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【虎に翼 感想】 6/20 はるさんの死

寅子の言うとおり、急なことであった。そんなに心臓が弱っていただなんて。
花江が先にはるさんの気持ちに気づいた。ここ数年は、はるさんと一緒にいる時間は長かったはずだ。「道男を探してきて」とはっきり言える花江の信頼度は高い。


先日、寅子はよねに「会うのは今日が最後だ」と言われていたが、そうはさせない。轟もいつもどおり奥から登場する。道男と一緒に。
道男はずっと苦しんでいた。道男が生まれたときは喜んでくれていたはずの両親。父親は結局飲んだくれで、母子に暴力を振るっていた。それでも母親は、空襲の際には父親を探しに行くことを優先してしまった。見捨てられた気持ちになるのは当然のことだ。彼のこれまでの短い人生は、大人に期待して裏切られることの繰り返しだった。

寅子が道男に呼びかける場面、寅子ではなく道男をずっと映している構図が新鮮だった。道男の側で話を聞くことで、私たちも彼の気持ちをより実感として得られることができた。

寅子の「私に何かできることはないか」というおせっかいは、時に傲慢で、時には相手を傷つけたり不愉快にさせたりすることがある。しかし、行動しなければ物事が動かないときもある。振り幅の大きい行為だが、その分、相手の心に届いたときは、そこからはフルスロットルで動き出すのだ。


もうすぐ死ぬという人が、最後、自分に会いたいと言い、抱きしめてくれた。

「死ぬのかよ」「死ぬ」
猪爪家に居たのはほんの数日間だけだったと思うが、こんなフランクな会話ができるまで、はるさんと道男は関係を築き上げていた。
「すべて突っぱねてはいけない」
「一人きりの人生になるかどうかは道男次第」
自分がいなくなることなど、あなたの人生には大したことではない。あなた次第だと、はるさんが道筋をつけてくれた。
これからこの道を舗装していくのはきみだよ……本当に今までよく頑張ってきたね……。

・・・・・・・・・・・・

その夜。
寅子の声の大きさにちょっとビックリした。30年前に自分の父親が亡くなったときのことを思い返すと、あまり実感を得られないシーンではある。
だけど私たちは、寅子が常に “婦人弁護士として” とか “家族のために” と荷物を背負いがちだったことを知っている。だから最後に、はるさんの背中におぶわれていた頃のように、完全に子どもになれたことを、喜ばしいこととして見守ることができた。この先、二度と訪れないラストチャンスだったから。

この場に居たのが、実の子の直明ではなく花江だったことも特筆すべきこととしたい。直道と結婚した当初は互いの気持ちがすれ違い、一時は別々に暮らすまでになったが、時が経ち、それこそ、最も信頼のおける関係性にまでなっていたことがうかがえた。
もちろん、最後の最期のときは、直明と子どもたち、そして道男に囲まれて旅立っていったことだろう。

日記……最後まではるさんのキーアイテムとなった。はるさん亡き後、家族が日記を読んで号泣する様を勝手に思い浮かべていたが、すっかり見透かされていた……燃やしましょう……愛のはるさん、本当にお疲れさまでした。


「虎に翼」 6/20 より

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