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サイバーファンタジーEDMをデータで解明してみた
僕の今のメインの活動は、Epic Vanguardでの制作です。
こんな感じの↓、サイバーな音でファンタジックな世界観を表現する「サイバーファンタジーベースミュージック」をコンセプトにしています。
サイバーファンタジーってなんだろう
自分が言い出した言葉ではあるんですが、サイバーファンタジーっていうのが音楽を表したジャンル的な言葉だとしたら、具体的にどんな条件を踏まえたら成立するんだろう、人に伝えるには何と説明したらいいんだろうと前々から考えてました。
これまでやっていたことは、自分がサイバーファンタジーEDMだと感じられた曲をプレイリストにしてまとめる、ということでした。
リストもそろそろ100曲近くなって、入ってる曲の傾向としてゲーム音楽にありそうなヒロイックなメロディーや、クワイヤや弦のオケを交えたアレンジ、はたまたサイバーパンクを感じるハードなシンセサウンド、壮大さを感じる空間演出など、
「これ!」という言語化は完璧にできてないものの、大体こういう傾向、というものは朧げに見えてきました。
とはいえ、サイバーファンタジーを伝える上で「このプレイリスト全曲聴いてください」は他人に対して流石にハードル高すぎるので、もっと上手く伝える言葉、自分が向かうべき方向性を表現した言葉がないかと探していました。
プレイリストのジャンル名を分析すればいいじゃん
100曲近いサンプルデータがプレイリストにあるんだから、リストの中の曲のジャンルやアーティストの傾向を分析して概念化したらいいか、と思い、
Spotifyのプレイリストのメタデータを取れるExportifyを使ってみました。
SpotifyアカウントをExportifyと連携させて、該当するリストを選択したら、リストの楽曲データがcsvでごそっと出てきます。
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この中に「Genre」というメタデータがあるので、あとは出力されたcsvをChat GPTに渡して、リスト内のジャンル名の傾向を統計してもらいます。
その結果が、この6ジャンルでした。
(Chat GPTから引用)ジャンルトレンド分析:
メロディックダブステップとポップEDM: 主に幻想的でエモーショナルなサウンドスケープを作り上げる傾向があり、サイバーファンタジーの要素が感じられます。
シンセウェーブとダークシンセ: サイバーパンクの要素も取り入れ、ダークで未来的なビジュアルと音響イメージが特徴。
ブローステップとエレクトロニックロック: 鋭いリズムと電子的な音が、サイバーファンタジーのサウンドに重厚感と強さを加えています。
つまりこの6ジャンルが、僕が「サイバーファンタジー」という雰囲気を感じやすく、サイバーでファンタジーというコンセプトに親和性のあるジャンルだということがわかりました。
サイバーファンタジーの構成要素
これらのジャンルに構成される、サイバーファンタジー要素とは何か?と追加で質問したらこういう回答がきました。
(Chat GPTから引用)サイバーファンタジーの要素は、未来的なテクノロジーとファンタジー的な雰囲気が融合した音楽やビジュアルのテーマです。以下に具体的な要素を挙げます:
1. 未来的なサウンドデザイン
シンセサウンドと電子音: シンセウェーブやダークシンセで使われる重厚なベース音や、レーザーのような音響エフェクトは、テクノロジーと未来感を強調します。
ディストーションとエフェクト: ディストーションやリバーブなどで空間的な広がりを持たせたサウンドが、壮大な世界観を演出します。例として、PerturbatorやCarpenter Brutの音楽に見られる荒々しいシンセの音が挙げられます。
2. ファンタジー的なメロディとハーモニー
叙情的で感動的なメロディ: メロディックダブステップで使われる感傷的なメロディラインは、物語性の強いファンタジーの要素を感じさせます。例としてSeven Lionsの楽曲では、美しいメロディが魔法のような雰囲気を生み出しています。
多層的なコーラス: ファンタジー作品での壮大な世界観を思わせるような、多層的で荘厳なボーカルの使用も特徴です。これは、例えばDabinやHALIENEの楽曲で感じられます。
3. 仮想世界のテーマ
サイバーパンクなビジュアル: ダークでネオンが輝く街並みや未来的な都市、デジタルグリッドのようなデザインが多く使われます。GunshipやScandroidのビジュアルでは、都市や電脳空間のイメージが顕著です。
物語の世界観: サイバーファンタジーでは、仮想現実やデジタルワールドといったテーマが背景にあります。例えば、Magic Swordの楽曲やビジュアルは、英雄と魔法の物語を未来的なテーマと組み合わせたものです。
4. リズムの重厚感
