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WE Run | Write, Eat, Run

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私たちが(そして誰かが)走り続けるためのリレーマガジン
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#PS2021

はじめましての方へ、おすすめの記事。1-100記事篇

■はじめまして  『WE Run』は、“私たちが(そして誰かが)走り続けるためのリレーマガジン”というコンセプトのもと、走るをテーマに綴っていく共同運営形式のマガジンです。   “Write, Eat, Run”という3つのキーワードから生まれたマガジン名が象徴するように、書くことを通じて走ることについて考え、食事を楽しむように走ることを楽しもうとするメンバーが、書き手として参加しています。   目指すは、“読み終わったら走り出したくなるwebマガジン”。距離やペースにと

競わずに、走る。ひとりで、走る。

水面が眩しく光り、瞬きが増える。 皇居のランニングコースに入ると多くのランナー達が私の横を通過していく。 桜田門まではあと300メートル位だろうか。 痛み始めた膝を庇いながら、最後の力を振り絞ってダッシュした。 *** 神様にお願いするのは何度目だろう。 誰かにとってはどうでも良いことが、私にとっては重要なことで、とにかく、明日起きたら天気は晴れで、なんとなく痛いような右膝が、少しも痛くありませんように!と、神様にお願いをした。 42歳にして神頼みかと言われると、ちょっと

ウルトラライトの次に来るもの

ここ10年の登山文化を山道具の視点からのぞいてみると、トレイルランニングやウルトラライト(以下、UL)の流れによる道具の「軽量化」が進んだ10年、と考えることが出来ます。UL発祥のアメリカに限らず、日本国内にもULの文化や思想に触発された後発のブランドが増え、誰もが「軽量化」の恩恵を受けることが出来るようなった10年、ともいえるでしょう。アウトドア用品専門店 「ひだまり山荘 池袋店」店長の中村さんに今後の登山文化の展望を伺ってみました。 登山用品店で働くきっかけ──僕は、中

妄想ランニング雑誌企画『INTERVAL』

•コンセプト 『ハウツー本でないランニングマガジン』 日本国内のランニングに関する情報発信は、ほぼ二つに分類されます。一つはメーカーが新製品発売の際にメディアが発信する公式情報です。もう一つはYouTubeやSNSの個人発信です。前者は、ファクトのみで製品がユーザーや市場にもたらす影響を語らず〈モノ〉に閉じている。後者は、発信者個人の固有の体験に基づく発信が強く〈ヒト〉に閉じている。そこで、〈モノ〉と〈ヒト〉の間を描く誌面を考えました。 •雑誌名『INTERVAL』 ①〈モ

グリーンサイレンス

あのウォーレン・バフェットが大株主である、BROOKSのグリーンサイレンスで初マラソンを走ったのは、ちょっとした僕の自慢だ。今までランニングシューズを数え切れ無いほど履き潰してきたと思うけど、僕にとってこのシューズは特別な1足だ。今このシューズについて考えることに意味がある。 数々のウルトラマラソンで連勝記録を持つ伝説的ランナーのスコット•ジュレクは、このシューズを語る上で欠かせない存在だ。彼のメディア露出は日本でも話題になったクリストファー・マクドゥーガルの『BORN T

日常にしずくを添えて

雨上がりのランニングが好きである。 なぜなら、程よい湿度が喉を潤し、走っていて実に気持ちが良いからだ。 さらに、しずくを沢山付けた草花は生き生きとし、魔法にかけられたように光り輝いている。 雨粒が落ちるたびに揺れる花びら、世界がキラキラと光って見えてくるのだ。 しずくを見るためにも、雨上がりには走りたくなる。 しずくはとても美しい。 しずくが作り出す、キラキラとした景色が好きだ。 しかし、キラキラしたものが好きなのかと言われると、別にそういうわけではない。 装飾品は基本的

