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【当たり前をぶっ壊す】農業インターンシップに行ってみた

「農業インターンシップ」ってご存じですか?
農業に関心のある方が、実際の農業の現場で短期就業体験できる制度です。高校生以上ならだれでも申し込みができ、基本的に費用はかかりません。
この記事では、私が実際に農業インターンシップに行ってきて体験したことや、思ったことを書いています。

気になる方は↓コチラ〈農業インターンシップのサイト〉

https://www.be-farmer.jp/experience/intern/

農業インターンシップとの出会い

結婚→退職→引っ越しののち、私は失業手当をもらい旦那さんのスネをかじりながら、ぷらぷらとしていました。しかし、この生活をいつまでも続けるのは旦那さんに申し訳ない。というわけで、人づてで紹介していただいたブドウ農家さんでアルバイトをすることに。

剪定や枝打ちなど、首を痛くしながらブドウの木を見上げ続ける日々。真夏の暑い日に汗をだらだら流しながら働いて、大変でした。

でも、これまでデスクワークを続けていた私にとって、
一日中外にいるということだけで新鮮で、外にいるだけで楽しかった。
農業って意外とデスクワークよりも向いてるかも、いつか農家になるのもいいかも、なんて思い始める。(単純!)

お世話になっていたブドウ農家さんは、脱サラして移住し農業を始めた方でした。前職の業界が同じだったこともあり話が合い、休憩時間は色んなことをずーっとしゃべっていたのです。その中でお聞きしたのが「農業インターンシップ」の話。
なんでも、将来農業をやりたいと思っている人が、ミスマッチなく就農できるように体験ができる制度なんだとか。ブドウ農家さんもそれに何回か参加して、どんな種類の作物を育てようかとか、どこに移住しようかとか考えたんだそうな。

それは面白そう!
今すぐ農業をやるわけじゃないけど、私もいつか行ってみたい!

しかし、ブドウの繁忙期が終わったところで私は就活を開始し、面接に奔走……農業インターンは、頭の片隅に置かれたままでした。

さて、無事に新しい会社が決まり、初出社日まではまだ時間がある。
なにしよーかなーと思ったところで、片隅に置かれていた「農業インターン」が頭の中で点滅しました。ピカーン。いまなら行けるじゃん!
いや、行こうと思えばいつでも行けるんだけど、仕事が始まっちゃったら忙しいを言い訳にして行かない気がする!!

一念発起して申し込みし、無事に「帰農志塾」という農家さんに受け入れていただくことになりました。

実際に行ってみた

「帰農志塾」

今回は「帰農志塾」さんにお世話になりました。

農薬、化学肥料を一切使わない」農業をされています。
小学校の畑でも化学肥料を撒きまくっていた私からすると、衝撃的です。
しかも、「自給自足」生活をモットーにしています。

Q. え、日本で自給自足って、できるの?
A. できます。

米、野菜、果物が収穫でき、鶏も飼っているので卵や鶏肉も、その餌も自分たちで賄います。調味料の味噌や醤油も自分たちの農場でできた大豆や麦で作っています。え、すごすぎん?!

1日のスケジュール

12月にお邪魔したところ、
6:30 作業開始
11:30-13:00 お昼休み
16:00 作業終了 で働いていました。

夏は5:00から作業を開始し、作業終了は19:00ごろだそうです。
え、労働時間やばくね?と思って聞いてみたら、お昼休みが3時間ぐらいあるとのこと。一番暑い時間帯に作業したら、死んじゃうもんね。
お天道様に合わせたタイムスケジュールでした。

