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【虎に翼 感想】 6/12 崔香淑/汐見香子との再会


食糧事情の改善

多岐川が『東京ブギウギ』を鼻歌で歌っている。
昭和23年1月に発売された『東京ブギウギ』を10月になっても歌っている姿から、この曲がロングヒットしていることが分かるし、この後のブギブームに繋がっていく。

前作『ブギウギ』の主人公、福来スズ子(趣里)は、寅子と同い年だ。昭和22年、寅子が司法省に勤め始めてスンとしていた時期、スズ子は恋人の村山愛助(水上恒司)が結核で死んだと同時に娘を出産し、失意の中、育児に奮闘していた。
戦争で死ぬことはなくなっても、花岡が栄養失調からくる肺浸潤(初期の肺結核)で亡くなったことや、愛助の結核もしかりで、まだまだ油断ならない時期だった。

それから1年。寅子(=尾野真千子)が言うように、食べるものに困らなくなっていることが、多岐川と家事審判所の浦野氏、少年審判所の壇氏との会食の姿にも表れている。壇氏が笑って落としたソーセージを拾わない様子も、そのことを印象づけている。
(演者のドンペイさんって、この芸名だったっけ?と思って調べたら、昨年までは「土平ドンペイ」さんだった)

花岡も生きていてくれたら、こうして会食する機会もあっただろうに……。


家庭裁判所の理念

合併話にはありがちな、“どちらの名前を先にするか” 問題、やはりここでも起こっていた。

”腐っても判事”である小橋と稲垣に対し、寅子は不安定な非正規雇用。進展がないことに対する焦りは何倍も異なる。寅子は、帰っていく多岐川と汐見を追いかける。
いつもの公園……登場人物は必ずここで会話を交わす。今さらだが、ここは日比谷公園の設定でよいのだろうか。
「無理やり合併させる必要があるのか。桂場さんと約束している。1月1日までに家庭裁判所の設立にこぎ着けられたら、裁判官にしてもらうと。人生かかってるんです!!」

多岐川は、ここにきてようやく気づいたのである。久藤が寅子に何も話していなかったことを。

「この大馬鹿たれがー!!なんでもっと早く言わない。そんなモヤモヤして、いい仕事ができるわけがない。カー!これだから最近の若いものは」
しかし、“言いにくるだけいいか” と悟ると、汐見を先に帰らせて、寅子を久藤のいる秘書課長室へ連れて行った。
 “ファミリーコート” = “家庭裁判所” の理念を何も教えていなかった久藤に憤る。仕事の引継ぎでこうした行き違いはありがちだ。小橋たちは知っているのだろうか。

タッキー&サディのサプライズ訪問に喜ぶライアンである。タッキーに置いていかれたサディにジャム入り紅茶とクッキーを振る舞いながら、自分が見てきたアメリカの家庭裁判所の景色と、そして理念を教えてくれた。

入口に花や絵画があり、音楽が流れている。
受付案内の職員は女性が多く、笑顔で和やか。居心地が良くて、より健康的な近づけるための空間で、少年の問題と家庭の問題が同じテーブルで語られている。
子どもたちと家庭の問題は地続きだ。少年や相談者の生活にも目を向ける。それが、社会の平和、ひいては未来の平和に繋がっていく。
誰もが気軽に訪れることのできる、間口の広い裁判所。あたたかな愛にあふれた場所になる。

話:ライアン久藤

この当時の日本では、壮大な理念だ。久藤は昭和15年にアメリカに視察に行っているから、この時点で10年近くの遅れをとっている。
だからといって、現代の家庭裁判所でどのくらい実現できているかはわからない。東京家庭裁判所を例に挙げると、決して暗くはないが、無味乾燥というか、無機質な印象だ。綺麗にしているとは思うが、とっても静かだし、手続きで初めて来る方などは緊張するだろうなと思っていた。正面入口前では、離婚調停中の夫が妻を刺殺するという事件も起きている。気軽に訪れるという感じではない。それに家裁は忙しい。共同親権が導入されれば、さらに負担が増えると言われている。
久藤の話は、そもそもが現実的ではなかったのかもしれないが、彼なりの理想があったのだ。

ただ、久藤の話が寅子の全身に染みわたっていくさまが、とっても良かった。このシーンも、寅子の将来を示唆するものとなったように思う。
多岐川もこれまで、何度も何度も話を聞きに来ていた。最後、久藤は「彼ほど少年問題に熱心な人はいない」と評していた。

多岐川に高評価を与える人物がもう一人、ものすごく近くにいた。
直明が関わる ”東京少年少女保護連盟” の前身の組織を日本に初めて取り入れた人物だというのだ。
自分が接する多岐川の印象との違いに戸惑う寅子だが、どうやら多岐川も壮大な理念を持っていそうである。
そして、家事審判所の浦野氏、少年審判所の壇氏にも。
昨日、多岐川は「分かり合えないことは諦める」と話していた。だがそれは、”すぐに諦める” という意味ではないのだろう。
会食という手段は正攻法ではないかもしれないが、多岐川がそのような場を設け、相反する両名であっても和やかに会食できているのは、互いに理念を持っていることは認め合っているからこそのように思えた。

はるさんは、相変わらず日記をつけているようだ。直明も、はるさんの前では子どもの顔をするのがめちゃめちゃかわいい。体格の良さとのギャップがよくて、なんだか涙が出るのだ。


崔香淑/汐見香子との再会

汐見は、多岐川とは古い付き合いのようだ。一緒に職場を出て、一緒に帰っている。
カラスも驚くほどの大きな声で多岐川が寅子に怒鳴りつけていても、それを微笑ましそうに見つめるだけだ。多岐川の性格を知り尽くしているのだろう。京都の少年審判所でも一緒だったようだ。

オープニングに「崔香淑/汐見香子」の名前が出てきた時点で、既に驚いていた。
汐見が下戸でよかった。間違えてお酒を飲んで酔いつぶれて、寅子が連れて帰ることになったから。
だけど、なぜこんなに不穏なんだ……なぜそんなに気まずそうなのか……。
香子は妊娠している。汐見とはどこで出会ったのだろう。
それよりも、多岐川と汐見が一緒に住んでいる理由もよくわからない……。
考えても仕方ないから、明日に期待する。
寅子、ちゃんと ”ヒャンちゃん” と呼んでいたな……(涙)


「虎に翼」 6/12より

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