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【最新作云々54】Mr.クズ男の憐れ逃亡珍道中... 周囲の本気に向き合えないダメ青年が逃げ続けた先で自分のダメさに打ちのめされるセンチメンタルなダメ!ダメ!ダメ!映画『そして僕は途方に暮れる』
結論から言おう!!・・・・・・こんにちは。
大学入試センター試験を受ける際に自分を奮い立たせるために聴いていた曲はナイトメアのメジャーデビュー曲『- Believe -』だった、O次郎です。
※曲調から詩からタイトルまでまぁベタでしたが、それが良かったよね。
尺が3分足らずってのはいくらなんでも短すぎだとは思ったけど。たしかシングルCDに収録されてる3曲とも尺が短くて、全曲合わせても10分有るか無いかぐらいだった気がする。
そしてセンター試験前の前年末にリリースされたファーストアルバムを冬休みの勉強中にずっと聴いてた。
曙さんがボブ・サップにKOされてたのもその年末だったな…いろいろ懐かしい。(´・ω・`)
今回は最新の邦画『そして僕は途方に暮れる』です。
2018年に上演された同名タイトルの舞台を原作として、三浦大輔監督、主演のKis-My-Ft2の藤ヶ谷太輔さんがそれぞれ舞台版から続投した映画化作品。
仕事もプライベートもいい加減で意図せず周囲の人たちを怒らせてしまうダメ青年が、堪らず逃げ出して逃げに逃げた末に近しい人たちの温情に気付いて更生・・・・・・すれば良かったんですが自分のダメっぷりにむせび泣くにとどまるお話です。
これがもし、きちんと更生して成長する筋立てなら解り易くて共感も得られるヒューマンドラマになったのでしょうが、本作は主人公のダメっぷりにどっぷりと浸かってその余情と情感を堪能するいわば私小説あるいは純文学のようなテイストがその持ち味です。そのあたり、ワンテーマにとことんまで耽溺する有り様はまさに舞台劇原作、というところかもしれません。
というわけで本作が気になっている方々はもとより、明朗快活なサクセスストーリーよりもしみったれた人情話がお好みなそこのアナタ、読んでいっていただければ之幸いでございます。
いつも通りとばかりにラストまでネタバレしておりますのでその点はあらかじめご了承くださいませ。
それでは・・・・・・・・・高見盛!!
※"試験を受ける際に自分を奮い立たせるために"繋がりで思い出しました。
コレも高校生時代に校内テストや模試の時に真似して気合い入れてたなぁ。
"本人的には至って真面目にやってるんだけど、傍から見るとどこか鯱張って見えて笑えてしまう"という姿にどうにも親近感を覚えてたわけで。(*´罒`*)
Ⅰ. 作品概要と主人公のダメダメ紀行の数々
(あらすじ抜粋)
自堕落な生活を送るフリーターの菅原裕一は、とあることから恋人や親友、バイト先の先輩、ついには母親も含めたこれまでの人間関係を一切断ち切らざるをえなくなってしまう。自分に都合が悪くなるとすぐに現実逃避する悪癖をこじらせた末に逃亡生活を送る羽目になるが、その道中で家族を裏切ったはずの父と再会する。
というわけで物語は主人公のダメ青年裕一(演:藤ヶ谷太輔さん)の日常からスタートします。
彼女の里美(演:前田敦子さん)のマンションに転がり込む形で同棲しているも家事全般は彼女に任せっきりなうえ、居酒屋のバイトは年中暇なのをいいことに無断早退も当たり前で、最近は彼女に内緒で参加した合コンで知り合った女性とズルズル……まさにテンプレとも呼ぶべきおクズなヒモ男ぶりです。
案の定、浮気の漏洩防止策もいい加減でガバガバだったゆえに里美にバレバレで遂に日常の不満が後押しする形で厳しく追及されてしまい、きちんと向かい合って誠心誠意謝罪することが出来ない裕一は咄嗟にリュックを抱えて逃げ出してしまいます。
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当の裕一がファイティングポーズもとらずに逃げの一手なので修羅場ですらなし…。
自分を曝さない姿勢は時に言い争う以上に相手を傷付けます。
そして深夜に自転車に跨った裕一は仮の宿を求めて同郷出身の友人の伸二(演:中尾明慶さん)の下へ。
ところがそこでも、勤め人で忙しい彼をよそに夜毎弁当を食べ散らかし、朝早い彼の都合を斟酌せず深夜までテレビを観て、自分の衣類の洗濯もさせて、とどのつまり我が物顔で居座り続ける裕一の姿。伸二が怒鳴りつけるのもむべなるかな、というところです。
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裕一が里美に対して向き合うそぶりを一向に見せなかったこと。
"迷惑を掛けるのが俺だけなら未だしも…"というのか、親友ゆえの愛の鞭でしょう。
