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#647:日本エッセイスト・クラブ編『父と母の昔話 '96年版ベスト・エッセイ集』

 日本エッセイスト・クラブ編『父と母の昔話 '96年版ベスト・エッセイ集』(文春文庫, 1999年)を読んだ。文藝春秋から1996年に刊行された単行本を文庫化したものとのこと。本書に収録されている文章は、いずれも初出誌紙が1995年に刊行されたものとのことである。

 本書には65篇のエッセイが収録されているとのことだが、私の印象に残ったものを収録順に挙げれば、杉浦昭義「“世界一”の叔母」、古田紹欽「山、人を見る」、坂村瞳「バースデイ・スーツ」、早坂暁「時計は溶けて」、田辺聖子「ひやしもち」、うつみ宮土理「見事な人生」、伊藤桂一「戦記作家の五十年目」、川本三郎「今ふたたび戦後日本映画を見る」、村松英子「兄との終戦の夏」、今井美沙子「大震災にまつわる「夢の知らせ虫の知らせ」」、丹羽友子「北大路魯山人」、高坂正堯「十分足らずの通訳」、加賀乙彦「小便するな」、森繁久彌「父と母の昔話」といったところ。

 1995年は、阪神・淡路大震災の年であり、戦後70年目の節目の年でもあったことから、それらに関連するエッセイが多いのが、本巻の特徴と言えようか。上に列記した中では、坂村氏によるエッセイは異色で、独特のセンスのユーモアを大いに楽しませてもらった。

 本シリーズは、手に入る限りのものを、今後もぽつぽつと読んでいきたいと思う。