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これぞ最強のツー!三体をつまんなそーと言う人へ

 

Mao in Space

EPISODEⅡ

~The Red-Guards Strikes Back~
革命だ!
宇宙に隠れていた紅衛兵が太陽から降って来た。宇宙共産党スペースピンコの最高指導者、機械化毛沢東メカタクトウは―

 ↑『三体』はこんな噺ではありません。
 「全然わからん」「カウントダウンが0になるとどうなるわけ?」「宇宙がウインクしますよ。で、なに?」「あー!毛沢東が宇宙で生きてるってこと?」ネトフリ版、第1話を観た後の私の家族の感想です。自信満々でレコメンしていた私は拍子抜けしてしまいました。
 毛沢東は、宇宙にいません。でもそれ以上にオバカな噺になっていきます。難しい科学の話は無視したっていい。オバカ映画や少年マンガが好きな人は絶対に『三体Ⅱ黒暗森林』だけは読んで下さい。「難しそう」「長い」そんな事ないです。ナルトやワンピース、すぐに追い付けたでしょう?俺たち―系でポリティカルな皮肉ネタが幾つか理解できなかった時も、最後まで楽しく観れるでしょう?それと一緒です。
 バッドボーイズ2、花男2、帝国の逆襲、ウィンターソルジャー、MI2、リローデッド、リーサルウェポン2にアクロスザスパイダーバース。前作を越えたパートツーは沢山ありますが、そこに肩を並べる事になるだろうネトフリ版『三体』のシーズン2、なぜなら『三体Ⅱ黒暗森林』は私が人生で出会った読み物の中で、一番のツーだからです。言い切ります、上に挙げた作品の中に「確かにね」という節がある方は、黒暗森林を今すぐ買って後悔しません。
 *ここからティザーとして少しネタバレをしていきます。

『三体』おさらい


・どうやら三体って宇宙人の艦隊が400年後に地球に攻めてくるらしいよ。
・三体が作った智子ソフォンってスッゲー小さいスッゲーコンピュータのせいで地球は三体に監視されています、基礎科学も妨害されているので、これからはテクノロジーの大きな進化も見込めません。おさらいおわり。

『三体Ⅱ黒暗森林』紹介


 はいこっからツーです!四百年後の戦いへの準備、三体との遭遇、そして決着までがこの、ツーの上下で全て描かれます。
 何光年も先から幾ら監視されていたって、三体人ってウソを知らないんだろ?だったら絶対に本性を口に出さない三人を用意して、そいつら各々に三体に勝つ作戦を考えさせようよ。その三人が「計画の一部だ」って言ったら世界中の人はそれに従う事。名付けて、面壁者計画ウォールフェイサープロジェクト
 ↑この計画が始動するのがネトフリ版8話、選ばれたのはソウルデュラン氏。小説では羅輯ルオジーという人物で、面壁者は羅輯を含めた大クセ者の四人。そして三体側が面壁者の本性を読む為に用意したのが、破壁人ウォールブレイカー。面白い事に、羅輯には破壁人が用意されません。ザコだから?いいや、羅輯の脅威は三体側に衆知の事実。本性を探るどころか、人間を使って全力で殺しにきます。すなわち、「なんか俺、本気だしたらすごいらしい。でもなにが?」羅輯の破壁人は羅輯自身なのでした。
 「あなた達には無限の可能性がある」そう言ってくれた中学の先生が懐かしい。あの時にもっとよく考えていれば。
 しかし面壁者が考えるべきは、中学生が考えるアラサーとはスケールが違うシナリオ。400年後ですからね。今から400年前なんて言ったら、蒸気機関も電気もない時代。その時代に現代戦の戦略をたてられる人なんていたかな?それどころか宇宙が舞台で相手が地球外生物!なんて言っていると、この面壁者達の戦略がちょーオバカ。

