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【名作迷作ザックザク㊲】フィルムノワールの時代に展開される邦画版レザボア・ドッグス!! 強欲に憑りつかれた男女の血と汗に塗れた騙し合いが男同士の友情に...なBL映画『血とダイヤモンド』(1964)

 結論から言おう!!・・・・・・こんにちは。
 そろそろ大学生は後期試験が終わって春休みの時期ですが、自分が大学生の頃はまだバスタ新宿が無かったので大型連休等で帰省する際は都庁前の新宿エルタワー近辺で夜行バスに乗ってたな~と思い出した、O次郎です。

何年生の頃だったか忘れましたが、とある帰省時に旅費を極力ケチろうと
独立シートではなく2列×両サイドのタイプのバスにしたのですが、
いざ自分の席に座ろうとすると既に座席に着いていた隣の女性が
「エッ?!・・・ちょっと、男性の隣はイヤなんですけど!!」とドライバーさんに食ってかかって
結果的に彼女が他の女性客の隣の席に移ることに。
気持ちは分からんでもないしおそらくは当然に前以てバス会社側がそういう配慮はしてくれると
考えてたんでしょうが、僕が立ってる目前で聞こえよがしに言うのはどうよ…とは思いましたね。
(´・ω・`)

 今回は1964年の邦画血とダイヤモンド』についての感想です。
 CSの日本映画専門チャンネル"蔵出し名画座"枠の先月の放映作品が本作でした。
 神戸税関から盗み出されたダイヤの原石を巡って、強奪犯一味とその対立ギャング団、さらにはそのダイヤの保険会社や漁夫の利を狙う私立探偵、そして彼らを一網打尽にしようとする警察の思惑が複雑に絡み合うクライムスリラーです。
 刻一刻と変化する状況とパワーバランスに応じて狡猾に立ち回る強欲なキャラクター達の心理戦は手に汗握りますが、ラストにかけては二人の男のほろ苦い友情物語に帰結し、ビターな中にもどこかハートフルな印象も残す秀作です。
 主演の宝田明さんをはじめとして、水野久美さん志村喬さんといった当時の東宝特撮映画のファンにはおなじみのスターに加え、佐藤允さん夏木陽介さん藤木悠さんといった個性派の二枚目俳優も挙って参加しており、作品全体のハードボイルドな印象をより濃くしています。
 この時期の邦画のクライムアクションというとあまりに荒唐無稽でチープなものも散見されますが、本作はドンパチよりも騙し合いと裏切りの応酬に重きを置いているために却ってエゴのぶつかり合いで迫力が増し、古さを気にさせない人間心理の本質を感じさせます。

※ちなみに過去に書いた同放送枠の貴重作に関する記事はこちら。よかったら併せてどうぞ~。


 カルト映画好き、『レザボア・ドッグス』好き、ハードボイルド好き、クライム映画好きの皆々様、読んでいっていただければ之幸いでございます。
 それでは・・・・・・・・・”新宿中央公園殺人事件”!!

ハードボイルドアドベンチャーゲーム『探偵 神宮寺三郎シリーズ』の
祈念すべき第一作のファミコン作品。
後に発売された初代PSのベタ移植版を攻略サイト見ながらプレイしたゆとり勢ですが、
「コレは自力ではまずムリなのでは…」と唖然としたもので。
この頃のゲームが"プレイする"ではなく"解く"と言われてたのが納得の一本。
御覧の通りのグラフィックなので実際に初めて新宿中央公園を訪れた際は
構造の確認とはそういうレベルではありませんでした。



Ⅰ. 作品概要

※Wikiのページが存在しないため、こちらをご参照ください。

(あらすじ抜粋)
 神戸税関から運び出された三億六千万円のダイヤの原石が四人組のギャングに強奪された。犯人は刑務所仲間の小柴(演:佐藤允さん)と跡部(演:藤木悠さん)、それに会社の金を横領した手代木(演:
砂塚秀夫さん)と小柴に拾われた風来坊ジロー(演:石立鉄男さん)の四人だ。小柴は逃げる際、ボディーガードが撃った銃弾を右胸部にうけた。一方小柴たちより先にダイヤ強奪を計画していた宇津木(演:田崎潤さん)を首領とするギャング団は、思わぬ伏兵に横取りされたことに激怒し小柴一味探索にのり出した。小柴は空家のガレージの中に身を隠し宇津木の子分と通じるウェイトレス利恵(演:水野久美さん)を使って、ダイヤを処分する機をうかがっていた。しかしこの強奪計画を事前に探知していた男がいた。悪徳私立探偵黒木(演:宝田明さん)だ。黒木は、このダイヤに保険をかけている、保険会社代理人ポールから情報を得、ダイヤ奪還の報酬に七千万円を要求した。

