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破綻の航跡 “暁の宇品” 陸軍船舶部隊の戦争 (BSスペシャル)

初回放送日:2024年12月5日

陸軍の船舶部隊、“暁部隊”。広島の宇品に置かれ、兵士や物資の海上輸送を一手に担った。その悲劇の運命を新史料と証言でたどり、太平洋戦争破綻の構造を明らかにする。 ▼暁部隊の礎を築いた司令官、田尻昌次。世界を驚かせた上陸用舟艇の開発を指揮。秘話を新史料で明らかに▼しかし、海上輸送にはある弱点が。田尻は参謀本部に意見具申するも軍を追われた▼後任の司令官、佐伯文郎。太平洋戦争開戦時、南方輸送に成功するが、苦悩を深めていく。軍中枢は船の損失を甘く算定▼戦争末期、爆雷を積む特攻艇が開発され、多くの兵士を見送った佐伯。広島への原爆投下直後、上陸用舟艇で異例の行動に出る。
(以上公式サイトより)

私は今、戦争関連に囲まれている。
テレビドラマ「坂の上の雲」を録画して毎週見ており、こないだは広瀬武夫がロシアを離れた。
同じく朝ドラ「カーネーション」では、本日泰造兄ちゃんが出征して行った。
読んでいる本「地図と拳(小川哲)」では日露戦争の真っ最中で、昨晩旅順が陥落した。
これらは狙っていたわけではなく、偶々そういうタイミングになっている。
そして、太平洋戦争についてのこの番組。
広島宇品の暁部隊と上陸用大発動艇・大発(ダイハツ)、そして関わった人達のことが、丁寧に解りやすくまとめられていた。

戦争関連の番組は8月に集中して放送される事が多いが、寧ろこのように時期を問わず随時取り上げるべきではないか。
実際にウクライナ戦争の終結を待たずして、ガザでも戦争か始まり、この先どうなるのか不安は尽きない。
"コスパもタイパも最悪"なのに何故戦争が起きるのか、戦争を体験していない世代にこそ考える必要があるのだ。

負け戦の予想を無視、停戦できなかったのは何故か?
戦争成金の陰で、前途有望な若者達を無駄死にさせたのは誰か?
俯瞰で見るとおかしな事ばかり。番組終盤で堀川惠子氏は「日本は島国で、戦争で勝てない、戦争をしてはいけない国」と語っていたが、まさにその通りだ。
"攻められたら防げないから対抗的手段として戦う"は一見賛成しそうになるが、攻められないよう先回りするのが外交の仕事だろ!

もう不安しかない現状ではあるが、この番組には当事者が戦禍の様子を語る貴重なシーンがおりこまれている。
最も恐ろしかったのは、食料補給が途絶えたニューギニア戦線の生き残りの方が語ったこと。温和な90歳の老紳士が、人肉事件について淡々と
「目の前にまるまる太った敵兵がいますんで。日本兵の死骸は、食うものがほとんどないんで。骨皮筋右衛門で、ろくすっぽ食うとこないんです」
南太平洋に送られた兵士のほとんどは、武器による戦死ではなく餓死だったと。
戦争はか弱いものが最も被害を受ける。ガザの避難民が映る度に、空腹の子ども達を想像する。人肉事件は無いと思うが、食料や医療の枯渇した境遇は同じだろう。

そんな暗澹たる戦況のなか、田尻昌次・佐伯文郎・市原健蔵らのエピソードは人間らしさを感じさせるものだった。

田尻は民間船を軍用として徴用するのは、民間人の生活に悪影響だと進言。上層部には無視されたうえ、火災の責任を取らされる形で諭旨休職=司令官をクビになる。

田尻の後任・佐伯は暁部隊の在り方に苦悩しつつも、広島原爆投下35分後に独断で被爆者救助へ向かわせる。
その結果、被爆された方を増やした事を悔いたとは思うのだが、人としてどう行動するかという点では賞賛に値するのではないだろうか。
少年兵たちも、特攻に向かうよりよほど意義のある活動ができたと思う。

田尻の下で大発考案の天才技師・市原は、太平洋戦争開始直前に軍を辞す。1944年、陸軍より木造の機帆船造りを命じられた彼は、それに従わず下駄を4000足作って西日本へ配給した。
後年、ベトナム戦争の記事で自分が考案した大発を模した船を見つけてスクラップしていた。
ダイナマイト考案のノーベルと同じ苦悩を抱いて生きていたのかもしれない。

こういう歴史は、できるだけ多くの世界中の若者に知ってもらいたい。
そのためにsnsを活用すれば、世界戦争は回避できるかもしれないと、期待を込めてみる。



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