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時をかけるテレビ われらの再出発〜失業サラリーマンたちの6か月〜(ドキュメンタリー NHK)

9/6(金) 午後10:30-午後11:30
公式サイト

池上彰が過去番組から時代を超えたメッセージを読み解く。1997年放送の職業訓練校のドキュメンタリー。山田洋次監督はこの番組を見て「学校Ⅲ」を製作したと言う。

1996年東京都立亀戸技術専門校(当時)のビル管理科に入学した中高年の16人は、いずれもバブル経済崩壊後の不況下、リストラや倒産などで職を失ったサラリーマンたち。それぞれ培ってきた仕事へのプライドもあれば、家族の事情もある男たちだ。入学当初は会話もなかったが、やがてクラスメートとして勉強を教えあうなど友情が芽生えていく。冬の時代を懸命に生きる人たちの、入学から卒業、再就職までの日々を見つめた。

「ドキュメントにっぽん われらの再出発~失業サラリーマンたちの6か月~」(初回放送1997年4月4日)より
(以上 公式サイトより)


「時をかけるテレビ」は過去の番組の再放送だが、毎回本当にジーンとする。「時代を超えたメッセージ」であると同時に、今とシンクロする部分も多いのだ。
今回は"定年前に倒産やリストラで退職した方々の再出発"がテーマだったが、コロナ禍で同様な立場になった方にも通ずるのではないか。

山田洋次監督が映画のネタにしたくらい、心打たれるエピソードの多かった今回。27年前の番組なのに、全く古さを感じない。
山田監督が番組内で
「"グローバル化"という言葉が出てきたのが、だいたいこの頃。グローバルなんて言い出してから、だんだん世界が不幸になってきてるんじゃないかな。そんな気がしてしょうがない」と。
「本当そうですよね」と池上さんも応えていたが、私も全く同感である。
先進国がよその国の労働者を低賃金で使い、結果的に自国の伝統文化や職人さんの仕事まで失くす。
これはまさに、人新世の悪循環ではないのか。
そんなゾッとする話の後に、再出発にかける男たちとその家族のエピソードもながれ、あたたかい気持ちになるのがせめてもの救いでもあった。


元営業課長、元職人、元信用金庫職員など、様々な境遇の方たちがボイラー技師の試験合格に向けて勉強を続ける。当初はお互いに距離を取っていたが、同じ目標に向かう者同士。廊下での雑談や忘年会などで少しずつ仲間になっていくのが、見て良いな〜と思った。

中卒で職人ひとすじ40年の男性は、試験も初めてだし勉強が苦手で模擬試験でも点が取れない。ひとり試験対策の補講を受けるのだが、そんな彼を「それぐらいしかできねぇから」と、さりげなく廊下で待つ仲間たち。ここはもう涙が出た。
こういう所に、山田監督も心動かされたのだろう。

AIだの自動化だの、世の中確かに便利にはなった。しかし、人の心を動かすのはやはり人であり情である。
機械は所詮道具であり、それを使うのが人なのだ。人が機械に支配されるような世の中は味気なく、まさに情けないと私は思う。
今回は特にそんな気持ちにさせる、神回だった。






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