強烈なビート: ダークで重低音の効いたビートが、未来的で鋭い印象を与えます。特にKill The NoiseやBlankeなどは、サイバーでインダストリアルな雰囲気を感じさせるビートを使っています。
緩急のあるリズム: 時に静かで神秘的、時に激しいサウンドの切り替えが、エピックでファンタジーの冒険的な要素を強調します。
5. デジタルと自然の融合
シンセとオーケストラの組み合わせ: 電子音とオーケストラの楽器(弦楽器やフルートなど)を組み合わせ、未来的で神秘的な音を作り出す手法。これは澤野弘之の楽曲でもよく見られます。
エコーやリバーブの使用: デジタル空間に響くようなエフェクトが、幻想的な風景を想起させます。Essengerの曲にはこうした音響効果がよく使われ、サイバーファンタジーらしい雰囲気を演出しています。
サイバーファンタジー要素を全て兼ね備えたアーティスト4組
最後に「これら6ジャンルの要素を包括的に兼ね備えた音楽をやっているアーティストはいる?」と質問した結果、返ってきたのがこの4組でした。
1. Seven Lions
ジャンルの融合: メロディックダブステップ、ポップEDMを中心に、幻想的で感情的なサウンドを展開。
ダークシンセ要素: Seven Lionsの曲にはシンセウェーブやダークシンセ的な要素もあり、幻想的かつ未来的な世界観が感じられます。
エレクトロニックロックの影響: Seven Lionsは、ロック的なビートやアグレッシブなエレメントも取り入れることがあり、サイバーファンタジーの要素をしっかりと含んでいます。
メロディックダブステップの帝王、Seven Lionsです。僕も元々大好きだし、Seven Lionsみたいな音楽をやりたいと思ってサイバーファンタジーと言い出したので、納得な結果です。
2. Kill The Noise
ダークで重厚なサウンド: ブローステップやダブステップのベースが非常に特徴的で、ダークシンセとエレクトロニックロックの要素を組み合わせた攻撃的な音が強み。
シンセウェーブ的なサウンドデザイン: トラックによっては、シンセウェーブ的な未来感を漂わせる楽曲もあり、多面的なサウンドを展開しています。
ファンタジー的な要素: リリースする作品の一部は、幻想的な音像でサイバーパンクの世界を感じさせます。
Kill The NoiseもSeven Lionsとよくコラボしているアーティストで、ヘヴィメタルやハードコアにも通じる世界観が好みです。自身のアーティスト活動の傍ら、映像作品のサントラも手がけるので、そんな部分も憧れる人です。
3. Rezz
ダークシンセとブローステップの融合: 重厚でダークなシンセサウンドが中心で、シンセウェーブとエレクトロニックロックのエッセンスも取り入れています。
サイバーパンクな美学: ダークで未来感のある音作りが特徴で、サイバーファンタジーの雰囲気を醸し出しています。
ポップEDM的なキャッチーさ: メロディがキャッチーなトラックも多く、リスナーを引き込むファンタジー的な要素を持っています。
ミッドテンポ界の闇の女王Rezzです。僕もよく海外のキュレーターやプレイリストオーナーに曲を提出すると「こういうのじゃなくてRezzみたいなサイバーパンク作ってよ」って言われることがあるくらい、大人気のプロデューサーです。素顔は至って普通の綺麗なお姉さんなのに、どんな経験したらこんなSFホラーみたいな音楽作れるんだと思っています。
4. Illenium
エモーショナルなメロディ: メロディックダブステップとポップEDMで知られ、感情的で幻想的なメロディラインが特徴。
シンセのレイヤー: シンセウェーブやダークシンセ的なレイヤーが感じられることがあり、広がりのあるファンタジー感を演出。
ギターなどのロック要素: エレクトロニックロックの影響も取り入れ、サイバーファンタジーのエッセンスが感じられます。
僕がSeven Lionsに並んで大好きなIlleniumもこのリストに入りました。最近のIlleniumはモロEDMというよりポップスやロックに寄っていて、澤野さんがnzkでやってる歌もの曲に通じる雰囲気もあって、歌もの枠としてすごくお気に入りです。バンドサウンドとエレクトロニックを掛け合わせたハイブリッドなサウンドも、とても上手くて好きです。
なので、「サイバーファンタジーEDM」とは「エモーショナルで幻想的なメロディ、ダークでハードなサウンド、サイバーパンクやファンタジー的なビジュアル要素を併せ持ったエレクトロニックロックやポップEDM」といえそうです。かなり具体的になりました。
今後はこの4組の音楽をよく分析しながら、自分なりの表現に落とし込んでいくことにします。
あなたがやってるジャンルは何ですか?マーケティング的に他者から与えられたレッテルではなく、自分が心から良いと思えるものを抽象化して自分のアイデンティティを表現する言葉を自分で見つけてみると、どこに向かうべきか分かるかもしれません。