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【虎に翼 感想】第84話 対等と孤独


「お互い無理をしても、誰も幸せじゃない」

同級生が優未に声をかけてくれた理由は、先生に頼まれたからだった。
そして察しのよい優未は、うすうす勘づいていた。
先生の指示であっても、そのことがきっかけで仲良くなることもあるとは思う。だけど、「友達になってあげた」と、上からものを言う相手との間に、真に対等な友情を築けることを期待してはいけない。不器用な優未にはなおさらのことだ。

黙って立ち去るわけでもなく、誰かを責めるわけでもなく、「誰のせいでもない。一緒にいなくていいよ。ありがとうね」と言語表現できる優未は賢い子だ。対等な関係を築けなければ孤独とは限らない。孤独を辛いこと、恥ずかしいことなどと思わずに、小さいながらも自分に芯を持っている。

しかし、このやりとりを後ろから目撃してしまった寅子は、いたたまれない気持ちのまま時間差で帰宅することになる。

佐田家にとって、変顔は愛情表現だ。相手を元気づけようとしたり、心配させまいと発したりする。下校時の出来事を寅子に見られたと察したのかは分からないが、優未の精一杯の変顔は、寅子に決意をもたらしたのだ。


次の日曜日の『Light house』にて。

寅子は、本人の許可なくその人のことを軽はずみに話す人間ではない。だけど今回は違う。その人は身体障害があり、自由に発言することを躊躇してしまう人だ。だから今回ばかりは荒療治となった。
涼子の前で、玉から頼まれていたことを、あえて話した。そして、結論を出すことを放棄するから二人で話し合えと、強引ではあるがお膳立てをした。

寅子越しの二人のカットにより、私たちも一緒に話を聞いているような気持ちになれた。本作はいつも、私たちを入れてくれる。

「おぞましいことをおっしゃらないで!!」
「玉がいなかったら、わたくし今ごろどうなっていたか分かりません」

涼子はやはり、玉を必要としていた。必要としていたがゆえに、玉を田舎に帰らせず、結果、空襲により怪我を負わせてしまったのだ。
涼子の母、寿子が言う「子を産め」とは、桜川家のためというだけではなかった。子がいないと、無為に時間を過ごす寂しい余生になると。今のように “おひとりさま” の価値観などない時代だ。だから、涼子を将来の孤独への不安に陥らせてしまったようである。
玉が涼子を縛り付けていると苦悩していたのと同じく、涼子も自分が玉を縛り付けていたことの結果に苦悩していた。

「わたくし今、とっても幸せよ。すべて自分で決めて人生を進んでいる」
この場に寅子がいてよかった。
仲間たちの思いを勝手に背負いがちな寅子だった。だけど、東京を去るとき、香子からも「幸せだ」と言われていた。梅子も自分で選んだ人生を歩んでいる。よねには迷いがあったが、寅子は大きな選択をするよう言い残してきた。行方知れずだった涼子のことが気がかりだったが、これで寅子は、背負ったものを全部おろせたのだ。

「私の親友になってくれませんか」
女子部の5人が共有していたものは “法” だった。そして、涼子と玉が共有しているものは、“英語” である。涼子への呼びかけも「you」になる。

二人は常に、奉仕する者とされる者の立場だった。それが決して不幸なことだったわけではない。二人は常に、立場を超えて相手を思いやっていた。だから離れ離れになることこそが、辛く孤独を引き寄せるものなのだ。
そして、親友であることを共有した今、二人は真に対等な関係に到達したのである。

(「今日からあなたを涼子と呼びます」)
朝ドラファンなら、今後、こんなセリフが出てくることを願うでしょうね。

・・・・・・・・・・・・
涼子の夫は気立てのよい人物だった。お気立てに難があるあの子の問題は解決するだろうか。
そして、孤独な余生を不安に感じているあの方のことも何とかしたいと、寅子は思っているはずだ。


「虎に翼」 7/25 より

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おっちぃ|パラリーガル20年 → 在宅ワーカー(リライター)
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