三体の第3部(死神永生)を読んだ感想
はじめに
こんにちは、おちうおです。
三体の第3部を読んだので感想を書きます。
巻数でいうと、4巻と5巻です。
ネタバレを気にせず書いていくので、ご注意ください。
第3部の購入を少しためらってしまった
第2部の読後、あまりにもきれいに終わったので、第3部を購入することに躊躇いが出てしまいました。
これ以上、この世界で紡がれる物語があるのだろうか(いや、ない)みたいな気持ちになり、どうしても続きを読みたいと思えませんでした。
一方で、「三体を読んでない奴はモグリ」だと、知人が申しておりましたので、ここで辞めるとやはりモグリになってしまう、という思いもありました。
購入する踏ん切りをつけるため、ネタバレのない(とうたっている)第3部の感想をいくつか読んだりもしました。
そうしてようやく、購入にいたったわけです。
つまり、それほど期待値が高かったわけではありませんでした。
第3部全体に対する感想
読書前の期待値のとおり、やはり、第1部や第2部ほど「おもしろい!」とはなれませんでした。主人公の程心のキャラクターを、いまいち好きになれなかったのが大きいのかもしれません。
(そもそも、程心は主人公だったのか?という疑問もありますが)
彼女は、前部や前々部の主人公たちと比較すると、明確に「柔和」なキャラ付けをされています。
三体の地球は、人類滅亡の危機に瀕しており、その世界と柔和な性格がいまいちマッチしていません。
もちろん、これは作者が意図したズラしですので、そこに私がはまらなかっただけです。
一方で、魅力的だと思った部分もあります。
それは、SF描写です。
第1部から加速したSF描写は第3部で光の速さに到達します。
作者が一番描写したかったのは、第3部で出てくるような宇宙なのだろう、と思ってしまうほど濃厚なSFシーンが連続します。
第1部を読んでいるころは、本当にSF小説なのか?と疑ってしまう程度しか描写がなかったSF要素ですが、第3部では大満足な内容になっています。
SF描写がよかっただけに、主人公にハマれなかったのが個人的に悔やまれるところです。
愛と優しさで世界を救う
主人公の程心は、愛と優しさに満ちた人物です。
第3部は(ネタバレになりますが)、程心の回顧録による人類終焉の歴史を振り返るものになります。
その愛と優しさゆえに、人類はいかにして終末を迎えたのか?が描かれています。(もちろん、彼女のいかなる選択にかかわらず、宇宙は終末を迎える運命であったことは変わりありませんが)
彼女の優しさとして最も象徴的な出来事は、彼女が執剣者に任命されたときの出来事でしょう。
彼女の慈愛ゆえに、人類は再び滅亡の危機にさらされてしまいます。
あぁ、どうして愛と優しさで世界は救えないのでしょうか。
彼女の思い描いた通り、彼女を選んだ民衆の望んだとおり、三体世界と地球世界が愛によって混じりあい、平和で栄光の未来を築けたらどれだけよかったでしょうか。
もちろん、読書中の私は残りのページ数(と下巻も残っていたので)から、そんな未来が来ないことはわかっていました。しかし、私はそんな未来を望まずにはいられませんでした。
羅輯が紡いだ糸が、確かに平和な未来へつながっていてほしかった。
でも、そうはなりませんでした。悲しいけれど。
この後も何度も彼女はその優しさ故に、人類の終末を加速させ、その事実に苦しむことになります。
執剣者任命のあたりで、私は彼女にはまらない事がわかっていたので、彼女のやらかしについて、特に期待も感情の起伏もなく読んでいました。
途中で彼女がその優しさを捨ててしまっていたら、また違ったのかもしれません。
程心のすごいところは、彼女の優しさが物語の最後の1行まで変わらずにいたところだと思います。
そういうところに救われる人もいると思います。
私は違ったというだけです。
愛と優しさで世界は救われたのか?
おそらく、Yesです。
人類の存亡だとか、宇宙の低次元化の阻止だとか、そういうスケールではありませんが。
この物語の最後、小宇宙の物資を大宇宙に返す場面。
あれこそが救いなのだと思います。
与えられたものを、与えてくれたものに返す。
これが救いなのだと思います。
人類は救われたのか?