私が体験した2泊3日はこんな感じでした。
自宅から遠かったため、1日目の午前、3日目の午後は車で移動しています。


〈1日目〉

  • 13:00 農場案内

  • 14:00 鶏の世話、たまごパック詰め

  • 16:30 お風呂

  • 18:30 夕食

  • 22:00 就寝

〈2日目〉

  • 6:30   長ネギ収穫

  • 8:30   朝食

  • 9:00   大根収穫

  • 11:30 昼食

  • 13:00 大根と人参収穫

  • 15:30 ぼかし袋詰め

  • 16:30 お風呂

  • 18:30 夕食

  • 22:00 就寝

〈3日目〉

  • 6:30   長ネギ袋詰め

  • 8:30   朝食

  • 9:00   鶏の世話、たまごパック詰め

  • 11:30 終了


それぞれに思ったこと

私が体験中に思ったこと、感じたことを箇条書きで。

鶏の世話

  • 鶏たちの餌は1日2回、すべて自家製

  • 生みたての卵はべたべたしている

  • 卵の形や大きさは様々で、たまごパックに入らない大きなものから、人の親指くらいのものまである

  • 卵の「黄身」は本当に黄色い。絵の具の「レモンイエロー」を思い出す色 

  • いつも見ているオレンジ色の卵は、パプリカなどオレンジ色の餌を食べているためだそう

レモンイエローの卵
  • 鶏たちは2年間卵を産ませたあと、肉として食べる。堅いけど味が濃くて、特にソーセージに加工したものはめちゃうまい

鶏舎

長ネギ収穫

  • ネギは土からするっと抜けて楽しい

  • 早朝で寒かった。特につま先。足用カイロがあった方がいい

  • 美しい日の出が見れて嬉しかった。「これがごほうびだ」と農家さんも言っていた

大根収穫

  • 大根は重くて腰や足が痛くなる

  • 腰をできるだけ曲げないで作業することを心がけたほうが負担が無くていい

  • 「敷き込み」をする。収穫した大根を横向きにして、再度土に埋めることをそう呼ぶ。これで大根が凍らず長期保存ができる。

人参収穫

  • 大根よりは抜きやすくて楽しい

  • 葉っぱはその場でカットし、鶏の餌にする

  • 土がふかふかで、ここに寝たい

ぼかし袋詰め

  • 「ぼかし」は鶏ふん、もみがらなどを混ぜ発酵させて作った肥料

  • 発酵中は発熱する

  • 発酵が完了したら畑に運べるように袋詰め

  • ふかふかであったかくて、寝たい。けど鶏ふんだもんな……

食事

  • 当番制で料理をする

  • 夕食は塾生みんなでそろって食べて、食後はおしゃべりタイム。昼間ばらばらの畑にいることもあるので、ここで情報交換も

  • その日収穫した野菜や卵のうち、形が悪かったり傷があったりして売れないものが主な食材

  • うまい!!!!!

美味しいご飯

帰農志塾の暮らし

  • 塾長、塾長の奥さん以外は塾生。1~3年間、ここで有機農業を学び巣立っていく

  • 塾生の前職は美容師、調理師、会社員、観光農場など多様

  • 寮があるので、全国各地から塾生がきている

泊めていただいた寮のお部屋。畳が泥っぽいところに歴史を感じる。
  • 休みの日は買い物に行ったり、肉を食べに行ったりするそう(豚肉や牛肉もたまには食べたいよね)

  • 井戸水を引いて飲料水にしている

  • 電子レンジがない。あたためは鍋とコンロでする

  • 食器用洗剤は、よほどひどい汚れのときしか使わない

  • ドライヤーを使う人は少数派。インターン生は自分で持っていこう!

振り返り

当たり前って何だろう

もし身近に「うちは電子レンジない」とか、「食器用洗剤使ってない」っていう友達がいたら、ちょっとびっくりしちゃう。
それらを使っているのが当たり前だと思っているから。

でも、その「当たり前」は私と私に近い世界のなかだけの話で、ほかの世界では当たり前じゃないかもしれない。そしてその「ほかの世界」は案外近くにあるかもしれない。

電子レンジが無くても、ご飯の温めは鍋とコンロでできる。
洗剤が無くても、お湯で食器はきれいになる。
掃除機が無くても、ほうきとちりとりがあればホコリはとれる。

私が日ごろ当たり前に使っていたものを、ここでは使っていませんでした。
絶対に必要だと思っていたものを使わない生活で、
自分の「当たり前」が崩されました。

農業は大変、でもやってみてわかったこと

自分の体を動かして働く。これがどれだけ大変なことか身に沁みました。
丸一日収穫をしたら、翌日はバッチリ筋肉痛でした。これを毎日毎日続けていくのは想像しただけでも大変そうです。実際、みなさん大変そうだった。

でも、成果が目に見えるから嬉しかった。
収穫が終わった後の広い畑を見たとき、こんだけの面積を全部収穫したんだ、私たちすごい!って純粋に思いました。成果がこんなに具体的に「目に見える」仕事って、少ないんじゃないかな。
だから、仕事として続けている人たちはもっともっとすごい達成感を味わっているんだと思う。

そんで、仕事をしながらいろんな景色が目に入ってくる。
日の出前の薄紫の空も、お昼近くの真っ白い太陽も、小鳥の姿も、風に揺れるたくさんのススキも、夕焼けに染まる山々も。
そんな自然を感じながら働けるって、デスクワークを続けてきた私としてはちょっとうらやましい。

お金を出せば食べるものが手に入るってことは

卵はパック詰めされた状態でこの世にいきなり現れるわけじゃない。
誰かが鶏のお世話をして卵を集めてキレイに洗ってパック詰めしてお店に運んでくれたから、私は買うことができる。

知っていたけれど、考えたことがなかった。自分で卵を集めてみて初めて、その大変さと、やってくれている「誰か」がいることのありがたみが分かりました。

お金を出せば食べるものが簡単に手に入る世界だからこそ、
このありがたみを分かっているか、そうでないかで、
人生の豊かさは違うと思う。

チャレンジの大事さ

お金がもらえるわけではないし、将来農業をやるかはわからない。
でも、私はそこに行ってみたかった。農家さんがどんな暮らしをしていて、どんな人たちで、何を食べて、どんな話をしているのか、自分で確かめてきたかった。

そんな理由で参加したけれど、思ってもみなかった出会いや学びがありました。興味があることはチャレンジしたほうがいいって、背中を押してくれる経験をまた一つもらいました。そして、どんな形であれいつか農業にチャレンジしたいという気持ちも高まりました。受け入れてくださった帰農志塾さんには、本当に感謝です。

あなたも興味があれば、ぜひ。

〈農業インターンシップのサイト〉
https://www.be-farmer.jp/experience/intern/

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