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漢方で考える「不調」の原因について

前回は、漢方の超基本のお話をざっくりまとめてみようとしたのですが、なかなかのしっかりボリュームになってしまったので、、今回からは少し細かめに、さっくりと分かりやすくシンプルな形で進めてみようかなと思います。

前回の最後に、「人間の身体は、気血水と五臓のシンプルなシステムでできている」というお話をしました。そして、その機能がうまく働いている時が「健康」な状態であり、うまく働かなくなってしまった状態が「不調」ということになります。

では、その体の機能がうまく働かないような状態になる原因には、一体どういったものがあるのでしょうか。今回は、漢方で考える「不調」の原因についてお話していこうと思います。



健康な状態とは、どんな状態?

その前に、まず「健康」な状態とはどういった状態のことだと思いますか?

人それぞれ、年齢や生活の違いによってもいろいろあるかもしれないですが、全般的にこういう感じかなと思います。


  • 心身ともにストレスがない

  • 体のどこにも痛みがない

  • 朝起きて、すぐ動ける

  • 痩せても、太ってもいない

  • お肌のつやが良く、顔色がいい

  • 便通が良く、お腹の調子がいい


病気であるかないかに関わらず、健康であるというのは、体の状態だけでなく、心の状態がどうであるかも大事なポイントになるのではないかなと思います。

逆に、体に問題がない状態の時であっても、強いストレスがあったり、異常な天気が続いたりすると、気持ちも下がって食欲がなくなって、体の状態が悪くなってしまうといったこともありますよね。

漢方では、こういった心と体のつながりを重視しながら、「健康」な状態と「不調」の状態を考えていきます。



外からの要因<外因>6つの邪気

では、その「不調」になってしまう原因を、漢方ではどう考えるのかというと、大きく分けて2つあります。

まずは、外からの要因「外因」です。

これまでもお話してきましたが、季節による1年の気候の変化として、「風・熱・湿・暑・燥・寒」の6つの気(六気)があります。

六気は、植物が育つためだけでなく、人や動物など自然のすべてが生きていくために欠かせない気候の変化なのですが、この六気が過剰になりすぎたり、不足してしまったりという異常な気候の変化があったりすると、これらは「邪気」となって、体の表面から内側に侵入して、さまざまな影響を与えます。

それぞれの六気に「邪」がくっついて、「風邪・熱邪(火邪)・湿邪・暑邪・燥邪・寒邪」といって、6つの邪気になります。なんだか「邪」が付くだけで、いかにも体に悪そうな感じに見えますね。


ちなみに、この「風邪」「ふうじゃ」と読みます。六気の「風(ふう)」とは、特に春のによって起こされる気候の変化のことなのですが、この風はいろんなものを動かしたり運んだりしてきます。この「風」邪気がくっついたものを「風邪」と呼んで、例えば花粉やウイルスなどと一緒に体の中へ入ってくるのです。

なので、「風邪」による不調を「かぜ」と呼ぶようになったんだろうと思います。大阪人ならここで「知らんけど」と言いたくなるのですが、おそらくそうだと思います。なるほどですね。これはチコちゃんに教えてあげてもいいんじゃないでしょうか。


他にも、初夏の気温が上がってくる「熱」の気の頃には「熱邪」(火邪(かじゃ)とも言う)といって、肌が赤くなって腫れたり、炎症を起こして痛みが出たりといった症状が出やすくなります。

梅雨の「湿」の気の頃には「湿邪」といって、水分過多によって体がだるくなったり、むくんだり、頭が重くなったり、下痢をしたりといった症状が出やすくなります。

夏の盛りの「暑」の気の頃には「暑邪」といって、厳しい暑さによって高熱になったり、顔が赤くなったり、口が渇いたり、汗を多くかいたりといった症状が出やすくなります。

秋の「燥」の気の頃には「燥邪」といって、水分不足によって空咳が出たり、肌やのどが乾燥したり、便秘になったりといった症状が出やすくなります。

冬の「寒」の気の頃には「寒邪」といって、寒さによって足腰が冷えたり、腰がしびれたり、下痢をしたりといった症状が出やすくなります。



これらは、#6「カンポー予報」でもお話したように、決まった季節だけに起こるというわけではく、その時期の五運六気に合わせて複合的に重なってきたりするので、異常な気候の変化が起こったりした時には、2つ以上の邪気が重なって体に影響することもあります。

