【虎に翼 感想】第26話 崔香淑の切迫と怒り
昭和12年、4月にヘレン・ケラーが来日し、5月には、後の美空ひばりが誕生している。
そして、7月には盧溝橋事件を発端とした日中戦争が始まった。戦争はもう始まっているのである。
初めての高等試験
6月、高等試験司法科、一次試験である筆記科目が行われた(試験会場の建物の外観は、今もある法務省の赤レンガ棟のようですね)
幅広い年齢層が受験している様子。
結果…寅子たち5人は全員不合格。そして…優三さんは、おそらく今後も受からないでしょう。こんなことを言って申し訳ないが、試験当日にコンディションを整えられないでいて受かる試験ではないはずだ。
すでに卒業していた久保田先輩は合格!中山先輩は…不合格となり、夫に召集令状が届いたこともあり、今後は受験しないようである。人情派弁護士になりそうと思っていただけに…残念。
男子学生では、花岡と…なんと、稲垣も合格!したのだが、結局2名のみだった。
とはいえ、在学中もしくは卒業直後に受けた試験で合格するのはかなりのエリートだから、人数的にはこのくらいなのでしょう。
崔さんの兄、初登場。そして特高
筆記試験の結果発表後、竹もとに集まっていた寅子たちのところに、崔さんの兄、潤哲さんがやってきた。
テレビ的には初登場だったけど、寅子たちとは顔なじみの様子。出版社に勤める潤哲さんは、仕事が早く終わり、崔さんを迎えに来たのだ。
自宅では朝鮮スタイルの立て膝で夕食をとる崔さんと潤哲さんの元に、男が2名、土足で入ってきた。そして、潤哲さんと崔さんを別々に連行していってしまった。
特高警察が、いきなりやってきたわけではないだろう。前々から監視されていたはずだ。一体、何があったのだろう。
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朝ドラの金字塔「おしん」でも特高の場面がありました。
主人公、田倉しん(田中裕子)の初恋の相手、高倉浩太(渡瀬恒彦)は、大地主で貴族院議員の息子であるにもかかわらず、農民運動にのめり込み、特高警察の目をかいくぐりながら活動していた。しかし、とうとう特高警察に捕まり、拷問を受け、釈放されたときには足に障害を負っていたのである。結局、転向して過去を捨ててしまった。
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崔さんの切迫と怒り
時が過ぎ11月。
口述試験、花岡と稲垣は合格したが、久保田先輩は不合格だった。
つまり、女子の合格者は一人もいないのである。
そんなところに、「女子部新入生募集中止」の新聞記事が出てしまった。
(なんだか、法科大学院の隆盛と衰退を思い出してしまう…)
それを読んだ崔さんの「勝手すぎる!」の怒り、そして、先頭を切って学長らの元へ押しかけ、「納得できない」と交渉し、合格者が出れば女子部は存続できると知るや、真っ先に土下座をする。今まで、こんな崔さんを見たことがなかった。
女子全員の土下座と男子の懇願により、“来年、石を穿つ”(女子の誰かが合格する)ことになれば、募集を再開する約束を取り付けることができた。
崔さん兄妹が連行されてすでに数か月が経っている。崔さんは普通に通学しているが、潤哲さんがどうなったかのかが分からない。
崔さんは気付いているのだろう。すでに法律や秩序が通用しない時代が迫ってきていることを。何としても合格しなければという思いなのか、せっかく女子への門戸が開かれたのに、それが後退してしまうことの焦りなのか、崔さんの切迫した気持ちが爆発したシーンだった。
5人の中で、戦争の苦しみを最も味わうのは崔さんだろうと筆者は考えている。何のために“朝鮮からの留学生”という設定の学生を入れたのか。それについては、じきに判明するのだろう。
そして涼子様。戦後、華族制度は廃止される。涼子様の今後も心配です。
「虎に翼」5/6より
(先週はGWだったので、1週間分まとめての記事にさせていただきました)