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5月4日 ほーむあんどあうぇい

今日もバイト。
よく話していたおっさんが、今日で退院をすると言っていた。食事制限のからの解放が嬉しいらしく、帰り際にアイスを買うんだッと言って、朝刊を手に取り病室に戻っていった。
昼過ぎにおっさんが来た。私服姿を見るのは初めてだったので、何だか新鮮だった。キャプテンアメリカのTシャツを着ていたので、マーブル好きなんですか?という僕の甘噛みをしながらの問いに、マーブルなあ、マーベルか、好きだなあ。とおっさんは言った。一度自分でマーブルと言ってから、マーブルと正すおっさんの優しさが嬉しかった。そこまでの気遣いが出来るのであれば、そもそも正す必要がどこにあるのだろうか?と考えたりもしたが、辞めた。
小さな饅頭を1つ差し出してきたので、アイスじゃないの?と言うと、アイスはダメだってと悔しそうな顔をしながら店を去っていった。嬉しそうな後ろ姿であった。また会いましょうと言いかけたが、それは言えなかった。ここに来ることは彼にとっては、よろしくないことだからだ。手を振った。またどこかで。
夕方に、30代半ばの男性がやってきた。知った顔だ。昨日の夜中に隣のベッドに越してきた奴がうるさくて、眠れなかったと嘆いていた。それから調子が狂って、今日はなんだかダメだって言っていた。手を思い通りに動かせないらしく、日々リハビリをしているらしいのだが、毎日が無意味の連続だと彼は笑った。意味が生じるまで、無意味は続くものなんじゃないすかと分かったような口を聞くと、昨日出来ていたことが今日出来なくなった。振り出しに戻ったんだ。と言って、病室に戻っていった。
休憩時間になったので、送迎バスに乗って喫煙所に向かった。運転手のおっさんと今ではもう思い出せないような他愛のない話をして、バスから降りた。遠くの方に稲妻が走るのが見え、小走りでタバコを吸いにいった。
急にゴロゴロ空が鳴り出して、辺りが真っ暗になって、俺はここで何をしているんだろうとふと疑問に思った。焦る気持ちになった。
それぞれの事情を抱えながら、皆生きていることを、久しぶりに思い出した。

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落合諒です。お笑いと文章を書きます。何卒よろしくお願いします。