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【虎に翼 感想】第95話 雨あがりの道
その手があったか……
昨日の佐田宅での宴会といい、今日の寅子のズッコケといい、芸達者な出演陣の演技にいつも支えられている。
伊藤沙莉さんの演技が上手すぎるがゆえに、寅子のズッコケもわざとなんじゃないかと錯覚してしまうことよ。
不測の事態が最後のピースとなった。
大雨による列車の遅延。寅子の足すべり。航一の腰強打。
寅子は、優三さんの手紙を読んだことで背中を押されたが、その分、彼の想いを引き受けてしまっていた。
優未と話しているときの、「役目」との寅子の言葉。
優三さんが優未に直接与えてあげられない、愛情を与える役目。
相手が望んでいるかは別として、その人の思いを引き受けてしまう、寅子はそんな人なのだ。
「私は、今も優三さんを愛している。これからもずっと。だから、彼以外に誰かを愛してはいけない。航一さんのことは大切に思っている」
亡くなった人は美化され、その存在は大きくなる。しかも、高瀬と知子の結婚話が出たときに寅子は思い出していた。優三さんの気持ちに便乗して結婚したことを。
その後悔もあってなのか、愛すべき人は誰なのかを理路整然と語り、線を引いてしまった寅子だった。
「蓋が外れてしまう」
ただ生き永らえるだけの人生だと思っていた航一は、“生きよう” と思うようになっていた。
「そんな自分が嫌いじゃない。それだけで、あなたと出会えてよかった。それだけで十分だ」
寅子の想いを受け、航一も懸命に蓋を押さえながら語った。
生真面目な、互いの愛の告白ではなかったか。まったく法曹者らしい結論の出しかたである。
……雨がやみ、このまま帰るだけかと思っていた。
雨はあがりの道
不測の事態とはいえ、手を握り合ってしまったのが運の尽きだ。その温かみが体中をめぐり心にまで到達する。
“その手を離さんでくれ” と、心底願ってしまった。
二人の生真面目な告白は、罪の告白に変わっていった。
亡き夫をずっと愛することと、今、そしてこれから航一とともに生きることは別のことだ。どちらかしか愛してはいけないと、誰が決めた。
優三さんは手紙の中で、「すべて忘れて」と書いたが、忘れる必要もないじゃないか。
“だらしない愛” だと思うこともない。でも思ってもいい。
そもそも寅子は、女性弁護士としての地位を得るために、優三さんの提案(告白)に乗っかる形で結婚を決めた。
高瀬と知子も、世間体のために結婚を決めている。
優三さんの手紙も、「~はだめだ」のオンパレードだった。
みんな勝手だ。そんなもんなんだ。いいじゃないか。ばちは当たらん。
一緒に道を踏み外せば、そこが本当の道になる。
寅子は今日、初めて「なるほど」と言った。
出会った頃はその意味を理解できず、いつの間にか翻訳できるようになっていて、今日、初めて自分の言葉に取り入れることができたのだ。
寅子はいつも、仲間の思いだけでなく、こうあるべきだという、正しくありたい自分を背負いがちだった。
賢い寅子は正しくない自分を航一と分け合い、まだまだおぼつかない足取りで雨あがりの道を歩き始めたところである。
・・・・・・・・・・・・
それにしても……あの身長差が、あの身長差がよかったんです……。
入倉は定時で速攻帰りそうなヤツだと思っていたが、それが今日は功を奏した。ナイスアシストだったぞ、入倉。
念のため伝えておくけど、ここは裁判所ですよ!
次週予告
余貴美子さん、待ってました!
雲野法律事務所の二人もお元気そうだ!
轟は老眼が始まっているのか?
さあ!よねのジャケットにはひまわりのバッジが付いているか!
そして……終戦の日の週に扱われる原爆裁判。
来週は、感想記事はお休みします。
皆さま、よい夏休みをお過ごしください!
「虎に翼」 8/9 より
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