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好きなことは何ですか


my favorite things 

高校卒業時にプロフィール帳というものが流行った。
もうすぐ卒業して各々の道を歩むという時になのに、お互いに自己紹介しあうというカードである。
時間が経ってから見て、あーこういう人だったなあ〜と思い出すものだろうけど、私にはプレッシャーだった。


プロフィール帳にはname、blood type、addressなどと項目が指定されているものがあり、その中にmy favorite thingsがあったのだ。
私は戸惑った。

名前も血液型も住所も自分で決めたものではない。
だからなんのてらいもなく書ける。
だがその並びで、自分で作った自分の中を書くということは、人となりやいろんな事を晒すようで、用心しなければならない事でもあり、恥ずかしいことでもあり、いきなりハードルが上がる感じがあった。
難しい。
そもそも何が難しいって、自分の好きを把握していなかったからだ。

私、何が好きなんだろう?


自分に好きがないことを18歳の時に初めて気付いたのだ。
そして適当に、なんとなく周りに合わせた当たり障りのない事を書いたと思う。
心にないことを書いたから、何を書いたか覚えていない。
もしかしたら、その頃の理想の自分、在りたい自分を装って書いたのかもしれない。
なぜならその後もずっと、好きなものを取り繕ってきたように思うからだ。


幼い頃、イヤ!と言ったら頭をグリグリされるという罰があった。
凄く痛いのだ。
だからイヤは言えない。

好き!と言うと、え⁈こんなのを⁈ と否定されたり、ふーんと嘲笑された。
なんともいたたまれない。
だから好きも言えない。


親や兄姉のパワーバランスの中で、好きも嫌いも自分で決められず、年月と共にこじらせてしまったのだろうか。
好き嫌いがバレることは勇気がいることで、恥ずかしさを伴うのだ。
そういった感情を持ったまま40年が経ち、ついに好きとか嫌いって何だろうと思う程の迷子になってしまった。
恋愛もしたはずだけど。

私、何が好きなんだろう?


40年経っても同じことを思う自分があまりに面白い。
でも少しは進化している。

それなら嫌いはどうだろう?
と考えられるようになったのだ。
こちらの方がわかりやすい。


そうして嫌なことをちょっと脇に避けているうちに、少し好きが見えてきたように思う。

my favorite  things

甘い食べ物。
洋菓子より和菓子。

原色をぼかした優しい色。
ネイビーとの組合せ。

映画。
吹替えより字幕。


後、何があるだろう。
私が好きなこと。

10代の学生みたいな些細なことだけど、きっと積み重なっていくうちに、心地良さに辿り着けると期待する。
それにこんな事を考えるのが楽しくて好きなのだ。

育てなおしているのかもしれない。
幼い頃からの私を。
好きは好き、嫌いは嫌い。
あっていいんだね。
皆んなあっていいんだね。





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