日本史論述ポイント集・戦後①
この「ポイント集」も、今回から戦後に入っていきます。まずは占領下の日本についてです。
ポツダム宣言の受諾によって、日本は連合国の占領下に置かれることになりますが、占領を主導したのはアメリカです。そして、非軍事化・民主化を進めて、日本が二度と国際社会の脅威とならないようにすることを目指しました。
日本を戦争へと駆り立てたものは何か?アメリカは、国内市場の狭さという、戦前の日本経済が抱えていた構造的な問題が、アジア侵略に向かわせたと考えました。(近代⑤参照)
一握りの財閥が富を独占する一方、農民は高額な小作料に苦しみ、労働者も低賃金であったことから、国内市場は育たない。しかも、国際競争力もなかったため、軍事力で市場や資源を確保するしかないーー。
こうした構造をアメリカは見抜いていたからこそ、日本経済の後進性を象徴する財閥と寄生地主制の解体を命じ、合わせて、労働基本権の確立と労働組合の結成奨励を柱とする労働改革も行わせたのです。
この後の解説で、それぞれの政策の意味合いを理解してください。
戦後①・占領下の日本
Q1 連合国の当初の占領の方針と統治の方法は?
A1
①非軍事化・民主化を進め、日本が再び国際社会の脅威となることを防ぐことを目的とした。
②占領は、アメリカが主導権を握り、日本政府がGHQの指令・勧告に従って改革を行う、間接統治の方法が取られた。
Q2 農地改革・財閥解体・労働改革が行われた意図は?
A2
○富の集中と、高額小作料・低賃金によって生じていた国内市場の狭さを解消し、対外侵略の基盤を除去する。
Q3 農地改革の結果はどのように評価できるか?
A3
①戦前には40%台であった小作地率が10%程度まで減少し、寄生地主制が解体され、地主は経済力と社会的威信を失った。
②9割近くの農家が自作農となり、家計所得が改善されたことで、国内市場の拡大に寄与した。(後の消費革命)
③農家の経営の健全化により安定した食糧の供給も可能となり、極度のインフレを抑制する役割を果たした。
④一方で、零細農家が増加したことは、高度成長期に都市との経済格差や農村の過疎化という問題として表面化した。
Q4 財閥解体の結果はどのように評価できるか?
A4
①冷戦の激化に伴う占領政策の転換で不徹底に終わったが、そのことで大企業の経済力が温存され、適度な競争が促される結果となった。
②財閥系銀行は解体を免れ、後の企業集団の中核となった。
Q5 アメリカが占領政策を転換した背景と狙いは?
A5
①東アジアにおいて冷戦構造が表面化し、中国内戦で共産党が優位に立った。
②こうした中で、アメリカは日本を極東における「防共の基地」にしようと考え、自由主義陣営の拠点としての役割を期待した。
③そこで、当初の健全な民主化の方針を転換して、経済復興と早期講和の実現を目指した。
Q6 朝鮮戦争の開始は日本の政治・経済・社会にどのような影響を与えたか?
A6
①米軍出動後の軍事的空白を埋めるため警察予備隊が創設され、再軍備が始まった。
②マスコミで始まった共産主義者の追放(レッド・パージ)は、民間企業・官公庁に広がった。
③アメリカは日本との講和を急ぎ、公職追放を解除して鳩山一郎・岸信介ら戦前の保守政治家を復帰させた。
④金属業・繊維業を中心にアメリカ軍からの特需に沸き、ドッジ・ラインによる安定恐慌の状況を脱して、戦前の水準に回復した。