【虎に翼 感想】第76話 寅子、新潟地家裁三条支部へ初出勤
昭和27年春
寅子は、趣のある新潟地家裁三条支部に初出勤すると、裁判所の人たちだけでなく、弁護士の杉田兄弟、市の助役、消防署長などからも大歓迎を受ける。
既視感のある光景だ。油断してはならない。
杉田兄弟……兄、杉田太郎が高橋克実さん、弟、杉田次郎が田口浩正さん……個人的、本作過去イチのキャスティングの妙となっている。
三条支部だと弁護士も少なそうだな~と思ったら、まさかの二人体制(もちろん、よその弁護士が来ることもあるだろうけど)。
ある日の裁判。1件目は被告席にタロー、原告席にジロー。2件目は、被告席にジロー、原告席にタロー。今だったら利益相反でどちらかが辞任する流れだ。本人たちもごっちゃになりそうだし、依頼者もどっちに頼んだのか分からなくなるよ、こりゃ。
小さい支部だから、裁判は毎日開かれているわけではなさそう。開廷日(曜日)が週2日だとして、残りの2日が裁判案件の起案や雑務、残り1日は外出などの予備日として割り当てると、寅子にとってバランスがよいか。
開廷日は裁判が続くから、タローとジローも裁判所に詰めっぱなしだ。だから裁判所の面々とも懇意になっていく。持ちつ持たれつである。
星航一との再会は意外と早かった。
支部の面々が、寅子と航一が改稿作業をした『日常生活と民法』を読んでいるのかは微妙だ。二人が知り合いなことにも、寅子が名前呼びしているのも驚いた様子だった。
急だったから、「星さん」なんてとっさに出ないさ。
新潟地方裁判所(本庁)の刑事部に異動になっていた航一は、交通事故案件の資料を集めに各支部を回っていた。
現代では、大きい裁判所の民事部では “交通部” として1つの部が成り立つほど交通事故は多くなっているが、昭和27年頃は、ちょうど増え始めていた頃だった。
『カムカムエブリバディ』の2代目ヒロイン雉真るい(深津えり)のおでこの傷が残る原因も、三輪自動車との交通事故だったが、時期的には近い。
航一は、高等試験(戦後は司法試験)には現役、もしくはそれに近い早さで合格していそうだ。おそらくエリートの彼は、支部に赴任する機会なんてなさそう。
一方、寅子の前任者は、大事な三条支部庁舎増築の予算計画書を未決のまま去ってしまう人だから、仕事も怠惰そうだし、三条支部に何の思い入れもなかったんだろうな。ずっと支部を回って、そこそこの年齢になったら地元に帰って弁護士になったりして。
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「休みの日は……休んでいますね」
航一は、子どもは義理の母に預けて単身赴任なことがうかがえるセリフだった。寅子との距離を縮めるか。
三条支部では多岐に渡る案件がある。特に刑事事件は大変だ。夜中でも令状を貰いに書記官と警官が来る。
でも優未にとっては、お母さんの仕事の大変さが少し分かったかもしれないね。仕事の半分はお酒を飲んでいると思ってたかもしれないから。
優未は、はるさんと花江の食事作りの様子をずっと見ていたし、お手伝いもしていたはずだ。だから、寅子の帰宅前に夕食の支度をある程度できるくらい習得している。
お母さんの仕事の大変さに触れて、ますます “いい子でいなきゃ” と思わなきゃいいんだけど……。
読めないことだらけの月曜日だった。
「虎に翼」 7/15 より
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