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【虎に翼 感想】第38話 穂高教授の“石の穿ちかた”


昭和18年6月

冒頭から不穏だ…4月に戦死した山本五十六の国葬のニュースがラジオから流れる中、直道に召集令状が届く。息子に赤紙が来たのに、嫁の花江を気づかい、抱きしめるはるさん…息子のため、手に入る材料で、できる限りのごちそうをふるまう。

直道の今回の「俺にはわかる」が大外れなことは、すべての日本国民がわかっている。

パパにうながされ、軍歌「歩兵の本領」を歌う直人と直治。
山根のおばあちゃんのアシストもあり、抱き合いながら、「絶対帰ってきて」と皆に聞こえないように伝える花江。ここも、ドラマのお定まりの感じはなくて、本作の演出の妙を早速感じられた。
直道、眼鏡なくさないでね…近視にとっては命綱だから。

そして、轟も…この戦争で弁護士は徴兵されたのかが不明だったが、特例免除はなかったようだ。裁判官はどうなのだろうか。
「おめでとうございます」という寅子に反し、「死ぬなよ」とはっきり言えるよねには、いつも一貫性がある。
ランチのシーンが大好きだったのに…よねとの絡みが大好きだったのに…ホント、死なないでね…


穂高教授の “石の穿ちかた”

寅子は明律大学で講演をすることになった。当日、かつて学んだ教室で待機する寅子は仲間を思い出し、またも “もう私しかいない” との思いにとらわれてしまう。
たまたま大学にいた桂場に、「すごい顔をしている」「怒りが染みついている」と言われた直後に倒れ、目が覚めると医務室には穂高教授がいた。
(『あさが来た』の菊(萬田久子さん)のネイルに匹敵する寅子のマスカラ)

寅子の妊娠を知った教授は、彼女が背負っている荷物を、一つ一つほどこうとする。
「仕事なんかしている場合じゃない。きみの第一の務めは、子を産み、母になることだ」
「世の中そう簡単には変わらない。きみの犠牲は決して無駄にならない」
「人にはその時代時代ごとの天命がある」
「次の世代がきっと活躍」
「あまり大きな声を出すと、お腹の中の赤ん坊が驚いてしまうよ」

「なんじゃそりゃ」
寅子は、教授と向き合うことを諦めてしまった。

・・・・・・・・・・・
“雨垂れ石を穿つ”
穂高教授の理想は壮大だ。それこそ、100年後を見据えてのことだったかもしれない。
だから、教授の考える “雨垂れ石を穿つ” は、一人が何滴も穿っていくのではなく、一人が1滴ずつ穿つイメージだったのではないか。

しかし寅子には、自分がその “駒” として扱われているようにしか感じられなかった。
「こうなることが分かっていて、私を女子部に誘ったのか。私たちに、世の中を変える力があると、信じて下さったのではないのですか。」
教授はこれまでずっと、学生たちと向き合うときに、その次の世代を遠くに見ていたのかもしれない。

今と違って当時は、一度弁護士を辞めると復帰するのが難しかったのだろうか。寅子は視野が狭くなり、追い詰められている。だから教授は、まったく悪意なく、彼女の荷物をほどき、解放しようとした。そして、余計に絡んでしまった。

弁護士の仕事は、依頼者の人生に関わる手続きをする仕事だ。
“一人の命(赤ちゃん)を大事にできないのでは、依頼者の人生に関わる問題を背負うことはできない” 
今は、寅子がこうシンプルに考えてくれるといいのだが。

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「私もやれることはする。お前は一人じゃない」
よねは、寅子のことをいつも心配していた。明律大学の講演を引き受けたときも、寅子が轟に「これから男たちは兵隊にとられていく、お前の仕事が増えるぞ」と言われたときも。

事務所に戻ると、穂高教授がいる。最後まで不穏。


いただきもの

寅子が事務所でもらってきた飴、おいしそう。たしかに榮太樓飴っぽい。自分も法律事務所に勤務していた時代に、いろいろなお菓子を知りました。いただいて嬉しかったものの1つは、石川県にあるお店、烏鶏庵の「烏骨鶏かすていら」です。

「虎に翼」5/22より

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