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母と暮らせば (映画 2015)

長崎の原爆から3年後。一人暮らしの伸子(吉永小百合)の元に、原爆で死んだ医学生の息子・浩二(二宮和也)が現れる。

戦後75年、戦時中の語り部も少なくなっている昨今である。原爆の詳細な描写に加えて、戦後生き残った者の苦悩と戦争の無慈悲を叙情的に描く、このような映画はますます必須だと思った。

原爆のせいで、一瞬のうちにわけもわからないまま生命を絶たれた浩二。3年ぶりのわが家で、自室のレコードを手に涙する場面は、無念ぶりが伝わる切ないシーンだった。

病で夫を亡くし、長男は出生後戦死、最後の希望だった次男を原爆で失いつつ、助産婦の仕事で生きてきた主人公。物語の終盤、辛うじて交流のあった亡き息子の恋人・町子(黒木華)が、婚約者を連れて挨拶に来る。

その婚約者が浩二の仏壇に手を合わせるとき、伸子は嗚咽するのだが、つられ泣きするくらい良いシーンだった。

残された若い者が次につながる新しい幸せを見つけたら、老いた独り身は生きていく意味を見失うのも仕方のないことだろう。このあたりで、浩二は伸子を迎えにきたのかも、と思わせる伏線もよくできている。

この作品、広島の原爆を題材にした、宮沢りえ主演の「父と暮らせば」と対になっている。余談ではあるが、その両作品で共にキーマンとなる役を演じているのが浅野忠信だ。出演シーンは短いが、次世代への希望を繋ぐ重要な役を演じるのは役者冥利に尽きるのではないだろうか。

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