
春狂蔓延
無呼吸症候群の金魚
円転し続ける瞳孔
暗転し続ける網膜
廻り灯籠の獄夢、如月に開け放つ網戸
現し世吊し晒し首虚ろ白昼千鳥足――
雨傘を差さなかったのが私だけではなかったから
私は私が私で私に私をあなたは「アナタ」なのか?
正体不明な4月、血塗れのピアニカ
削り合う赤蟻と岩塩、遺体遺棄は靑く
這いずり廻る童謡が平仮名を隠匿して
3番目の赤マントへ手向ける造花
彼女たちは白目のまま
煌めくのは注射器とメス
蠢くのは偽装と笑顔と__
創り上げた葬列が真紅を彷徨っている
絡繰墓標に刻まれるはずの名も無く
緑化した骸は艶やかな色彩を保ったまま
写真機越しの死はいつも穏やかで清廉だ
二藍の屛風に切創滲む
鎌を振り翳す闇、暗室のような血溜まり
赤い靴、紅いコート、赫い__
アナタの口が裂けた夕刻、私の茜色の眼
無添加の鼈甲飴砕け散って
狂おしき呪詛が鳴り響いた
蜘蛛の糸に青い春がしがみつく
張り巡らされた無機質と縊死体
無表情の屋上で揺れる血塗れの長襦袢
炎熱と罪の蜃気楼は桜花色
誰も救われない黒縄地獄に
差し出された救いの手は白骨化していた
夕刻≒夕焼夢 逢魔時トサイレン
矧がれた三面鏡 裸足ノ蘭爛
鴉と紙芝居 虚ろな藍染め
出血多量な水槽 無言の二世帯住宅
やがて終幕の緋火を放つのは__