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やっぱりチルホップ系は反応がいい

10/20にVMLからアルバム「Sequence(シーケンス)」をochi名義でリリースしました。


世間のニーズと自分の作家性を両立させたい

VMLからは「Broadcaster」「Arterial Blood」に続いて3作目なんですが、去年末にVMLの方とお話する機会があって「ochiさんの曲はクオリティ高いけど、ochiさんがよくやるエピックとかアンビエントタイプのものって売れないんすよ」と言われたことがあり、

う〜ん、どうしたものか…と悩んでいたのが今年の上半期頃でした。

自分の目指すものと、世間のニーズ、その間をいい感じに総取りするには何をやるか…と考えた結果が今回のSequenceでした。

迎合するんじゃなくて提案したい

日本のYouTuberが動画内で使う音楽って、よく言えばポップで可愛らしいもの、悪く言えばチープでアマチュア感のするものが多いなと個人的には感じていて、一方で欧米のYouTuberは結構ハリウッドサウンドみたいなものや、ゴリゴリのTrapやEDMを使ったりしてるんですよね。

で、僕が憧れるのはやっぱり海外っぽい雰囲気で、日本のYouTubeにはもっとカッコよく、大人っぽく、グローバルレベルで遜色ない感じになってほしくて、今の需要にただ合わせるよりは「こういうのありますよ」と提案する形で作りました。

BGMによくあるローファイヒップホップやチルホップのサウンドをある程度踏襲しつつも、海外サウンドに影響を受けた自分ならではな空気感を上物に織り交ぜて、かつ色んな用途に合わせて、チルホップ以外にもハウス、トラップ、フューチャーベース、ピアノものなどバンドル作品としてジャンルを幅広めに揃えてみました。

結果は?

まだリリースしたばかりですが、すでに複数のプレイリストに入れてもらえてて、ああ、やっぱりBGMものはチルホップなのね、と感じてます。

収録曲を入れてもらえたプレイリスト

過去にBGMものは何十曲と出しているもののプレイリストにサブミットしても全然引っかからなかったんですが、今回だけ反応が明らかに違ったので、今後はこういうビートものを積極的に作りたいなと思いました。

Sequenceのコンセプトとサウンド

アルバムタイトルの「Sequence」というのは「決まった順序」のような意味で、一定の規則的な動きを持つもの、という表現として使いました。

各曲のタイトルになったものは、何らかの「規則的な動きを持つ」自然現象で、この手のジャンルが持つ、同じビートをループする反復性とのダブルミーニングでつけました。

音の要はリズムサンプルとリバーブ

アルバムのサウンド面でキーになったのは、リズムのサンプルです。

「Medasin - Microdose Vol. 1」というフューチャーベース・チルステップ系のサンプルパックで、キックとスネア、パーカッション、一部のアンビエンスな音はほぼ全曲これを使いました。

チルホップというにはちょっとゴリっとしすぎたかなとも思うんですが、僕の感覚ではこのくらいドッシリ来てくれないと嫌だなというのがあって多用しました。

とにかく音が良くて、EQやコンプをかけずともそのまま使えて扱いやすいものが多かったので、とても気に入ってます。

もう1つがEventideのBlackHoleというリバーブです。

「異空間を作るリバーブ」というフレコミどおり、ファンタジックで壮大な空間が演出できるスーパーリバーブです。

これをBUSトラックに挟んで、リバーブ音だけにコンプや歪みをかけて、というような使い方で音像をガッツリ広げてます。今回の曲でいうと1曲目の「Aqua Blue」のピアノとかは、もはやBlackHoleのデモンストレーションと言ってもいいくらいガッツリかけました。

楽曲解説

Aqua Blue

一番最初に作った曲です。これが出来たことでアルバム全体のコンセプトや方向性が固まったので、実質アルバムタイトル曲のようなものです。(アルバムのアートワークもこの曲を意識したビジュアルにしてます)

