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#650:アガサ・クリスティー著『パディントン発4時50分』

 アガサ・クリスティー著『パディントン発4時50分』(ハヤカワ・ミステリ文庫, 1976年)を読んだ。原著刊行年は1957年。原題は、4.50 from Paddington。現在は、同じ早川書房のクリスティー文庫から新訳版が出ているようだが、本書は旧訳版の方。

 本書も確か高校生の頃以来の再読になる。幸いなことに、印象的な冒頭のシーン以外は、綺麗さっぱりと内容を忘れていた・・・と思ったら、結末近くで、ミス・マープルが再登場したあたりになって、どのようにして犯人の名が告げられるのかと、その犯人が誰であるかを、突然思い出した(笑)

 ミス・マープルが、自身に代わって調査を依頼することになる、“スーパー家政婦”とでも呼ぶべきヒロインのキャラクター造形は印象的だが、その他の点では、先ほども触れた、冒頭と結末部の印象的なシーンを除くと、著者の作品としては、やや密度が薄くなっているように感じられる面がある作品だと、私には思われた。

 著者の作品の中で、上位に位置するとは思わないが、比較的軽めのサスペンス小説として読む分には、そこそこに楽しめる作品だと思う。