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茶園で「生物の進化」を考える!【お茶師日記18】

雑草の種類は多い
 茶園で草取りをしていると、草の名前が知りたくなる。今はスマホで写真を撮ってその場で調べることができるアプリがあるので、片っ端から調べてみる。雑草に関する本も読むようになった。そして改めて気づくのは種類の多さである。
 例えば、幼木園の難敵である「メヒシバ」には、厳密にいうと「メヒシバ」のほか「コメヒシバ」「アキメヒシバ」という近縁種がある。私には同じ草にしか見えないが、これらは季節や環境で住み分けているのであろうか。
 そしてこれまた厄介な「オオアレチノギク」も、よく似た「ヒメムカシヨモギ」というのがあって、私には区別できない。
 それから「ボロギク」も茶園に多いが、これにも「ノボロギク」「ダンドボロギク」「ベニバナボロギク」などがあり、結構混在している。

虫の種類も多い
 ある日、ごく一部で「仙人」呼ばれている山の茶農家から「この蝶は何?」とメールで写真が送られてきた。家の近くで見つけて撮影したのであろう。

 これは「ジャノメチョウ」の仲間だな、ということはわかった。私は幼少期に昆虫図鑑を眺めるのが好きだった。この仲間にもいろいろな種類がいることは知っていたので、「調べてみるよ」と返信してネットで蝶のサイトを調べてみた。
 すると、よく似たのを見つけた。ジャノメチョウ科の「ヒカゲチョウ」という種だ。これだな、一件落着! と思って返信した。

 ところがよーく見なおしてみると、ん?翅の上の方の蛇の目が、こちらは2つしかなく片方は薄い。仙人の写真は3つだ。それ以外は細部にわたってそっくりである。

仙人の写真の蝶
ヒカゲチョウ

 そこで再度ネットで探してみる。
 お、これか。「クロヒカゲモドキ」というのが、蛇の目が3つだ。

これだな。しかしその他はこれも前種にそっくりだな。

「もどき」は怖い

 ところで我々の世代は、この「もどき」という言葉が怖い。
(ただし、がんもどきを除く)
その原因は、小学校のころテレビの特撮怪獣もの「マグマ大使」(手塚治虫原作)を見ていたからだ。
 「マグマ大使」では、地球征服をたくらむ悪の宇宙人「ゴア」が、その戦略のために地球人によく似た「人間もどき」を密かに人間社会に送り込むのだ。「人間もどき」は知らないうちに、人間とすり替わってゴアの手先として働く。しかし正体を見破られて攻撃されると、ゴボゴボと音を出しながらドロドロに溶けていく。低学年の私にはそれが夢に出てきた。恐ろしい。

 話が逸れた。

あれ、これも違う?
 ところがだ、再度よーく調べると、この「クロヒカゲモドキ」の説明には、「上から3つめの目が大きい」と書いてある。そして仙人の写真を見ると、3つめが、あれ、大きくないや!
 しかも、写真で見る限り、クロヒカゲモドキは蛇の目がもっとくっきりしていて、黄色も入っている。翅の形もやや横に広い感じ。
 すると、どちらでもない別の種なのか?

しかし…
後日、facebookの生き物関係のグループサイトへ投稿して問い合わせたところ、「これはクロヒカゲです」という回答をいただいた。
 そうか、モドキのほうでなくて、そっちだったのか、と納得しかけたが...
 しかし、と考える。犬や猫、金魚にしたって個体によって色や模様はさまざまじゃないか。蝶の蛇の目の数や大きさが何だってんだ、なぜこれしか違わないのに「違う種」っていうの? チワワもセントバーナードも同じ「犬」だぜ。
 そうすると。そもそも「種とは何ぞや?」ということになる。もう「進化論」の世界なのだ。「ヒカゲチョウ」と「クロヒカゲモドキ」と「クロヒカゲ」は蛇の目の数が一つ違う以外に何か違うのだろうか。食性とか、住むところとか、発生時期とか。本当に別の種になる必要はあったのか、いつ何がきっかけで分かれたのか・・・
 この考察を進めていくと疑問が無限に発散するので。とりあえず「生物は不思議だ!」という感嘆を残して終わります。(あっけないな)

 なお、それぞれの種の写真を載せたかったのですが、著作権の関係から、スケッチにしました。

 で、この前図書館に行ったら「カブトムシと進化論」という本があって、これらの疑問について語っている部分が多くてとても面白かった。もちろん解決しているわけではないけどね。



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