♯7 ドラムを叩きたい!
私は先月からドラムを習い始めた。
はじまりは高校1年生の頃。部活に入るなら軽音部に入りたかった。
クラスにドラマーを探すグループがいて、暇そうな私に声をかけてくれたが、その頃の私は夢中になっている習い事があった。とても部活にまで手をつけられる状況ではなかった。
それから10年。ドラマーの自分を夢の中でひっそりと飼い続けていた。
社会人になり仕事にも慣れ、お金にも時間にも多少の余裕が生まれ、休日に暇を弄ぶようになった頃、何をしたいか考えた。
あ!私ドラマーになりたかったんだ。
ふと思い出して近くの音楽教室を検索する。
私が世界で1番苦手で身体に諸症状がでるのが環境の変化だ。
初めていく打ち合わせ先、初めていく病院、初めていくあらゆる場所に拒否反応を起こし
前日は妄想に耽りご飯が喉を通らない。蕁麻疹手前のような痒みを全身に感じ、胃が痛くなる。
本当にどうしようもないチキンだ。
しかし今回の私は一味違った。
相変わらず調べては諦める理由を探し、また調べては怯え…変わらない自分。
だが10年来の想いは強く、恐怖をも超えて新たな私を私に見せる。
口コミサイトを比較し、1番都合の良さそうな教室を見つけ、すぐに(この間1年経っていたが。)体験教室に申し込むことができた。
挑戦への第一歩を自分の力で踏み出すことができたのだ。
この一歩は側から見れば小さな一歩だが、私にとっては地球から月まで行けるほどの大きな一歩だ。
誰にも理解してもらえなくて問題ない。
だがそこには大きな一歩があったのだ!!!
初めての場所に恐れ慄きながらスタジオに入る。
優しそうなスタッフさんと先生に向かい入れてもらい、私はドラマーのたまごになった…!
自己紹介を兼ねて、先生が軽く演奏をしてくれた。こんな近くで私のためだけに生まれた音を聞いたことがあっただろうか。
いや、ない。
かっこよかった…これが私が将来なりたい鶏の姿…!と目に焼き付けた。
基本姿勢にペダルの踏み方、スティックの持ち方まで、子どもが自転車の乗り方を教わるように、1から丁寧に教えてもらった。
そしてついに、叩いた。ハイハットデビューだ。
8ビートを右手で刻む。ツンツンツンツン‼︎ ツンツンツンツン‼︎
たのし〜!!!
次はスネア。一定のタイミングでハイハットに重ねる。
そしてバス。スネアとは別のタイミングで迫力を追加する。(足の筋肉がこの動き知らない!と言っていた。ちょっと難しい)
壁一面の鏡にドラムを叩く自分が映る。
あぁ。何度これを夢見たことか。
叩いてみた動画を配信するかもしれない。
いつか社会人バンドを組んじゃったりして。
ライブとかしちゃうかもよ。
全く人生に関係なかった可能性の扉が次々と解放されていく。
その1番最初の扉の鍵を掴み開けたのは他ならぬ自分の力。
体験教室に申し込む。が最初の鍵を手にする条件だったのだ。
全く新しい世界に挑戦する。
知らないことがあまりにも多かった小学生頃までは比較的容易にできていたことが、大人になるにつれ経験が減りできなくなってゆく。
20代半ばにして新たに“挑戦”をした。という事実が、おそらくいつかの勇気に変わると信じている。
ドラムが上手になるかだけじゃない。その一歩に価値があったはずだ。
心の底から挑戦してよかったと思う。
挑戦した自分に拍手を贈りたい。