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褒めるでも叱るでも、肯定でも否定でもなく

最近はまっている、古賀及子さんの日記エッセイ『ちょっと踊ったりすぐにかけだす』。

古賀さん・息子さん・娘さん3人家族の日常を、やさしく鮮やかに切り取ったエッセイで「日記文学」というジャンルを新たに打ち出すきっかけになった作品だ。

家族もののエッセイは苦手だった。たいていがキラキラしていて、それに引き換えうちの家族は・・と恥ずかしいような、情けないような気持ちに読んでなる作品がほとんどだった。でもこの作品は違った。

舞台になるのは古賀さんの家の朝と夜。
日中は古賀さんは仕事へ、お子さんたちは学校に行っている。だから場面は家が中心になるのだが、家族が家に集まっているというより、部室にメンバーが集まっているような感じなのだ。
部室と言っても厳しい部活ではなく、のんびりした地方大学のサークル、というような。

たとえば朝、娘さんが中々起きてこない場面。

古賀さんは娘さんを起こすのに苦労しながらも「自分は朝方なので早く起きれるが、娘は夜型なので朝起きるのが辛そうだ」と述懐する。

さらに「朝の8時に始まる学校のスタイルが、娘には合わないのかもしれない。自分は朝方だったから苦労しなかったけど、もし学校が夜の8時から始まるスタイルだったら、しんどい側だったと思う」と書いている。

私は最後のゆとり世代だったけど、それでも既存の学校のスタイルに合わせられない子は落ちこぼれと言っても仕方がない、みたいな空気があった。学校に自分に合わせるのが当たり前だった。もし自分に朝弱い子どもがいたら「なんで早起きできないの、はあ」とため息をつくと思う。

でもそこに肯定でも否定でもなく「娘にとっては朝8時の授業は夜8時からの授業なのかも・・かあ~考えただけで自分にはムリ。無理な人にはそりゃ無理!」となる古賀さんの発想にクスっとなったりする。

あとお子さんのどちらかが紙を敷いた上で爪を切っていて、その爪が入っている紙で飛行機を折って見せる場面。「お母さん見て見て、中に切った爪が入ってるんだ」とお子さんは言う。

自分だったら「何してんの、そんなの飛ばしたら切った爪がそこら中に散らばっちゃうでしょ、早く捨てなさい!」と言いそうなところだが、古賀さんはスマホで写真を撮らせてもらったとのこと。

お子さんが作った紙飛行機がいい出来だったのか、それとも爪の入った飛行機は珍しかったから写真に撮ったのかはわからない。
でも褒めるでも叱るでもなくただ面白がるところが、中高生がゆるいクラブで集まってしゃべっているような雰囲気で、なんだかとてもいいなと思ったりした。

ドラマティックな出来事やまか不思議なことをエッセイにするのは、実は簡単だ。でも日常の何でもないことに光を当てて書くのはあんがい難しい。
自分も古賀さんみたいなエッセイストになりたい。という最近読んだ本の紹介でした。






今日もお疲れ様でした。
こちらのエッセイもよろしければご覧ください。

関東は暑い日でした。もはや暑いというより熱い。
適当にしっかり、除湿モードで参りましょう。

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小澤仁美
最後までお読みくださり、ありがとうございます。書き続けます。

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