これもまた、Yesだと思います。
大宇宙から小宇宙に向けてメッセージが送信されるときに、地球の言語が含まれていました。
これこそが人類への救済だったと思います。
(もちろん、三体世界への救済でもありました)
人類の滅亡は回避することができなくなり、彼らは人類の存在した証をどうにかして宇宙に残そうと試みます。
われらの羅輯の最後の仕事もこれでした。
では、この仕事の完了はなんでしょうか?それは、宇宙の終末までその証が残存することでしょう。
これは、明確に完了したといえます。
つまり、人類は最後の望みを叶えたのです。
それは、救済以外の何物でもないでしょう。
第3部の主人公ではない人たち
繰り返しになりますが、私は程心のキャラクターにハマることができませんでした。
ですが、心惹かれたキャラクターは数人登場しました。
そのうちの一人が、ウェイドでした。
彼は、目的のためなら手段を選ばない、恐ろしい上司として登場します。
主人公にとっては、恐ろしい上司であり、命を狙われた相手であり、人類に危害を与える可能性がある危険人物です。
一方、彼女の心の支えとしての一面もありました。
結果として、主人公はウェイドが救えた人類を、二度に渡って破滅の道へ導いてしまいます。
主人公とウェイドは性格も手段も、そして招いたであろう結果すらも、
すべてが正反対といってもいいでしょう。
彼の存在によって、程心のキャラクターがより浮き彫りになっているように感じました。
ウェイドに関するエピソードで最も印象に残っているのが、智子が彼に対する執剣者としての評価を程心に告げる場面です。この言葉に彼のすべてが表現されていると思います。
もう一人、印象に残った人物を挙げるのであれば、それは雲天明になるでしょう。
彼は、程心に、彼女のその優しさに、心を奪われた青年です。
彼に関する描写はごく一部しかありません。
物語全体から見れば、彼の描写量は程心の相方キャラとして出てきた艾AAの1/3にも満たないでしょう。
ですが、AAと彼のどちらがより印象的な人物だったか問われたなら、迷いなく雲天明を選びます。
また、ストーリー上もかなり大きなインパクトを持った人物です。
彼の星を愛する人に贈ることや、愛する人の要請にこたえ宇宙に1人孤独に飛び出すこと(それも脳だけで)、敵地で孤独に物語を紡ぐこと、そのすべてがこの世界の推進剤となっています。
彼に関する物語の中で一つ残念に思ったことは、最後、程心と彼が再会できなかったことです。
なぜなら、私はハッピーエンドが好きだからです。
残念に思う一方で、この顛末を好ましく思っている自分もいます。
なぜなら、ハッピーエンドはつまらないからです。
第3部の全体の感想
再び、全体の感想になりますが、第3部は示唆と伏線がふんだんに使用されています。
第2部の感想で、伏線やそれを回収する構成に感心したと述べていましたが、第3部は少しやりすぎかなぁ、と思いました。
まず、第3部は一見関係のない昔話から始まります。どこにでも侵入することができる女の話です。結局、この話は四次元空間の話として回収されます。
一見、きれいに見えますが思い返してみると少し冗長な感じがします。
もちろん、読んでいる途中は「きれいに伏線回収するなぁ」と思っていたのですが、読み終わってから違和感がわいてきました。
第3部のコア部分に、雲天明が地球へのメッセージを物語に内包して伝えるという部分があります。
このメッセージの謎解きが、ストーリーのコアになっているのですが、このシステムが伏線とその回収に類似しているのです。
ストーリーの大部分を使って、伏線張りと回収(に類似したもの)をシステムとして利用しているうえに、四次元空間の話も同様なシステムで物語に組み込んでいるところに冗長感を覚えたのだと思います。
SF描写について
第3部でもっとも面白いと思えたのが、SF描写部分です。
私は物理学に明るくないので、どこまでがフィクションか明確に線引きできているわけではありません。
しかし、物語に組み込まれたアイディアはとても面白く感じました。
特に、宇宙の低次元化と光速の低速化は、かなり面白いと感じました。
第3部についての評価を下すとすれば、「主人公は好きじゃないけど、物語は好き」になると思います。
ただ、最低限の物理知識(?)がないと物語のコア部分の大半が理解できないと思うので、人には勧めにくい作品ですが。
第3部なにやるの?って思ってたけど、結局何をやったのか
第2部を読み終わったとき、第3部って何をやるのか疑問に思ってました。
それについて、第3部は明確に答えてくれました。
それは、「その後の出来事全部」でした。
本当に、残り全部やってくれました。
個人的に一番うれしかったのは、羅輯のその後(と最後)が読めたことです。
最後に
前回、感想を書くのが難しいと改めて思ったので、今回はChatGPT君に読書感想文の書き方を聞いてきました。
その結果、文体をですます調にすることを見出しました。
効果のほどはわかりませんが、少しは読みやすくなったのではないでしょうか。
感想文の構成とかも教えてもらったのですが、完全に無視してしまいました。(そういうところやぞ)
一気に全部実践するのは難しいので、少しづつ実践していきます。
以上、おちうおでした。