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Ver.5

◎5月
鮮やかな新緑に心洗われる、闘病してはじめての初夏。4月末に病名がはじめて判明して安心したのと同時に、なってしまったことは仕方ないとすぐに折り合いをつけることができた。
前回の診察でお話しいただいた通り、すべての自覚症状を詳細に、毎日ノートに記録することを始めた。症状と時間をその都度スマホにメモしておき、就寝前にメモを見ながら日にち・症状・時間をすべて記録。診察時にわざわざスマホを取り出すよりも、書き記したノートを主治医に見せた方がスマートであるということと、だんだん使うのが下手になってきているのを家族にも見抜かれていた右手のリハビリ、という2つの理由で、あえて紙媒体に記録することにした。
記録し始めてまもない大型連休中に、新たに幻聴という症状が加わった。昨年入院していた大学病院のナースコールの音が、食後や就寝前等のゆったりくつろいでいる時間に聞こえるようになる。生まれてはじめて幻聴を感じ、自分にしか聞こえない音が聞こえる感覚の、精神的に与える苦痛と恐怖心はこんなにも大きなものなのかと思った。と同時に、はじめての幻聴が大学病院のナースコールというのはおもしろいなとも思った。
運動失調、感覚異常・聴覚過敏、意識減損を主として、さまざまな自覚症状とは長い付き合いになることは覚悟の上だが、それでも生活水準を向上したい・これからの人生を楽しみたいという想いで、主治医に頼み込んでリハビリ通院を始めた。


◎6月
しばらく落ち着いていた左半身の痺れが再発。日の差す日中こそ手・腕・足が痺れることが頻繁にあるが、日常生活は問題なく遅れるほど痺れに慣れてしまっている。
昨秋以降あまり気にならなかった嚥下も、うまく飲み込めなくなっているのを再び感じるようになる。1食20分あれば完食できていた食事は、嚥下がうまくいかないので咀嚼にかける時間も長く、30分経ってようやく完食できるかどうかである。
発症から10か月、病名判明から2か月。わたしの身体は、常に敏感に異常を感じ取り、すべてが今できうる機能となって正直に表れることを実感した。
診察で数えれば7度目の通院。相変わらず意識減損が続いていること、幻聴が聞こえはじめたこと、復職に向けて一歩踏み出していることを話す。
主治医曰くいちばん気にかかることは、2か月続いている意識減損・嘔気と幻聴が、本当にてんかんであるのかということ。
てんかんであることが確定しないまま診察を続けていくよりは、確定がきちんと出た上で診察を続けた方が、より患者のわたしに寄り添う医療を受けることができるということ。
もし可能であれば、てんかん専門医のいる病院に少し入院して、長時間脳波ビデオモニタリング検査を受けてみてはどうか、ということを告げられた。
ようやく本格的な求職活動という希望が見えてきた矢先ではあるが、これがわたしにとっての主治医が考える最適な判断だと思った。
これでいただいたお話が通れば人生3度目の入院。
恐れることも、不安になることも、今のわたしには何ひとつない。
ひとつ欲を言うなら、これを復職に向けた最後の休息時間にしたい。



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