以下、面壁者のマニフェスト(本性を頭の中だけに隠す、という秘匿が売りの計画上、表向きの計画をご紹介)
タイラー(元アメリカ国防省長官)…一千機の宇宙戦闘機に核爆弾を載せたカミカゼ特攻隊を作ろう!名付けて“蚊群編隊”
レイ・ディアス(元ベネズエラ大統領。アメリカとの戦争に勝った功績がある)…恒星型水爆(これまで人類が作った最高威力の水爆の十七倍の核出力)100万個を使って水星を土木工事、水星に水爆基地を作ろう!
ハインズ(元欧州委員会の委員長。日本人の奥さんとすごい発見をした研究者)…思想統制ですけどなにか?名付けて精神印章メンタルシール、これを押捺すれば「戦争に勝てる!」という信念を持つことができる。三体、もう怖くないですよ!
羅輯ルオジー(冴えない元天文学者。妄想の女子に恋をしていた過去がある)…前半パートでは面壁者の特権を使って「こんな女子いるのかよ」的な理想の女子とエデンの園でダラダラ遊んできましたけど、ウォールフェイサーとしての覚醒後はカズレーザーがWi-Fiウザがるのよろしく、空中を飛び回る陽子サイズのスーパーコンピュータスパイ“智子”を意識できる様になれました。ちょっと本気だして、宇宙に呪文を送信します。ダメだったとしても他の人達ほどリソース使ってないんだしいいでしょ。あとは未来まで冬眠するだけです。
章北海ジャンベイハイ(ネグレクトっと?虐待たい。いいや、飛雄馬と一徹の絆?サイコでファザコンのナチュラル・ウォールフェイサー。前述の面壁者四人との関わりも惑星防衛理事会からのおたっしもなし。筆者が読者へ向けて仕込んだ非正規面壁者)…俺のイメージ通りに宇宙軍を組織すれば、絶対に三体に勝てます!
 このキャラクターには補足が必要で…つか補足したい…
 元々は「中国海軍は陸からの火力支援がうけられる近海でのみ戦闘をするべきです」なんて事を何度も公の場で呈してきたリアリスト。特別な権力も資源も与えられていない現実主義のパンピーが、「なぜ三体に勝てると思うの?」という周りや読者からの疑問を有耶無耶にしながら、「人類は絶対に勝てる!」という頑固な(半ば狂信的にも見える)信念を持って、ただ勝つためだけにonly forward, ひたすら前へ前へ、なにがあっても前へ進んでいく。勝つたには海軍時代からの親友を敗北主義者であると糾弾して宇宙軍から追放するし、宇宙船のエンジン開発の方針変更のために、頭の硬い事を言っている偉い奴らをみんな暗殺します。
 上巻、プロローグの直後から中国海軍政治将校として登場し、400年後へ向けた宇宙軍創設の主要メンバーへ、そして現代からのエリート増援兵として未来まで冬眠して宇宙軍へ、実際には宇宙船の艦長にまで上り詰める彼の…現実主義者と言われていた彼が描いていた数世紀先までの…壮大に見せかけて実はシンプルなビジョン、その信念と行動力には脱帽必須。会社の役員や若手に説教をしたい部長連中にはこーゆー生き様を読んでいて欲しい。この本を読んでいない上司の言う事など聞かないでいい。「最初にしっかり、長く考えろ」章北海の父の言葉です。それを常に心掛け、あれもこれも人に指示を仰がないでいい、そんな社会人になりたいですね。

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最後に

 確かに長いです。序盤の春樹モドキみたいな羅輯ルオジーパートもキツイです。でも終わってみると全てが…ともならない。でも、面白いでしょう。面白いんだから詰まらない所も読むしかない!そう思って読んで下さい。そんな読み方をしたって最後には「読んでよかったな」と絶対になります。
・「雪山に四足歩行の戦車を歩かせよう、なんて映画を作っていて、光の剣をバシバシ叩きつけてくる大男が実は父親だ、なんて展開最後にしようと思う?」「せっかくウォーズしてたのにこれじゃ親子ゲンカじゃん」
・「絵に目がいきがちだけど、あれってグウェンの最初のドラムソロにバンドの曲が付いたって事だよね?」「お前よく気付いたな!」
・「朝起きて、南米の丘に建っている家を全部四駆で蹴散らしたいな、って思うのかなこの監督?」「これ以上シゲルを泣かしたら道明寺ぶっ飛ばす」「このキックはトムの身長を誤魔化すため?」「これマジで引っ張ってんのかな?」etc.
 そんなツーの感想をこの三体Ⅱでも私は家族や友人と交換したい。あなたと話したい。
 最後は章北海同士が教えてくれたタバコの銘柄Marlboroの由来(という都市伝説があるらしい)を引用してお別れです。
 Men always remember love because of romance only. ただロマンスゆえに人は愛を忘れない。

 


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