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【虎に翼 感想】 6/19 道男の傷をえぐる猪爪家

道男が余計に傷ついてしまった。昨日、轟が心配していたとおりになっている。よねに知られたら罵倒される流れだ。
良かれと思ってやったこととはいえ、行きがかり上とはいえ、家族にも職場にも相談せず受け入れたのだから、「早く帰らせてくれ」は、さすがに無理だろう。残念だが、ひとえに寅子の調整不足である。

家庭裁判所設立準備室だった場所は、今はランチ場所にでもなっているのだろうか(追記:”家庭局” との看板が掲げられていた)。


道男の名前……昨日、直道みたいな名付け方だと書いたが、実際、直道の名前の候補になっていた。そのこともあり、はるさんは道男に肩入れしてしまっていたのだ。
道男……やっぱり、両親が愛情を込めて、考え抜いて付けてくれた名前だったんだ……。


「ばあちゃん」
一瞬、誰のことを言っているのか分からなかった。そうだった、はるさんは3人の孫がいるおばあちゃんだった。石田ゆり子さんがおばあちゃん……受け入れるのに時間がかかったよ……。
生きるため、小さい子どもたちを守るためとはいえ、道男はすっかり手ぐせが悪くなっている。はるさんの財布からありったけの金を盗んで、猪爪家を出ていこうとしていた。
「我が家にはお金なんてない、はした金盗んで逃げるより、この家の手伝いをして、3食食べて、暖かいお布団で寝るほうがお得じゃありませんか」
はるさんを突き飛ばして逃げて行かなくてよかった。ばあちゃんの言うことも理にかなっていると、受け入れてよかった。犯罪とはいえ、スリ集団のボスとして子どもたちを統率する役割を担っている青年だ。女の子たちからの信頼も厚い。それなりに頭の回転は早いはずだ。

家のこともちゃんとやっているじゃないか。力仕事を請け負っているし、お風呂の沸かし方も、教わらなくてもちゃんと心得ている。親がきちんと教えてくれていたことが分かる光景だ。優未ちゃんの面倒も見てくれている。
道男が、少しずつ心を開いてきている。


「助けになりたい」
直明も張り切ってしまった。
だから道男から「いいヤツなら助けるって?悪いヤツは助けないのか。自分がいいことしたって、気持ちよくなりたいだけなんじゃないのか」と、見透かされてしまう。
ケンカするんじゃないかと寅子は心配したが、直明もその言葉を重く受け止め、道男に謝罪する。
心を開ききれない、彼の逡巡の表情の一つ一つが、切なく映るばかりだ。


道男を受け入れるにあたって、まず考えなければならなかったことは、年の近い直人と直治の気持ちだったのかもしれない。
父親の形見のジャケットは残してあげてほしかった。「後で大きくなったら着ればよい」などと言われても、なんだか汚されたような気持ちになるだろう。
直人と直治は、直道の出征のときに、「お母さんを頼む」と言われていた。昨日は、花江のことを「キレイだ」とか言う見知らぬ青年が突然やってきた。
“守らなければ……”

道男、いつの間にか「花江ちゃん」と呼んでいたな……。
昨日も書いたが、道男の花江への気持ちは、母親への追慕の情のように見えた。直道の代わりになりたいというのは、決して花江のパートナーになるという意味ではなくて、純粋に花江を支えたいと思ったのではないのか。
はるさんが道男に直道の姿を投影させていたことと同じく、道男も花江に母親の姿を投影していたのではないかと、そう思えてならなかった。だが、この種の感情は危うい。
そして……はるさんにしても花江にしても、自分が近づいていけばいくほど、相手が離れていく……。
”もう二度と心を開くまい” と決意してもおかしくない出来事となってしまった。

道男は上野には戻っていなかった。一体どこへ行ったのか。ばあちゃん、倒れたよ。


「虎に翼」 6/19 より

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