 というわけで勢力的には三つ巴四つ巴の複雑な様相を呈していますが、状況の推移によってそれぞれが勝ち馬に乗ろうと強力と裏切りを繰り返す様がなんとも醜悪ながら物語としては面白味が増します。
 特に重要なのが銃弾を受けて大怪我を追っている小柴の容態であり、自身の持つ拳銃を絶えずチラつかせながら痛みに脂汗を浮かべ場を支配しようとする小柴と、彼が望み薄と見るや葬ろうとしたりあるいは回復を見越して擦り寄ったりと忙しい他のキャラクターの挙動がそれぞれの人間性を効果的に表しています。

ギャングVSギャングVS探偵
欲をかき過ぎた者は他の連中に結託して狙われ、
さりとて己の取り分を減らし過ぎると犯したリスクの割に合わないうえに
周囲になめられてしまう・・・絶妙なチキンレースの始まり。

 メインの登場人物みんな悪党ばかりの群像劇の構成ですが、一応の主人公は悪徳探偵の黒木。
 個人的な感想ではありますが、本作での宝田さんは前後の特撮映画や時代劇での"男前"感とは一味違い、己のプライドやモラルはさて置き常に冷静に保身を考えて負けない選択を行うキャラクターも相俟って"クールでニヒル"感がピカイチです。

冒頭、ほんの出来心で浮気をしてしまったサラリーマンに
「奥さんにありのままを報告されたくなくば然るべき金額を」と迫る黒木。
相手の逆上にも飄々と応じずに次なる金の成る木を探します。
強奪ダイヤの恩恵に預かろうとギャングと通じる利恵にカマをかける。
シラを切る彼女にも余裕たっぷりな態度ながら直後に勤務明けの
彼女を脅して隠れ場所に案内させる実力行使も…。

 黒木と利恵がギャング団の潜伏先のガレージに到着するとまた膠着状態に緊張が走りますが、そこに小柴を治療するために脅されて連れて来られた医師秋津(演:志村喬さん)とその娘の津奈子(演:中川ゆきさん)という"真人間"が加わることで各人が微妙に己がモラルを揺さぶられるところがまた巧みです。

娘を人質に取られたとはいえ、相手が悪人とはいえ、
怪我人を治療する全きモラルを見せる秋津。
特に年若いジローに至っては若い娘への同情も重なり、
各勢力のパワーバランスが図らずも揺さぶられる。

 なんとか治療が終わって体内の弾丸が摘出されるも、用済みとばかりに秋津に銃口を向ける小柴。
 悪人とはいえ命の恩人に対してのあまりにも悪辣な態度に秋津は彼のモラルを糾しますが、そこで小柴が語る幼少期のエピソードがなんとも印象的です。
 曰く、「親父は戦時中、米国人の捕虜に自分でもめったに口にできないゴボウを振舞った。そして戦後になって彼らに"木を食わされた"と証言されて戦犯として裁かれた」と。

たしか『はだしのゲン』の中でも全く同じエピソードが描かれてましたね。

 世代的に幼少期に敗戦で価値観を無理やりひっくり返された世代でしょうし、そのうえで父が振り絞った善意が無碍に踏み躙られる経緯を目の当たりにしたとすれば人間不信の原因としては十分過ぎるでしょうか。
 幼少期のトラウマを語る小柴役の佐藤允さんの血と汗の滲む憤怒の顔が反論を封じます。

 そして対立ギャング団による包囲で一蓮托生の立場となった一同は、例外無く己が身の安全を至上命題とするサバイバルの当事者へ。

全きモラリストだった秋津も度重なる娘の危機と
死のプレッシャーに耐えかねて・・・

 大挙する対立ギャング団の銃弾の前に呆気無く倒れていきますが、秋津親子と黒木は寸前で助かります。さらに数にモノを言わせた警官隊が到着し制圧したのであり、己の身の安全と引き換えに土壇場で警察へ事態を報せていた黒木の機転が功を奏したのでした。
 欲の深さよりも人としてのモラルよりも生き残るためのリスクマネージメントに長けた者が勝者となる、というよりも敗者となることを免れたラストはなんとも皮肉たっぷりですが、悪漢ながらも最後まで己の道を貫いた小柴の死に際に敬意を表する黒木の姿はなんとも言えない一縷の救いも感じさせます。

曰く、「出会うのがもう少し早ければ仲良くやれたかもしれない」と。
あまりにもドライに生きてきた黒木が、反対にあまりにも泥に塗れて生を拾い上げてきた小柴の
出鱈目な生命力に一種の憧憬を示したようでもあり、見る目によってはほんのりBLな様相も…。

 

Ⅱ. おわりに

 というわけで今回は1964年の邦画『血とダイヤモンド』について書きました。
 義理と人情に生きる任侠の世界でもなく、悠々と悪が勝利するピカレスクロマンでもなく、どちらにも振り切れない小市民的小悪党がローリスク・ノーリターンで死闘を生き延びて次の獲物を探すラストはこの時代の作品としてはなかなかに珍しい味わいな気がしました。
 今回はこのへんにて。
 それでは・・・・・・どうぞよしなに。




今月の同枠放送の『かあちゃん結婚しろよ』(1962年・五所平之助監督)
についてはいずれまた。

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O次郎(平日はサラリーマン、週末はアマチュア劇団員)
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