例えば、この夏(8〜9月)は「寒」で涼しくなると思いきや、「熱」「湿」の影響が強かったので、お腹の調子が良くなかったりとか、熱によるあせもなどのかゆみや湿疹が起きやすかったかもしれません。これも「熱邪」「湿邪」の影響です。

そして、この秋(10〜11月)は「燥」「風」の気がやって来るので、乾燥の「燥邪」と、かぜの「風邪」がとても気になります。まさに今9月にもうすでにインフルエンザが流行しだしているということですが、この秋は「風」の気なので「風邪」による影響がとても心配です。

インフルだけでなく、コロナにもまた十分注意していかないといけなくなるかもしれません。



内からの要因<内因>7つの感情

そしてもう1つの原因が、内からの要因「内因」です。

内因とは、「怒・喜・思・憂・悲・恐・驚」7つの感情のことで、これらは正常な状態では体に悪い影響を与えることはないのですが、急激な強い感情があった時や、長時間持続したりすると、心身にダメージを引き起こしてしまうことがあります。

また漢方では、感情は体の機能である「五臓」と深くつながっていると考えるので、それぞれの感情ごとにどういった変化が起こりやすいかというのが存在します。


「怒」の感情は「肝」とつながっているので、怒りすぎると「肝」が傷つきやすくなります。すると自律神経の機能が低下して、頭痛やめまい、顔や目が赤くなったりといったことが起こります。

「喜」の感情は「心」とつながっているので、喜びすぎると「心」が傷つきやすくなります。すると精神機能が低下して、気が緩んで集中力が低下したり、不安や不眠になったり、失神したりといったことが起こります。

「思」の感情は「脾(胃腸)」とつながっているので、思い悩んだり考えすぎたりすると「脾(胃腸)」が傷つきやすくなります。すると消化機能が低下して、食欲が落ちたり、お腹が張ったり、胃が痛くなったりといったことが起こります。

「憂」「悲」の感情は「肺」とつながっているので、心配しすぎたり悲しみすぎたりすると「肺」が傷つきやすくなります。すると呼吸機能が低下して、話したくなくなってのどがつまったり、声がかすれたり、鼻水が出るといったことが起こります。

「恐」「驚」の感情は「腎」とつながっているので、恐れすぎたり驚きすぎたりすると「腎」が傷つきやすくなります。すると泌尿機能や生命機能が低下して、白髪が急に増えたり、耳の不調や失禁、精神不安や急激な老化が起こったりします。


なんとなく想像できたり、実際自分でも起きたことがあるのを思い出した人もいるかもしれません。普段の生活でも、ちょっとしたストレスがあったり思い悩んでしまうと、食欲がなくなってしまったり、胃が痛くなったりという経験がある人も多いと思います。



不調の原因は、気血水のバランスの乱れ

このように、漢方では心と体の状態は密接につながっていて、外からや内からの影響による要因で、心身のバランスが崩れてしまって「不調」の状態になると考えます。

なので、これらの要因をあらかじめ知っておくことで、その時の気候の変化や自分の状態によって、どのように気を付ければ良いかということが分かります。

また、自分の「気・血・水」の状態を常に意識しておくことで、そのバランスが崩れて症状が出てしまった時に、その症状から何が原因だったのかを知るということもできます。


そして、普段から「不調」の状態にならないように気を付けて行うことを「養生」と言って、これは漢方ではもっとも大事なポイントでもあります。

特に、季節ごとに起こりやすい6つの邪気による影響の対策には、それぞれ季節ごとの「養生」がとても重要です。


次回は、普段から気血水のバランスを整えるための「養生」についてお話してみたいと思います。

それでは次回もお楽しみに。ごきげんよう。

いつも見ていただきありがとうございます!「漢方茶」を広げていけるような活動をいろいろとやっていきたいと思いますので、ご協力いただけたらうれしいです。