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土曜ドラマ 『松本清張シリーズ 天城越え』 (1978年)


天城峠で出会った優しい娼婦ハナ(大谷直子)、無口な土工(佐藤慶)、家出少年(鶴見辰吾)。大正時代に迷宮入りした殺人事件の真相が、昭和になって明らかにされる。

まず、大谷直子の美しさに圧倒された。若いのに妖艶、娼婦なのに清潔。こんなに魅力溢れる女優さんだったのかと、驚いた。

ストーリーは清張先生の十八番。"暗い過去を持つ人物が、時を経て真相を突きつけられる"パターンを、登場人物の個性が際立たせる。そしてこのドラマにも、松本清張先生ご自身が重要な役で出演されている。

土工役の佐藤慶は、無口なのにディテールが雄弁。視線と雰囲気で、物語の悲劇性を印象づけている。

そしてキーパーソンの少年役の鶴見辰吾は、当時まだ中学生。大人と子どもの境界を漂う少年そのままの、一途さに秘めた野性を表情で上手く演じていた。

物語の舞台・天城山隧道は1904年、明治時代に作られた石造りのトンネルである。30年前、家族で訪れたときには、ドラマの存在を知らなかった。後に重要指定文化財になったこの場所に、また行きたいと思う。

第33回芸術祭大賞を受賞したこのドラマは、古いのに古びれない見応えのある作品だった?

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