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1月16日 弁当をくう

病院の中の売店で働いている。レジを打っていると、救急車で運ばれてきた人が、担架に乗せられ目の前を通っていく。私はそれを見ないようにしている。見ることに意味がないから、見ないようにしている。見たところで私が出来ることはない。見たら忘れられなくなる。だけど帰りには忘れている。自分を無神経な人間だと思いたくない。だから見ない。
事務所で弁当を食べていると、天井が赤に染まる。救急車がまた誰かを運んできた。私は目の前の弁当を食べた。担架のタイヤの音が、無人の院内に響き渡る。何を思うか、考えた。何も思わない訳ではない。私は臆さず弁当を食う。

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