雑草との闘いは熾烈だが雑草学は面白い!【お茶師日記16】
2021年6月19日
バン茶製造が終わって、草取り生活に入りました。
社長が「梅島のつゆひかりがすごいことになってるよ…」とのことで、その茶園にやってきました。6月10日、真夏のように暑い。
「梅島」は、いわゆる「畑総」で整備された広大な農地であります。この一角に昨年植えたつゆひかりの12aほどの幼木園があります。
おーおー!
こりゃ、やりがいのある現場じゃのお。どこに茶の苗が植わってるのかわからんわい。昨年の秋も、一生懸命抜いてきれいにしたのに。
ここを一人で除草? …帰らせていただきます!
…とは言わないよ。なんせ今年はこんな秘密兵器が!
ジャーン!
人呼んで「ハンマーナイフモア」
いやれっきとした商品名だし「秘密」でも「兵器」でもないけんね。
高速で回転する刃が草を刈り取り、粉砕していく。
早速、乗り入れ。お茶の苗の列を確認して畝間をバリバリと刈っていきます。
「僕の前に道はない、僕の後ろに道はできる」by高村光太郎 ですな。
(やばい、教養が出た…)
2時間もかからず、こんな状態に。しかし、まだ茶の樹は草の中に埋まってます。
さて問題はここから。 作業モードを切り替えて、
ひたすら手作業で草を抜きます。
本日の雑草くん、圧倒的に多いのが「オオアレチノギク」です。
よく更地(さらち)になった場所に生えてきますよね。
茶園で草取りが大変なのは、なんといっても幼木園であります。
成園でもツル性のヤマイモやカラスウリは面倒ですが、地面の露出が多い幼木園ではあっという間にこのオオアレチノギクや、メヒシバ、ツユクサなどが繁茂します。
いったい、この草たちはどこから来るのでしょうか。
種が風で運ばれてくる、というものもありますが、メヒシバなどは土の中で眠っていた種が芽を出すのです。
雑草は「強いもの」「踏まれても踏まれても立ち上がる」みたいなイメージがありますが、「実は雑草は弱い」とも言えます。ずっと同じところで世代を重ねて行けるわけではないからです。
日本の関東から西の平野部の環境は、潜在的植生は「常緑広葉樹林」に属します。もし、地面を掘り返して更地にしたとすると、自然環境下では年月をかけて最終的には「照葉樹林」になります。これを「遷移」と言いますね。
その最初のころに現れるのが今、畑で見られるような雑草たちです。
つまり、最終的には駆逐されてしまう「弱いもの」であるということです。彼らは、山崩れや洪水、地殻変動などで裸地が現れた時に、いち早く芽を出して繁茂し、種を維持して来ました。ですから、人為的に地面が攪拌される農耕は彼らにとって絶好の生息機会なのです。
話がそれましたが、雑草学、興味深いです。
さて、このオオアレチノギクをひたすら手で引っこ抜いていきます。しばらくまとまった雨がなかったせいで、土がカチカチ、大変力が要ります。
膝を曲げて腰を入れ、両手で茎を持って上方へ引き抜きます。
併せて、地面に這っているメヒシバを小さな鍬で掘り取り、茶の樹に絡んでいるツユクサを抜きます。
腰が痛いだけでなく、両手の掌が痛くなり握力がなくなってきます。
ときどき休みながら2日間。孤独な作業。いったい何百本抜いたか。
そしてついに終了!
I did it!
最後に…雑草学、植物生態学でとても面白かった本を紹介します。
「雑草はなぜそこに生えているか」
稲垣栄洋 著 ちくまプリマ―新書 2018
「ふしぎの植物学」
田中修 著 中公新書 2003年