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クローズアップ現代〜女性達が去っていく


かつて地方創生を担当していました。
移住定住、地方創生推進交付金などが主な業務でした。

私自身が地方創生を数年間担当し、少子化そして地方の若い世代の人口流出に対して、行き着いた答えが、まさにクローズアップ現代のテーマそのものだったのです。
そして、まちづくり専門家である木下斉さんが、私が言葉に出来ずにいたことを、さらに明確に述べられています。

地方創生担当時代、若い世代の定着を進めるための子育て支援は、どこか的外れでズレているように感じていました。
そもそも若い世代が地元に居て結婚してという前提があっての子育て支援だからです。

私の勤務先は、番組中で東京が令和から地方は江戸時代だ、と例えられたような所です。
市内の人口統計を見ても若い世代、特に若い女性の人口流出が男性よりも大きいのです。
これでは出生数は激減するはずなのです。

地方創生担当になったとき、男女問わず高卒後の若い男女の転出は、年によりばらつきはあるだろうが同数では無いかと私は考えていました。
しかし毎年女性の転出の方が男性のそれよりも多いのです。
それは、これまで私が感じていたけど、なかなか言葉に出来なかった事を証明するものでした。

地方には、まず仕事や職場が少ない。
男性ならまだしも、女性がやりがいを持ち、自分の力を存分に発揮出来る場所が絶対的に少なすぎるのです。
極論してしまえば、地方において女性が比較的差別を受けずに、安定的に働くことが出来る職業は、教員、公務員、看護師、医師ぐらいしかないのです。

仕事をして給与を得て経済的自立することは、精神的な自立にもつながり、自分の人生を自分で選択することに繋がるのですが、地方ではそれが難しいのです。
起業するということもあるのでしょうが、みんなが皆そう出来るとは限りません。

私は地方国立大学出身ですが、私の大学時代の友人や先輩後輩のなかで、地元に残る人は、教員、県職員や市町村職員などの地方公務員になる人が多く、実際に半数近くがそうだったと記憶しています。

民間企業に行く人は地元就職組もいましたが、殆どは、東京や近くの政令指定都市にある大きな企業に就職していたように思います。
私も第一希望は東京の大手民間企業でしたが、最終的に地元の自治体の公務員を選びました。

当時を振り返るに地元の国立大学生ですら、就職を望む民間企業がどれだけ少ないことか。
この辺りの民間は中小ばかりだし、会社の経営が悪くなれば従業員のクビを簡単に切る、特に女性が先にクビを切られる、何故ならば女性は出産だの子育てだと休みがちだから、男性に比べて使いにくい、だから地元で働きたければ公務員しかないよね。
大学時代友人達とそんな話をしていました。

上記は私が就活をしていた約30年前の話です。
現在は人手不足だけれども、地方の中小企業はそこはどう考えているか気になります。
人手が欲しい欲しいとはいうものの、未だに体質は古く男尊女卑で、都合が悪くなれば簡単に雇用を整理するという事があるのか?とても気になります。
もしそうだとしたら、我が子を就職させたいとは思えません。

私は、転出者に窓口で転出理由を聞いてみたいと思いアンケート用紙を配布してみたいと考え、上司に提案したことがあります。
しかし、規模が小さい自治体でもあることから、記載内容から、どこの誰かわかってしまうかもしれないし、転入ならまだしも転出するのは、マイナスな理由があるだろうから、やりにくいということで却下されていました。
実際に役所に勤務した職員OBですら、退職後に市外へ転出してしまう人が多いので、その人達に本当の転出理由を聞きたいと思ったのです。

基礎自治体では、そうした現実に向き合わなければならないと私は考えています。
そこに人口流出のヒントがあるはずだからです。
行政で婚活推進する以前の問題です。
そもそも若い人が、特に女性が地方に住む事を選ばず、都市部へ出ていくのですから。

そして当方は積雪が多い地方です。
真冬は全てが雪に埋もれ一日に何度も家周りの除雪が必要です。
それも転出の大きな理由になるでしょう。
雪は当たり前にあるものですが、3世代同居かつ自営が多かった昔は、家族で一日何度も家周りの除雪作業が可能でした。
しかし現在はサラリーマン世帯が多く、しかも核家族が殆どです。
早朝暗いうちから除雪作業してから出勤し、帰宅後も除雪作業してからでないと家に入ることが出来ない。
若いうちは良いですが歳を取れば無理がきます。
高齢者も娘や息子が住んでいる便利で積雪が少ない都市部へ転出していくことが多いのです。

昔は除雪機械が無くスノーダンプなど手動で除雪作業が行われていました。
今は一台50万円前後の除雪機械を使う家庭が多いです。
便利で除雪作業の時短になっています。
だからこそ地面が見えるほど除雪を行う家が多いです。
そして除雪作業にも上手く綺麗にしたいなど、こだわりがある人が多い。
しかも綺麗に除雪作業をしておかないと恥ずかしい。
そうしないと近所の人から色々言われる。
そうした同調圧力があります。

仕事も少ない、男尊女卑をはじめとした古い考え、強い同調圧力、雪のこと…それでも地方に住み続けたいでしょうか。
住んで欲しいと若い人達に強く言えるのでしょうか。

私は、自治体職員になってから、30年間自問自答してきました。

私は、自分の生まれ育った場所が好きです。
母なる存在とでも言えましょうか。
面倒くさい存在でらあるんです。
でも見捨てたり冷たくすることは出来ない。
無くなることは非常に寂しく悲しい。
そして子供達に故郷を残してあげたいです。
その思いで私は自治体の仕事をしてきました。

その上で自分としてできることとは何か?
個人が周囲を変えることはなかなか出来ません。
仕事として地方創生を担当しましたが大きな流れに逆らうことは無理です。
しかし自分として出来ることは必ずある。

それは

自分が耐えてきた事を誰にも強要しないこと

そして

自分がおかしいと感じたことを無視しない

さらにいうならば

人間はいつからでも変わることができる

と私は考えています。
年齢や立場がどうあれです。
一人一人がそうあれば、やがて大きな流れとなって変化していくのだと思います。
実際におかしいと思っても声をあげられない時が多いのだと思います。

しかし、声をあげられないまでも、おかしいと感じた感覚を無視しない。
そして、何回かに一度で良いので自分の行動を少しで良いから変えてみたり周囲に伝えてみみたりしてみませんか?

田舎だから仕方がない、みんながそうしているから仕方がない。
私もそう考えていた時期がありました。
しかし、その結果が今の状況なのです。
自分が知らない事が沢山あることを理解し、常に学び続けること。
仕方ないは、出来ない理由にならないと私は感じています。
特に自治体職員にその視点が必要なのはいうまでもありません。






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