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映像の世紀バタフライエフェクト〜9.11 あの日が変えた私の人生〜

9/9(月) 午後10:00-午後10:45
公式サイト

2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ。3千人の犠牲者の中には、24人の日本人もいた。息子を失ったふたりの父親のその後の人生をたどる。息子が殺された理由を知りたいと、テロの首謀者・ビンラディンへの手紙を携えアフガンに渡った父親。テロの記憶を風化させまいと567ページものアメリカ政府の報告書を10年がかりで翻訳した父親。深い悲しみを抱えつつ、憎しみの連鎖を断つために踏み出した人々の23年の記録。
(以上 公式サイトより)

あの日から23年。
この番組では、以前このテロに関する事柄を扱っていた。

しかし今回はまた視点を変えて、当事者たちの過去と今を紹介する事により、さらに深くこの事例について考察を加えている。

冒頭から涙を誘ったのは、大切な一人息子を失った父親=白鳥さんがビンラディンに向けて書いた手紙だった。息子を殺した犯人に「同じ人間として対話したい」という、混じり気のない正直な文面。
仇討ちや報復ではない真摯な気持ちは、アルジャジーラで放送される事がなく、対面も叶わず、ビンラディン本人に伝わったかどうかも不明。
しかしその思いを抱いてアフガニスタンまで向かい、現地で傷ついた子どもたちを目の当たりにした白鳥さんは、現状を変える努力に目覚める。
支援物資を贈ったり、手品を披露したり、交流を深めることで憎しみの連鎖を止めたいと思ったのだろう。

また、無知によるヘイトクライムで無辜のイスラム系住民を射殺した死刑囚マークの話も、興味深いものがあった。
重傷を負った被害者ブイヤン氏による減刑嘆願の動き。これは「憎しみの連鎖からは憎しみしか生まれない、そんな不毛なことは止めよう」という、白鳥さんと同じ思いから来たものだろう。

そんな2人の思いを踏みにじるかのような現実に、改めて無力さを思い知る結末であった。

しかしそれでもその思いを止めてはいけない、前に進むのだと鼓舞されるものもあった。
それは10年かけて、911テロの英文報告書を翻訳した住山一貞さんの執念だ。
「宗教にしろ思想にしろ、大義のもとに死んだり殺したりするような社会は、いい加減にやめにしたい。今後の日本と世界が自由で平和な安全な社会であることを。これは大きな歴史の流れの中で、大切な一人の息子を奪われた父親の切なる願いである」

911テロが忘れ去られようとしている今。ウクライナやガザで戦禍は止まっていないし、憎しみの連鎖も続いている。それでもそんな動きに抗おうとする魂は死んでいないと信じたい。
白鳥さんと住山さん、一人息子をあのテロで失いながらも、その無念を情熱にかえて燃やし続けている2人のお父さんの姿。それを見て、部外者ながらせめてその思いだけでも繋げていきたいと、強く思う私である。


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