ノルディックポールによって人類は四足歩行に進化するのだ

「三節棍!」 それを初めて目の当たりにした時に脳裏をよぎったのは、私が幼少の頃に一世を風靡していたアクションスターであるブルース・リーが映画の中で使っていた武器だった。 三節棍(さんせつこん)は、長さ50~60cm、太さ4~5cmほどの3本の棒を、紐や鎖、金属の環などで一直線になるように連結した武器。複数の関節部分を持ち、振り回して敵を攻撃する、多節棍と呼ばれる武器の一種。 昨年(2020年)の師走、私が所属しているランニングサークルで銀座の街を走ろうというオフ会が企画さ

銭湯に囲まれた町で、日常を温め直す。

先日、『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』を観に行った。映画の中で、本筋とは関係ないが個人的な記憶に結びついたシーンがある。 序盤で登場した2軒の公共浴場の看板には、『記念湯』『新生湯』と、書かれてあった。まったくの偶然かもしれないが、この2軒は我が家の近所にある銭湯と同じ屋号なのだ。 私は、大田区の中でも品川区との境界近くに住んでいる。 大田区は23区のうち銭湯の数1位を誇っている。品川区とあわせて60ヶ所ほどの銭湯を抱えている、なかなかの銭湯密集地である。さらに、この

都市における“走る”と“歩く”の行方を、韓国ドラマ『Run on』と書籍『ウォークス 歩くことの精神史』から考える。

歩くことを失った1年だった。 とある韓国ドラマと一冊の本によって、そう気付かされた。 ・・・ そろそろ1年になる、フル・在宅ワーク。便宜上どこで働いても良いのだが、整えすぎた作業環境と愛犬の引力の強さ故に、ほぼ家で働いている。 走ることで定期的に家は出ていたし、何なら、人生で一番走った1年かもしれない。 ▲2020年に走ったルートの記録 1年間よく走ったという達成感の隣に、言語化できない気分の悪さを感じていた。走り続けるために新しい事も色々試した。山を走ってみたり、好

令和の『TOKYO STYLE』

『ひとり空間の都市論』を読んだ。 僕がこの本で最も印象に残ったのは、実は本の中で紹介されている『TOKYO STYLE』の視点だ。 『TOKYO STYLE』は、都築響一が90年代初頭における木賃アパートやワンルームマンションを撮影した写真集だ。 この本には居住者は登場しない。 なぜなら、過剰にモノが溢れた、モノを「所有」する欲望が強かった、当時のリアルな生活様式(スタイル)を切り出しているからだ。 居住者不在の、生活臭が漂う部屋を「覗き見」する快楽がそこにはあった。

走ることは、生活の一部でしかない

  走ることは好きだ。   でも、1番好きかと聞かれると、そうではない。たぶん4番目くらい。   それなのに、走る私の身体は、走ることが1番好きな人達が作ったものに拘束されていた。   秋頃、腕時計をスポーツウォッチブランドのものからApple Watchに切り替えたことがきっかけとなり、このちょっとした息苦しさに気がついた。 ■ 腕時計なのだから、走ることに力を使い切らないで欲しい   4年前、Apple Watchを初めて購入した時は、うまく定着しなかった。  

手を伸ばして、走り出す

「ここのリュスティックがまた美味いんですよ…」SNSのタイムラインに流れてきた美味しそうなパンの写真をなにげなく見たら、私が住んでいる市内にあるパン屋だと書かれていた。そういえば彼は隣の市に住んでいるんだっけ。地図アプリを開いてお店の場所を調べると、自宅からそこまでは約2kmだった。歩くにはちょっと遠いかなあ。走って行こうか…? 久しぶりに「走る」ということが頭に浮かんだ瞬間だった。 ランニングを始めてみようかな、そう思ったのは2年前、私が参加しているオンラインサロンに突如

2020年を走り、私の暮らしは賑やかになった

玄関でお気に入りのシューズが私を呼んでいる。 待ちに待った週末、だらだらと遅くまで布団に入ってなんかいられない。 私は家族の朝ごはんを用意すると、急いで玄関へ向かう。 お待たせ! 私を待ちわびていた大好きなランニングシューズを履いて、週末の朝を走り出す。 今年買ったこのランニングシューズは、とにかく履き心地が良い。足にピッタリとフィットしているのに指先が適度に動く。踵のホールド感も抜群だ。分厚いソールは雲の上を歩いているような感覚で軽く走らせてくれる。 今朝も跳ねるように走