 在学中より芸人として大手芸能事務所に所属し活動。後にIT系企業に就職。現在に至る。 いのり(24)・TV番組リサーチャー 「A」の2年後輩。卒業後大手AV制作会社に就職。AV助監督を経験後、TV番組制作会社を転々とし現職に至る。

交換日記「ゆとり世代の元芸人とさとり世代の元AV助監督」

<書いてる人> A(26)・IT営業職 在学中より芸人として大手芸能事務所に所属し活動。後にIT系企業に就職。現在に至る。 いのり(24)・TV番組リサーチャー 「A」の2年後輩。卒業後大手AV制作会社に就職。AV助監督を経験後、TV番組制作会社を転々とし現職に至る。

最近の記事

元芸人と元AV助監督の交換日記#15「コロナウォッチャーもう疲れた」(いのり)

「(~前略~)俺はもう終わりにしたいんだ。もう疲れた。雨の中を一羽だけで飛ぶツバメのように生きるのに疲れたんだ。一緒にいてくれる仲間もいない。どこから来てどこへ行くのかも、その理由も、教えてくれる者はいない。なによりも、互いに醜いことをし合う人間にも疲れた。毎日、世界中で起こっている苦しみを感じたり聞いたりするのにも疲れた。もう耐えられない。つねに、頭にガラスの破片が刺さっているようだ。分かってもらえるか?」 映画「グリーン・マイル」の登場人物ジョンが処刑される前に言ったセ

    • 元芸人と元AV助監督の交換日記#14「遊びのゲシュタルト崩壊」(A先輩)

       僕が覚えている中で一番古い記憶は、2歳下の妹が生まれるときだ。薄暗い病院で一言もしゃべらずじっとソファに座っていたことを覚えている。さらには、その姿を見て両親が「なんてしっかりしているんだ。素晴らしい兄だ。」と僕のことを褒めちぎったことまで覚えている。その時からこんなにも褒められるのであれば、「両親が思う」いい子でいようと幼心に決めたのだ。あくまでも「両親が思う」いい子ということで、おねだりをしない、喧嘩をしない、休日は両親と積極的に出かけるといった程度のものである。  

      • 元芸人と元AV助監督の交換日記#13「ネガティブ人(ネガティブんちゅ)」(いのり)

        「遅くなり人」(遅くなりんちゅ)。この一文と共に知らない沖縄在住の人からメールが送られてきた。僕には沖縄出身の友達など1人もいないはずだ。メールにはwordのファイルが添付されていた。 ファイルには僕に「彼女ができたこと」について、ゴルフ例えを交えた文章が連なっていた。どうやら、メールの送り主は沖縄在住のゴルフ雑誌に連載を持つ人のようだ。 彼女のことについて書こうとしたが、書くほどのことはまだあまりない。出会ってからまだ数ヶ月しか経っていないし、何よりお互い必要な時くらいし

        • 元芸人と元AV助監督の交換日記#12 (A先輩)

           Postscript。P.Sの正式な英単語だ。手紙などにおいて手書きが主流だった当時、書き損じた事柄を挿入するためには、一から書き直す必要があった。その手間を省く為、追伸としてP.Sを使っていた。 祈からのP.Sで彼女ができたことがさらりと書かれていたが、それは書き損じることではないだろう。寧ろ僕ら(いや、僕限定かもしれないが)にとって最大のトピックスではないのか。何はともあれ、おめでとう。 本来は後輩に彼女が出来たことに絡めて何かを書くべきだが、あいにく今は来週に迫った

          元芸人と元AV助監督の交換日記#11 「アンチファッションADHD」

          10回。簡単そうに見えてわりと難しい回数だ。例えば全くの運動不足の人がダイエットの為に腕立てを始めたとする。本当に慣れていないと10回「腕立て」をこなすのはしんどい。だから、最初の目標を10回に置く人がほとんどだと思う。10回に慣れると20回、30回と案外回数を増やすのは楽になってくる。 何が言いたいかというと、思いのほか簡単に最初の「関門」はクリアできたなということ。 先輩から僕の「意思疎通能力」について言及があった。これに関しては、僕自身もまいってはいる。僕は脊髄と口が

          元芸人と元AV助監督の交換日記#11 「アンチファッションADHD」

          元芸人と元AV助監督の交換日記#10

           今回でこの交換日記も10回を迎える。普段慣れない文章でのやりとりということもあるのか、体感的には30回くらい続いているように思えてならない。ただ、後輩との5往復のやりとりの中で幾つか気づいたことがある。  一つ目は、僕にとっての悩みでもあった祈との意思疎通が文章だと割とスムーズに行えるということだ。意思疎通まで言ってしまうと大げさになってしまうが、祈はとにかく会話ができない。会話に落ち着きがないのだ(別に悪口の意図があるわけではないことは明言しておく)。言いたいことや思い

          元芸人と元AV助監督の交換日記#9「すごくエモい思い出」

          先輩には申し訳ないことをした。あまりにも薄すぎる内容の文章を書いてしまった。日記としては成立しているかも知れない。ただ、コンテンツとしては0点だ。 先輩からの「交換日記」のWordファイルを開いた。僕は驚いた。「ロッキーの撮影じゃないのよ」といわんばかりの文字の行列が連なっていたからだ。 そこには、僕が気づかないうちに「負の感情」ばかりを振り撒いている旨が書かれていた。その時初めて気づいたかも知れない。自分が「ネガティブ」であったことに。そこで、初心に戻ることにした。 も

