虫の都は蔦の下
テラソの庭は汚い。
こうはっきり言ってしまうと自分で残念な気持ちになるのだが、紛うことなき事実だ。
土質にあまり恵まれていないことに加え、日陰で日が当たりにくく、さらには小学校の校庭に面しているということもあり、子どもたちが元気にそれはもうよく踏み固めてくれる。(いつも天真爛漫な姿で利用者みんなを笑顔にしてくれてありがとう)
実は、テラソ設立時の構想の中には「森の図書館」というキーワードもあった。
駅を降り、役場のアーチを抜け、ぱっと拓けた空間には澄んだ青空に緑が映え、耳をすませば校舎の中で賑やかに笑う子どもたちの声が聞こえる…。
なんと素敵な構想だろうか。想像しただけで風が通るような気持ちになる。
けれど現実は厳しい。
土に還らない枯葉が積もり(ビワの葉っぱって腐らないんですね…)、蔦がへばりつき、雑草が生い茂り、緑に癒されるというよりも、緑に絡めとられている感じだ。森構想を復活させるには、とにかく荒れて好き放題に伸びてくる雑草と格闘せねばならない。
彼らに悪気はないし、一生懸命生きていてくれるところ本当に申し訳ないのだが、とにかく生命力が強すぎて他の草花が全然育たないので、すでに膝ほどの背丈になっている雑草をスタッフと地道に引き抜いていく。ゴツゴツした地面から、引き抜く衝撃でパサパサの土が舞い上がり網膜を攻撃してくる。
「これはかなりヤバいっすね〜笑」
当初は苦笑しつつ作業を進めていたが、10分もすれば、ふー、という互いのため息だけが聞こえる。
とにかく、蔦が強敵なのだ。これでもか!というくらいへばりついていて取ろうにも取れない。
A・トルストイの「おおきなかぶ」の方が楽なんじゃないかというくらい、取れない。
カブは真っ直ぐ抜けるけれど、蔦は四方八方にへばりついていて、急に鞭のようにしなって攻撃してくるんだもの。取れないし、取れても痛いよ。
格闘を続け、ようやく地面が見えてきた。
すると、急に視力が2.5倍になったんじゃないかと疑うほど、たくさんの蟻やミミズやダンゴムシが群がっているのが目についた。「うわ〜眩しい〜うわ〜」という感じで逃げまどっている。今までひっそり草の下で生きていたのだろう。急に屋根を外したみたいになってしまってごめんね。
こんな土壌でも彼らにとっては一端の都市だったらしい。よく見ると少し窪んだ虫の道らしい道が出来上がっている。よっぽど今まで誰にも邪魔されなかったんだろう。
テラソの庭は人間目線だとやっぱり汚いが、虫たち目線では誇らしい都だったのかもしれない。
ごめんね、都合で一旦壊しちゃうけど、もっとふかふかで綺麗な庭になったらまた素敵な都を作ってね。
テラソの森・庭計画はまだまだ道のりが遠そうです。
〜出てきた本・漫画・映画たち〜
『おおきなかぶ』A・トルストイ作.