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海の見える理髪店 (ドラマ)

海辺の小さな理髪店に若者(藤原季節)が訪れた。老店主(柄本明)は嬉しそうに調髪に取り掛かり、問わず語りに自らの人生を話し始める。家業の床屋を10才から手伝い、初めての仕事は兵隊に行く常連客の丸刈り、順調だった店が傾き酒におぼれ、妻に暴力をふるって離婚されたこと……。そして店主は突然、「人を殺めたことがある」と告白をする。なぜ、若者はこの理髪店を訪れたのか? なぜ、老店主は自らの人生を語るのか? (以上公式HPより)

思わせぶりな冒頭から、店主と客の間には何かあるのは明白。しかしそれが何なのか? 推測しながらドラマを見るのは、まさにサスペンスといえるだろう。

登場人物は2人だけの会話劇かと思いきや、店主の幼少期から青年期、そして今に至るまでが映像で綴られる。店主が初めて調髪したのは戦地へ向かう若旦那だったり、バブルで儲けて銀座へ店を出したり。さながら「東京ブラックホール」のような進め方は、よくできた構成だと思う。

それにしても、柄本明。先日見たドラマ「17歳の帝国」では総理大臣を演っていたが、もう見るからに黒幕臭というかクエナイ老人で。なのに今作では、佇まいからして過去のある老店主。寂しさや悔恨を表情で見せる、これが名優ということか。

全体を通して、フランス映画のような雰囲気の漂う展開で、特にラストまでの数分は秀逸。NHKが本気を出せば、こんなに凄いドラマを作れるというお手本のような作品だった。




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