          元芸人と元AV助監督の交換日記#9「すごくエモい思い出」

          元芸人と元AV助監督の交換日記#8

           祈から日記を80倍くらいに希釈したものが送られてきた。日記の内容こそ無に等しいものの、仕事を頑張る後輩にお互いに歳を取ったのだなと実感する。そんな中、相も変わらず送られてくる質問を読み、ある疑問が頭をよぎった。因みに今回の質問は「仕事をして初めて落ち込んだことは?」というものである。そう、この男は辛かったことや、落ち込んだことなどマイナスな感情についてやたら聞いてくるのだ。祈の目からは、そんなにも自分は辛気臭い人間に見えているのだろうか。確かに飲みの席の会話と言えば、身のな

          元芸人と元AV助監督の交換日記#7「文章イップス~やっと日記らしい内容~」(いのり)

          全く筆が進まない。あれ、なんか変だ。だって筆なんか持っていないもの。正しくはなんていえばいいのだろう。「キーボードが進まない。」いや、これは明らかに違う気がする。「キーボード」に「進む」要素なんて一つもない。じゃあ、「キーボードが打てない」か。なんかこれだと「文章感」がない。「文章感」というか、「文系」の雰囲気が一切取り除かれるというか。「キーボードを叩く音が一向に聞こえそうにない。」それか「広がったままの掌がキーボードの上に置かれている。」これでどうだろう。2050年のプレ

          元芸人と元AV助監督の交換日記#7「文章イップス~やっと日記らしい内容~」(いのり)

          元芸人と元AV助監督の交換日記#6 (A先輩)

          ここ最近、この交換日記とは名ばかりの青春回想録の為に、3、4年ほど前を思い出す必要があるのだが、これがなかなか難しい。寧ろ中学生の頃の思い出のほうがスラスラ思い出せるまである。「芸人やってました」などと言えばエピソードトークの宝庫のように思うか方もいると思うが、うだつの上がらない芸人だった僕からすれば虚無の期間である。祈から「芸人人生で忘れられなかったことは」と質問があるが、僕からすれば「芸人人生は忘れられたこと」なのである。空白の4世紀ならぬ空白の3年だ。  とは言え、辛

          元芸人と元AV助監督の交換日記「僕がAV業界に入ったきっかけ〜とあるAV監督との出会い〜」#5(いのり)

          もう5回目の日記となった。ところが、未だに日記の体を成していないことに先輩に言われて気づいた。もはや日記ではなく手紙だ。 初めは続けられるだろうかと不安だった。しかし始めてみると思いのほか楽しく、全く苦にならない。今のところ。なるほど、受刑者たちが、文通を頻繁にする気持ちがわかった気がする。 先輩が言ったように、僕らは普段「真面目な会話」を一切しない。どんな面倒事を抱えていても、会ってしまえばずっとふざけている。「いる」というよりは「しまう」方が正しい。もはや病気だ。 文章

          元芸人と元AV助監督の交換日記「僕がAV業界に入ったきっかけ〜とあるAV監督との出会い〜」#5(いのり)

          元芸人と元AV助監督の交換日記 #4 (A先輩)

          約5年。僕と祈が出会ってから今日に至るまでの年数である。お互いを取り巻く環境は、インディーズの音楽シーンが如く変化していったが、唯一変わらないことがある。それは、「お笑いについて真剣に語らない」である。何故か。それは、僕が何事にも真剣に話をすることを苦手としているからである。  この「交換日記」の体をなした文章のやりとりの目的にお笑いが回帰されているのであれば、祈のお笑いに対する知られざる思いに少しでも感化されたのであれば、僕は改めてお笑いに向き合わなければならない。また、頭

          元芸人と元AV助監督の交換日記#3 「ちょっと真面目な話」(いのり)

          もう3回目の日記だ。長い間お世話になっている先輩と「文章」で会話するというのはなんだか不思議な気分だ。人並みの表現だけれどこうとしか言い用がない。 先輩から早速、「交換日記」の目的を聞かれてしまった。困った。何せ「目的」なんてないからだ。だけれどお互いに思っていたことがある。 交換日記を始めるきっかけは、「何かしたいよなあ」ということだった。別にこれまで何もしてこなかった訳ではない。「YouTubeをしようか、ラジオでもやってみようか。」こんな話を頻繁にしていた。実際に企画

          元芸人と元AV助監督の交換日記#3 「ちょっと真面目な話」(いのり)

          元芸人と元AV助監督の交換日記#2 (A先輩)

           お酒というのは些か恐ろしいものである。晩年、お酒に溺れる赤塚不二夫のことをタモリは(あくまでも赤塚を天才としつつ)「天才の並の下かも知れない。もはや天才とはいいがたい」と表現している。とは言ったものの、今回はそこまで大きい話ではなく、お酒を飲んで後輩に電話を掛けた翌日に交換日記が送られてきただけの話。お酒のせいで24歳の男性と交換日記をすることになった‘だけ‘の話である。 祈の日記を倣うと自己紹介をしなければならないのだろうが、僕は自己紹介というものが嫌いである。そもそも

          元芸人と元AV助監督の交換日記 #1 (いのり)

          何か物事を始める時は「自己紹介」から始まる。これは相場で決まっている。「Bond. James Bond.」僕らの大好きなジェームズ・ボンドも女性と体を重ねる時でさえ自己紹介をしていた。だからこれは紳士の決まり事なんだと思っている。 「祈。白井祈だ。」ボンドに倣って名乗ってみた。全然しっくりこない。日本語だからなのか、僕の名前がダサイからなのか。ちなみに言うと僕の出身地もダサイ。味噌村こと愛知県のとある住宅街で生まれ育った。どれくらいダサイかと言うと同じ街の中に超至近距離で

          元芸人と元AV助監督の交換日記 #1 (いのり)