さよならを言えず東急東横店 (できごと)
テレワークが解除になり、3ヶ月振りに出勤した。渋谷は以前より人も減り、かなり歩きやすく感じた。
そして何より変わったこと。東急百貨店東横店が閉店していた。
いつも1階を通り抜けて出勤していたので、閉店することは年明けから知っていた。カウントダウンのポスターも日々撮影してきた。時々販売される閉店に向けた限定品は都度購入していたし、最終日には何か買うつもりだった。
久しぶりに見たその場所は、すっかり様変わりしていた。いつも芳しかったコーヒースタンド、ラグビーW杯のタオルを買ったイベントコーナー、貼るタイプのマニキュアショップ、全てが真っ白になっていた。
3月31日をもって85年の歴史の幕を閉じた、渋谷駅・東急東横店。
私が初めて口紅を買ったのは、ここのシュウウエムラだった。グラデーションを作る様に綺麗に並べられたサンプルから、塗ると紅く見えるブラウンを勧められた。それ以来今でも、色選びに迷った時は茶系の口紅を買うようになった。
そんな想い出のある百貨店に、私はちゃんとさよならが言えなかった。その日、閉店のニュースをテレビで見ながら、心底疫病を恨んだ。
そういえばこの3月は、廃校になった学校や卒業式ができなかった学生といったニュースを良く目にした。更に疫病で亡くなった方は、家族が看取ることもできなかったという。
見送るということは悲しいが、それさえできずに突然別れてしまう事ほど、寂しく酷いことはないと痛感した春が終わる。