アンビエント感のあるピアノの退廃的なメロディと、スモーキーで重めなビートのコントラストがポイントです。

Sequenceという意味では、「流れる」という規則的な動きをする、というテーマです。

Gravity

2曲目は速い曲来てほしいな、と思ったので四つ打ちのハウスにしてみました。1曲目のAqua Blueの雰囲気を引きずりつつも、アッパーな雰囲気に仕上がりました。

Sequence的なテーマは「上から下へ引き寄せられる」という規則性のある、重力です。

Sunrise

比較的マイナーな、退廃的な雰囲気のものが続いてきたので、BGM用途ということを思い出し、爽やかで明るめの、でもちょっとノスタルジックなものを3曲目では出しました。

日が昇って沈む」規則的な動きをする太陽の曲です。

よくロードバイクで湘南や鎌倉の海を見に行くので、その風景のイメージに影響された1曲でもあります。

Melt

ウェーブ(ジャンル)が好きで、それっぽい曲をやってみたいなと思って作った曲です。途中に入ってるトレモロがかかったギターコードはマッシブアタックの影響なので、トラップのようなリズムで作ったトリップホップ、とも言えそう。

テーマは「固体から液体に溶ける」規則性を持った動き、です。

Breathe

トラップ系のビートを作ったなら、とその流れで出来たフューチャーベース曲です。コード進行はChat GPTに「大人っぽい、BGMにできそうなフューチャーベースのコード進行出して」と言って出てきたものをちょっといじって使いました。

VImのコードから半音ずつタンタンタンタン、と下がるフューチャーベースあるあるも交えつつ、リラックスムードな1曲になりました。

呼吸が持つ、規則的な「息を吸って吐く」動きをテーマにしました(といいつつ、Breatheという言葉をタイトルに使いたかっただけです)

Waves

このアルバムは制作時期が7月〜8月の、あのめちゃくちゃ暑い時期だったので、季節的に海をイメージして出来た曲パート2です。

冒頭とラストに波の環境音を入れつつ、揺蕩う水面をエレピで表現して、ちょっとR&B色のあるビートを入れました。

なので「寄せては返す」という規則的動きです。

Reflect

果たして今の時代にアルバムの曲順どおり最初から最後まで聴いてくれる人がいるのかわかりませんが、自分の作品で曲順にはかなりこだわる方なので、「遅めのテンポが続いたからここらでピリっとさせたい」という思いで四つ打ち曲をもう1つ入れました。

ハウスの定番っぽいコードを入れつつ、アコースティックギターのハーモニクスが響く、アナログとデジタルの融合というか、そのどちらでもない塩梅を目指して、他のアルバム曲から浮かないようにしました。

「当たって跳ね返る」反射という規則的な(ry

Flow

エレクトロスィングという、ジャズっぽいラッパや上物が鳴るダンスミュージックみたいなジャンルがあるんですが、それっぽいものをやろうと思って出来た曲です。

これをエレクトロスィングと呼べるのかは分からないんですが、デジタルなビートにマイルス的なトランペットが鳴るというイメージだけで作りました。

10曲もあったらこういう実験的なものがあってもいいでしょ、というノリです。

「下から上へ浮き上がる」=浮遊がテーマです。

Spin

「そういえば、このアルバムほとんどギター鳴ってないな」と思ったので、今度はジャズギターをフィーチャーしたくなって作りました。

ローファイでムーディなピアノに、怪しげなクリーントーンのリードギターが入る、という感じで、僕の大好きなBIGYUKIをちょっと意識した部分もあります。

テーマは「同じ場所を回る」=回転という規則的な動きです。途中に入るギターのスウィープフレーズが、なんかクルクル回ってる感じするな、と思ってつけました。

Toki

最後はちょっと和風のピアノ曲で締めました。

僕の曲でおそらく一番世間様に聴いていただいているものに和風ポップの「雪月花」という曲があるんですが、

この曲がとにかく色んなところでウケが良くて、同じような雰囲気の曲をVMLでも出しておきたいと思ったのと、9曲目まで結構けったいなものが続いたので最後くらいは歌っぽいメロディの聴きやすいもので終わらせようと、作ってみました。

Tokiというのは「時」のことで、時は一定間隔で刻まれて止まらないという規則性があり、和風曲なので日本語読みでつけよう、ということでこのタイトルになりました。

Sequence全10曲、作ったのは夏でしたがこれからの季節でも聴ける、チルい1作に仕上がってるので、ぜひ日常のBGMにしてもらえたら幸いです。

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