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あかんやつきた!
前回、青森市内を見物してきた私は1日目の行程を終えて宿を訪れました。
↑前回の記事
例によって何処の何という旅館かは伏せておきますが、とても素晴らしい宿でございました。
碇ヶ関驛から宿の送迎車で行く事十数分。
緑深い静かで落ち着いた雰囲氣の中に佇む素敵な旅館でございます。
こう云う場合、部屋に着いた途端に浴衣に着替えて大浴場へ…と云う流れが定石でございますが、ここは例外なのです。
何故ならば…
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なんと専用露天風呂附きのお部屋だったのです。
シーズンオフを良い事にこの贅澤なお部屋に安く泊めて戴きました。
これが近頃流行の機械任せのインターネットでは出來ない技でございまして宿の方と直にやりとりしてこそのものでございます。
「あ、こらあかんやつや…!」と、大浴場そっちのけで先ずは早速にこの一番風呂を愉しみました。
撮影が許可されていない場合、どんなに風景の良い所でも、たとえ自分一人しかそこに居なくても、大浴場を始め公共の風呂場には決してキャメラを持ち込まないのが風呂と温泉を愛する者、即ち我が「泉湯民族」として當然のエチケットでございますがこの専用風呂は例外です。
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小さな洗い場が附いておりますので早速に身軆を洗って、いざ湯船に…!
ざばぁーん…とお湯の溢れる誠に贅澤な音と共に誰も居ない自分だけの風呂を充分に満喫致しました。
この通り、裏庭の素晴らしい景観を眺め乍ら夕暮れ時の森に鳴り響く軆を突き抜けてきそうなヒグラシの音に耳を傾け「嗚呼、これは夢ではなかろうか…」と心の底から思う程の至福のひと時を味わっておりました。
マスクを外してこの湯船から一息吸うと澄んだ山の空氣に忘れかけていた木々と土の匂いがするのでございます。
こう云う瞬間は何物にも代え難い貴重なものでございますので忘れない様によく憶えておくものです。
それが心の財寶となり、いつかどこかで役に立つものです。
これこそが贅澤と云うものだと思います。
夏の夕時に日本の風情を感じ乍ら、私は今こうして素晴らしい風呂に入っているのであります!
さて、宿に到着してからのお約束のひとっ風呂を堪能してから丁度頃合いでございまして夕食を戴きに食事処に向かいます。
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浴衣で部屋を出て愛用の扇子を扇ぎ乍ら、風呂上りの上機嫌で廊下を行きます。
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…と、この廊下の掲示物で氣になる物が………。
何とこの宿のご主人は、かの小野田少尉と關係がある方だったのです。
私はこの小野田少尉と横井軍曹には本當に頭の下がる思いでおります。
よく無知な方が小馬鹿にした風に言っておりますが以っての外です。
外地の過酷な環境を生き抜き、與えられた任務を終戰を過ぎても尚長期に渡り継續し、大切な戰友を失って自分だけ生きて帰った事がどれほど無念であったか、不幸にもその状況から現地の民間人を殺害してしまった事もあった様ですが、帰還時に見た終戰から余りにも時間の經った戰後の日本をどの様に思われたか、當時の當人のお氣持ち考えると何とも胸が詰まる思いであります。
小野田少尉は現地で潜伏中にラジオを入手しアンテナを自作して少なからず戰後日本の状況を知っていた様ですが、帰國後にご自分のジャングルでの軆驗を活かして子供達に自然を學ぶ場を作り「小野田自然塾」を開きます。
そこで戰後、澤山の子供達が自然と触れ合い多くの事を學んだ事でしょう。
少尉の肖像画も掲げてあったので扇子を畳み、一礼して食堂へ向かう事に致します。
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何とも久々の旅館料理に氣分も高揚致します。
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勿論、コレもお忘れ無く…。
もう多くを語らずとも素晴らしい夕食であった事は明白です。
さて、夕食も濟んで部屋でのんびりしてから今度は大浴場へ向かいます。
大浴場は内湯の先にこれまた素晴らしい岩作りの露天風呂がございまして、向かった先が無人と來ればもう言う事ありません。
夜の静かな露天風呂に私一人がポツンと佇む、何とも素晴らしいひと時です。
このお湯は「赤湯」と言って鐵分がふんだんに流れ出ている泉質でございます。
よく軆に馴染ませてゆっくりと温まる事に致しましょう。
再び部屋に戻り、良い氣持ちの儘、布團に「ばたんきゅー」であります。
そして翌日…………の前に深夜3時頃に目が覺めるのであります。
どうも私は「枕が変わるとよく寝付けない」類の人であるらしく、外泊すると必ず深夜に目が冴えてしまいます。
…と云う訳で………
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お部屋のお風呂へ行く事に致します。
誰もが寝静まった頃にお湯に浸かる音が静かに響き渡ります。
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絶えずちょろちょろと云うお湯の音が聞こえてきます。
湯船はいつも新鮮なお湯で満たされているのです。
そこへ少しずつ身を沈め……ざざざぁー…っと、こんな塩梅であります。
風呂上りに部屋の広縁に置いてある小さな冷蔵庫からよく冷えた天然水を取り出してグビグビと…。
そして私は午前4時頃に再び床に就くのでありました。
つゞく…