他人の厚意に甘えるにしても相手に謝意を示したり対価を払うなりするのが本来ですが、裕一の場合は貰えるものを貰えるだけもらって貰えなくなったらサヨナラ、なのでなんとも子どものような無邪気さです。
自分のことしか考えてない甘ちゃんといえばそれまでですが、相手の自尊心や庇護欲に訴えて援助を引き出し続けさせる狡猾さは無いので潔い稚気ではあるかもしれません。
さらに流れ流れて今度はバイトの先輩の田村(演:毎熊克哉さん)のアパートへ。裕一に負けず劣らずいい加減な男なのでそれまでの自堕落ぶりを見せても咎められそうもないところですが、伸二のところに転がり込んだ際の失敗を律儀に生かして「泊めてもらってるんで当たり前ですから」と部屋内のゴミ捨てや洗濯を買って出ている裕一の姿がなんとも滑稽です。
事情を知った田村は「浮気はバレないようにやんなきゃな」とカラカラ笑い、酔った勢いそのままに裕一の浮気相手を呼び寄せようとしますがそれは嫌だとばかりに揉み合いに。おクズではあるのですが本物のクズにはなりきれない根っこのところの良心が泣かせるところです。
そして余談ながら田村を演じる毎熊さんは端正な顔立ちながらコワモテで『全員死刑』『孤狼の血 LEVEL2』『ビリーバーズ』等でアウトローなイメージが強いので、本作でも主人公をドツいたりしないかヒヤヒヤでしたがそこは無かったので内心ほっとしました…。(o´艸`)ム
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その後、使い走りのキツい立場に在りながら好きな映画の現場で仕事している大学の後輩加藤(演:野村周平)を呼び出して自分の行き当たりばったりな漂流ぶりをさも偉大な破天荒生活のように自慢しておクズ成分を補充したものの、持ち上げられ過ぎて仮の宿を頼む機会を逸してしまう憐れっぷりはまるで『賭博黙示録カイジ』『最強伝説 黒沢』等の福本伸行先生の漫画のキャラクターのような様式美の気配すら漂います。
そしてさらにさらにお次は、とうとう折り合いが悪くろくに連絡を取っていなかった同じく都内在住の姉の香(演:香里奈さん)のマンションへ。
これまでの展開の中でも一貫して他人とガッツリ組み合い向かい合うのを避けてきた裕一ですが、それが不可避の家族に連絡するあたりいよいよ待った無しです。
案の定というか、「どうせお金をせびりに来たんでしょ!!」との啖呵を合図に裕一が未だに定職に就いていないことや実家の母に心配を掛けていることを延々詰りますが、ここに至ってはじめて彼が「姉ちゃんだって未だに独り身だろ!!」と応戦します。
他人なら己の不誠実を咎められたり軽蔑されたりしてもやり過ごすことは出来ますが、こと家族となるとそうはいきません。物理的には逃げられても関係性からは逃げられず、己の立ち位置を巡って意思表示せねばなりません。
後で分かることですが、家族の中でその肉親の軛から逃げ出してしまった父が居たからこそ、結果として主人公は家族とひいては他人との誠意の交歓の仕方を上手く体得できなかったように思います。
この姉とのぶつかり合いをスタート地点の里美との経緯の時点から出来ていれば辿るルートもかなり違ったのでしょうが…まぁそうなると文学性は出ないわけで。
遂には東京も逃げ出して、一路実家の北海道へ。
母智子(演:原田美枝子さん)は姉と違って裕一を全肯定し、突然の里帰りにも訳も聞かず喜んで迎えてくれますが、リウマチで片手が不自由ながらもクリーニング屋で懸命に働き、広い家に独り暮らしの侘びしさを紛らわすために怪しげな健康法にハマっているその倹しさに居たたまれず、やはり逃走してしまいます。
信義誠実を求められる都会生活を捨てて妥協の許される実家暮らしを…と考えかけていた主人公ですが、そこにはそこで孤独を深めた母の濃密な闇が堆積しており、自分もその原因の一翼を担っているからにはそれと向き合う責任もまた突きつけられる訳で、逃げるほどにより重たい命題が目の前に待ち構えているのがなんとも皮肉なところです。
そして逃げ続けた最果ての地の末、再会するべくして再会するのがかつて自分たち家族を捨て、主人公の歪な人格形成にも相当程度影響を与えてしまっている父浩二(演:豊川悦司さん)。
そんな彼は、再婚したものの不倫がバレて早々に離婚に至ったうえに慰謝料を周囲の知人からの借金で賄ったうえに別天地へトンズラ。今は小汚いアパートに暮らしつつパチンコで一喜一憂するその日暮らし・・・というこの子にしてこの父あり、というダメ親父ぶり。
しかしながら「俺のところに来るか?」とそれまでの家族の経緯などお構いなく、何の気無しに誘われた父との奇妙な同居生活はお互いに無責任同士ゆえに快適そのもの。
スマホの電源を落としてそれまでの人間関係を絶ったうえ、束の間の安らぎを得ます。
