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ヤクザと家族 (Netflix)

時代の流れとヤクザを描いた本作品。「ゴッドファーザー」みたいな物語かな?と思って鑑賞してみた。

綾野剛主演・藤井道人監督ペアから反射的に連想されたのは、ドラマ「アバランチ」。
この映画でも「社会悪」をリアリティあふれる映像とストーリーで展開しており、まさに藤井監督の真骨頂といえるだろう。

ヤクザは反社会的な存在であり、一般人としては関わりたくない。
しかし何故そんなものが存在しているのか、個人としては平凡なのに何故厄介な存在なのか。
そこから脱して生きようとした者を阻む行為は、基本的人権を尊重していないことになるのではないか。
など、普段は思いもしないことを考えさせられるのが、藤井監督の作品だと改めて実感した。
綾野剛は生きづらさや社会の矛盾を体現できる稀有な役者だと、この映画でも鮮やかに証明していた。

コンプライアンスにうるさい昨今、暴力や流血のシーンはNetflixだからこそ表現できるのだろう。
それらがまた一層のリアリティをもって迫ってくるから、視聴者は我が身に起こっている事態のように感じ、
なお一層の考察をしてしまうのかもしれない。

また、いつもながらキャスティングも豪華だった。
「西部警察」や「新宿鮫」でいかにも刑事な舘ひろしが、ここではヤクザの組長を渋くあたたかく演じていた。
「Mother」や「カーネーション」で綾野剛との名コンビが印象的な尾野真千子は、この作品でも期待を裏切らない。
若手成長株の磯村勇斗はいつ出てくるのかと思ったら、やっぱりそう来たか!の待ってました登場。

そして、忘れちゃいけないのが北村有起哉。
彼はなんであんなに”ヤクザもん”が似合うのだろう。
少し前のテレビドラマ「ムショぼけ」でも、彼以外の配役は思いつかないほど”板についたヤクザもん”を熱演。
ひょろっとした細見のルックスと冷酷そうな目つきが”いわゆる悪人顔”なのに(失礼ですみません)、とぼけた関西弁のおっさん役では涙も誘う彼。
そういえば「わろてんか」での落語家・月の井団真役も秀逸だった。
卓越した演技力で変幻自在な北村有起哉は、これからも楽しみな役者だと思う。
(なんだかんだ言って彼が好き)

暴力で他者を恫喝し、財力と虚勢で自分の権力を維持するしかないヤクザという存在は、世界の平和を脅かすかの国と重なって見えた。
もっと真っ当に、仲良く平和を維持するために力を使えないものか。
いろいろなことを考えるきっかけになったこの映画、制作にかかわった方々に心から感謝したい。


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