明治のおもかげ 岩波文庫

鶯亭金升(1868年〜1954年)初出は山王書房 昭和28年

明治、大正、昭和を生きた著者が江戸の雰囲気の残る明治時代の東京を描いた随筆集。関東大震災など、のちの時代の話も。思わずクスッと笑ってしまう逸話が満載です。

上方落語に「三十石」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E5%8D%81%E7%9F%B3 という話がありますが、この本には「火の怖い船」という題で関東の川船の話が載っています。浜町河岸から利根川通いの船に乗って度々銚子や佐原に出かけたとあります。ずいぶんのんびりした旅だったそうですが、ある寒い晩、東京で花火を仕入れた鉾田の人と乗り合わせ、火鉢やタバコの火で爆発しやしないかと気が気ではなかったとか。
 太平洋戦争中に艶笑噺を葬った「はなし塚」の事とか、短いですが、実体験に基づいた文章ばかりなので、重みがあります。
 ゆったりした気分になりたい時、お茶でも飲みながら読むのが楽しい本です。 

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