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序盤で後輩の加藤にイキる裕一の構図の裏返しなのでなんとも苦笑が漏れてしまうところです。
そんな世間と断絶されたような生活をして浩二は「監獄みたいなもんだ」と言いますが、それでもなけなしの親心が勝ったか、なんでもないようながら核心を突いたアドバイスをします。「お前にここから抜け出すチャンスをやる。携帯の電源を入れろ」と。
そして里美からの尋常でない回数の着信履歴のうえに留守電に残されていた母危篤のメッセージを聞いて一気に目を醒ますように"監獄"を出る主人公ですが、かつては夫婦だったうえに近くに居るにも関わらず智子と向き合おうとしない浩二に「俺はあんたとは違う!!」と吐き捨てて病院へ走ります。
"反面教師"という形とはいえ、裕一にモラトリアムから自らの明確な意思で誠意を奮い立たせたのはなんとも親子の奇縁を感じさせます。
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この佇まいはどうしたものか?!
どこか憎めないキャラクターをトヨエツさんが見事に体現してます。
そして里美と伸二も北海道まで駆けつけてくれたうえで幸いにも母に大事は無く、帰省した姉も交えての晩餐の場。
気まずい雰囲気の中で腫れ物のように裕一を扱う他の三人に堪りかねて姉が再び、散々迷惑を掛けたうえに侘びもしない裕一を叱責します。
そのうえで涙ながらに裕一が漏らす「オレ、この一か月、なんとかちゃんとしようとしたけど・・・・やっぱりダメでした。なんか・・・すいません。」との言葉はどうしようもなく不格好で内容としては最低なのですが、そのあまりにも遅い人としての歩みをこれまで見てきているゆえに、その精一杯さが胸につまされます。
最後に物語は大晦日の時期となりますが、智子が年越しそばを作っている最中にフラッと浩二が突然現れます。
「アンタ、何しに来たの?!」と香は毒づきますが、浩二にそれとなく体調を心配された智子はまんざらでもなく、何十年ぶりかの家族揃っての晩餐は歪ながらもそれゆえに実にじんわり来る良いシーンです。
智子と香は手製の年越しそばなのにダメな男二人は以前に買っていたカップ麺なのがなんとも笑いを誘うところで。
そしてダメ親父がダメなりにまたしてもダメな息子の背中を押します。「俺は向き合ったぞ」と。
エピローグ、東京の里美のマンションに戻った裕一は今度こそ里美と向き合ってこれまでの自分の不誠実を詫びるのですが、既に里美は裕一が俗世から逃げ回っている最中に彼の親友の伸二と結ばれていたのでした。
しかしながら泣きじゃくりながら別れたい旨を告げる里美に対し、「俺と伸二との関係が壊れるとは考えなかったの?」と問いかける裕一の姿が印象的で、普通の感覚からすれば"そもそもがお前の不義理が原因なのに里美を責められる立場かよ"というところなのですが、自分の明確な意思と立場を以て他人とぶつかることをようやく覚えた彼の一歩でもあるでしょう。
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物語のスタート地点から一ミリ程度の成長でしか無いのですが、
なればこそ世人の理解の及ばない文学的価値を感じるわけで。
Ⅱ. おしまいに
というわけで今回は最新の邦画『そして僕は途方に暮れる』について語りました。
いうなればラストでようやく主人公は自分が傷つく準備をし、他人を傷つけることに無自覚であることを止める意志を示したわけでしょう。
己の矮小さに向き合った時点でもうそこに余情は生まれないわけで、それを思うとやはり純文学的に楽しむのが作法なのかな、と個人的には感じました。
エンターテイメントとしてはそのあまりの情緒へのフォーカスぶりに消化不良感を禁じ得ませんが、他方でアイドル映画としてはアリかとも思いました。
またぞろ取り止めが無くなってきたので今回はこのへんにて。
それでは・・・・・・どうぞよしなに。
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配信スタートとなったようですが出来はどうなり?
評判良いようなら不評だったゲームのパート2のストーリーを上書きするのもアリか…。(゜Д゜)
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![O次郎(平日はサラリーマン、週末はアマチュア劇団員)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/76767168/profile_964813fba38d4eb07b414646ca645b37.jpg?width=600&crop=1:1,smart)